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東京五輪組織委の元理事に捜査のメス、巨額マネーと招致疑惑の関連は?

2022 8/14 11:00田村崇仁
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大会スポンサーのAOKIとコンサル契約

「五輪組織委元理事、4500万円受領か」―。7月20日、読売新聞が一面トップで報じたスクープは衝撃的だった。

スポーツ各紙はフィギュアスケート男子で2014年ソチ、2018年平昌両冬季五輪王者の羽生結弦の「競技引退」で話題沸騰の中、東京五輪・パラリンピック組織委員会の理事を務めた電通元専務の高橋治之氏を巡る巨額マネーの疑惑で東京地検特捜部が捜査しているというニュースだった。

高橋氏といえば、スポーツビジネス界の草分けといえる大物だ。サッカーの2002年ワールドカップ(W杯)日韓大会の開催にも尽力し、元ブラジル代表のペレ氏の引退試合を東京で開催した仕掛け人としても知られる。1977年当時で国立競技場に7万2000人という大観衆を集めた。

新型コロナウイルスで一年延期された東京五輪から1年。東京地検特捜部は7月26日、大会スポンサーに選定された紳士服大手AOKIホールディングス側と高橋氏の会社「コモンズ」がコンサルタント契約を結び、計約4500万円を受領していたとして、受託収賄容疑で東京都内の自宅などを家宅捜索した。

招致疑惑では高橋氏の会社に9億円超も

第一報から報道合戦となっている新聞・テレビ各メディアによると、高橋元理事のコンサル会社は4500万円とは別に、AOKI側から五輪関連で2億円超が流れていた疑惑も判明。AOKIは五輪関連で約7億5000万円を計上し、約5億円はスポンサー契約料、約2億5000万円を選手強化費としていたとみられている。

巨額マネーの行方は東京地検特捜部の捜査を待つしかないが、気になるのはフランス当局も捜査する東京五輪を巡る招致疑惑との関連性だろう。

贈収賄や不正を繰り返してきた五輪招致の歴史を振り返ると、東京五輪は多種多様な「招致コンサルタント」が大きな影響力を持った最後のレースでもあった。関係者によると、当時の東京五輪招致委員会から高橋氏の会社「コモンズ」に振り込まれた総額は9億円超とコンサル会社で断然のトップ。これだけの金額でありながら使途は不明で、誰も詳細な説明をしていないのが実情である。

巨額利権を生む「平和の祭典」の闇が改めて暗い影を落としている。

2030年札幌冬季五輪招致にも影響か

さらにスポーツ界が「最悪のタイミング」と頭を抱えるのが、札幌市が目指す2030年冬季五輪・パラ招致への影響だ。国際オリンピック委員会(IOC)は12月に候補地を絞り込み、2023年5~6月のIOC総会で正式決定する。全国的な機運盛り上げの取り組みで苦戦する中、五輪を巡るカネの疑惑で仮に逮捕者でも出れば、強い逆風となりかねない。

スポーツビジネスを幅広く手がける電通にも特捜部の捜索が入り、東京地検の最終的なターゲットがどこにあり、どこまで疑惑が拡大するのか不透明だ。

2030年冬季五輪招致には、2010年に冬季五輪を開催したバンクーバー(カナダ)と2002年開催地のソルトレークシティー(米国)の北米2都市も乗り出している。ソルトレークシティーといえば、冬季五輪の招致レースで投票権のあるIOC委員を次々と買収した大スキャンダルが知られる。親族の教育や就職まで便宜を図ってもらった実態が明るみに出て、10人のIOC委員が辞任もしくは追放処分となった。

コロナ禍で逆風に見舞われた東京五輪から1年。今度は「五輪とカネ」の醜聞で再び大揺れとなる雲行きだ。

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