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北京パラリンピックで中国がメダル61個も獲得した理由、過去1個から驚異の大躍進!

2022 3/15 11:00田村崇仁
北京パラリンピックの閉会式で挨拶する習近平国家主席,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

国主導の選手発掘、金18個のメダルラッシュ

北京冬季パラリンピックは開催国、中国の金メダルラッシュが世界を驚かせた。2002年ソルトレークシティー大会から参加し、メダルは前回平昌大会の車いすカーリングで獲得した金1個のみだったが、地元大会で金18を含む計61個のメダルを量産して冬季パラ初の1位に大躍進した。

それにしても、なぜここまで突然強くなれたのか。8500万人の障害者が暮らす中国はもともと夏のパラリンピックでは無類の強さを発揮してきた世界一の強国。東京大会では金96を含む207個のメダルを獲得して1位となり、2位の英国を大きく引き離した。

一方、降雪地が中国東北部などに限られ、これまで冬季スポーツが盛んでなかったため、冬季大会は低迷してきた。しかし2015年に北京冬季大会招致が決定してから国主導の選手発掘とエリート養成を急ピッチで開始。今大会は強豪のロシア勢とベラルーシが除外されたこともあり、地の利を生かしてメダルを積み上げ、勢力図が大きく変わった。

海外コーチ招へい、夏競技から二刀流組も

中国メディアなどによると、「成功」が求められる自国開催に向け、2016年から本格的に強化を始め、夏季競技から「二刀流」で挑戦する人材も積極的に選抜。政府の投資でアルペンスキーは実績豊富なイタリア人コーチ、パラアイスホッケーはロシア人コーチを招き、新型コロナウイルス禍でテスト大会も実施できない中、1年近い長期合宿と本番コースでの訓練で技を磨き上げた成果が出た。

国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は「中国の潜在能力は底知れない。人口も世界一。障がい者数も8000万人を超える。間違いなく、冬季パラリンピックでも世界最強国になるだろう」と将来性を高評価した。

スノーボードクロス男子上肢障害では決勝に進んだ全4人が中国勢と圧倒的な強さを印象付け、ノルディックスキー距離やアルペンスキーでもメダルを量産。メダルを取りやすい種目を集中的に強化した戦略的な背景もあるが、どの競技でもトップレベルの選手を短期間で育成に成功した形だ。

ロシア勢は除外、強豪の米国は不振

戦時下のウクライナは同国最多の金11個を含む計29個のメダルを量産して2位と躍進。前回メダル24個のロシア勢や12個のベラルーシが開幕直前に除外された影響もあるが、前回平昌大会で1位だった強豪の米国はスキー距離やスノーボードで中国やウクライナの勢いに押されて5位と振るわず、冬季パラの勢力図が大きく変わりつつある印象だ。

46カ国・地域の選手が参加した祭典は13日閉幕し、日本は1998年長野大会に次いで多い金メダル4個を含むメダル7個で国・地域別ランキング9位、メダル総数は8位となった。2030年札幌招致を見据え、課題は高齢化する選手の世代交代。今回出場できなかったパラアイスホッケーと車いすカーリングの強化と選手発掘も急がれる。

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