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本当に選手ファーストなのか?東京五輪が来年7月23日開幕の理由

2020 4/2 17:00田村崇仁
イメージ画像ⒸBoris-B/Shutterstock.com
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新型コロナとビジネス優先で「春開催案」消滅

新型コロナウイルスの感染拡大で史上初の延期に追い込まれた東京五輪は、来年7月23日に開幕し、8月8日に閉幕する新たな大会日程に決まった。衝撃的な延期決定からわずか6日のスピード決着。東京パラリンピックも従来の計画と同時期の8月24日から9月5日の開催が決まった。

1年程度の延期に伴い、複数の国際競技連盟(IF)から酷暑を避ける春開催の「桜五輪」を希望する意見や、台風シーズンの被害を避ける9月以降の秋開催案も出たが、米メディアによると、巨額契約で国際オリンピック委員会(IOC)への影響力が強い北米テレビ局「NBCユニバーサル」は水面下で「夏開催」を推したという。

新型コロナウイルスの終息が見通せない中、春開催だと約4カ月かかる聖火リレーのスタートが年末年始ごろに前倒しされ、各国選手の五輪予選を兼ねた選考期間や大会準備の時間が夏開催より短くなるデメリットがある。米プロバスケットボールNBAや欧州サッカーなど人気スポーツのクライマックスシーズンと重なり、五輪の価値低下を懸念する見方もあった。

史上最多33競技、339種目で参加選手1万人以上と肥大化した東京五輪は「選手ファースト」を表向き主張する一方で「ビジネス優先」の側面は否定できない。再出発の準備が遅れるリスクを回避し、急転の早期決着で大枠の日程を当初計画のまま1年スライドさせることで大会運営の影響を最小限に抑えた形だ。

「5、6月案」もボランティア確保難しく却下

日本側の一部で検討されていた5、6月の開催案は夏開催の「熱中症」の懸念を回避できるともみられていた。だがウイルス終息の時期が不透明な上、夏休みを利用して参加する学生ボランティアが多いこともあり、来年もお願いするには確保が厳しいと判断された。夏休みであれば、子どもたちが日中から競技会場で観戦できる利点もある。

さらに梅雨の時期と重なり、販売済みチケットも夏開催の方が生かせるという声が強かった。

テニスの四大大会や欧州サッカー、米4大スポーツと重なるスケジュールもデメリットとされ、現実的には困難だった。

真夏開催、政治日程と終戦記念日に配慮

結局、新型コロナの影響も大きく、曲折を経て可能な限り時間の猶予を設けたい理由から夏の「酷暑五輪」に落ち着いた。

近年の五輪は開会式を含めて17日間で行われ、金曜日に開幕し、大会中3度目の日曜日に閉幕するのが通例だ。来年は7月16日と7月30日も金曜だが、7月22日に任期満了を迎える東京都議選と、8月15日の終戦記念日に大会期間が重なるのは避けるべきだとの配慮があったため7月23日に固まったという。ここで政治日程が理由に出てくるところが「選手ファースト」とは無縁の決断とも受け取れる。

米紙は「鈍感の極みだ」と拙速な判断を批判

3月30日の米紙USAトゥデー(電子版)はコラムで、東京五輪の新たな大会日程が発表されたことに「鈍感の極みだ」とIOCを批判した。

「世界中がパンデミックで死と絶望に包まれている時に、なぜ日程を今日発表する必要があるのか」と痛烈なコメント。4週間かけて検討するとしたIOCの急転直下の決定に「暗いトンネルを抜けて光が見える時まで待てなかったのか」と拙速な判断に首をかしげた。

延期に伴い、この際だからこそ秋開催の可能性を真剣に考えるべきだったとの意見もある。だが巨大イベントに成長した五輪の収入は7割がテレビ放送権料で成り立つ。夏開催は大きなスポーツイベントが手薄で視聴率が取れる時期でもあり、来夏に実施予定の陸上や水泳の世界選手権も2022年への日程変更に柔軟に応じる方針だ。

地球規模の試練に立たされている新型コロナショックを機に、少なくとも五輪の存在意義を見つめ直す機会にすべきだろう。

新型コロナウイルス感染拡大による影響まとめ