成功、挫折を経て世界最速の戦場へ
モータースポーツで4輪の世界最高峰のといえばF1だが、2輪の世界最高峰のといえば、世界最速のライダーとオートバイを決めるMotoGPだ。世界中のファンを魅了するこのレースは、各国から選ばれた23人の天才ライダーだけが参加でき、専用のマシンを使用する。本場ヨーロッパでは、サッカーを凌ぐほどの人気ぶりだ。
今回、そのMotoGPに参戦する中上貴晶は、世界を相手に奮闘するただ1人の日本人ライダーだ。幼い頃に才能を発揮し、14歳の時に全戦全勝という圧倒的な成績で全日本ロードレース選手権GP125クラスを史上最年少で制した。国内で敵無しとなったため、世界選手権参戦を前にスペイン選手権に参戦したものの、ロードレース本場スペインのレベルの高さに付いて行けず、活躍することはできなかった。
それでも何とかステップアップし、16歳でMotoGP125ccクラス(現Moto3クラス)に参戦するが、またしてもそこで世界との差を思い知らされる。参戦した2年で結果を出すことができず、シートを失い日本に戻る他なくなった中上。今までにない挫折を味わった。日本に帰ってきた中上への評価は厳しいものだった。
それから2年、中上の目は再び世界へ向いていた。全日本ロードレース選手権J-GP2クラスでチャンピオンを獲得。再び自ら世界選手権への扉をこじ開け、20歳でMoto2クラスに参戦したのだ。
MotoGPクラス参戦を狙う若く有望なライダーたちがひしめくMoto2。そこで成長した中上は参戦5年目の2016年、世界選手権で初優勝を達成。これは、参戦111戦目の快挙だった。そして2018年、遂に夢にまでみた最高峰、MotoGPクラスへのステップアップを果たしたのだ。