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天才女子中学生ドライバーJuju&元F1ドライバー 野田英樹~親子で挑む世界のトップ③~

2018 9/2 07:00SPAIA編集部
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天才女子中学生ドライバーのJujuこと野田樹潤さんと、その父親でF1ドライバー経験者の野田英樹さん。家族で世界のトップドライバーを目指すお二人に、親子で監督と選手という関係や日本から世界を目指す難しさなどをうかがいました。全3回でお届けします。


天才女子中学生ドライバーJuju&元F1ドライバー 野田英樹~親子で挑む世界のトップ①~

天才女子中学生ドライバーJuju&元F1ドライバー 野田英樹~親子で挑む世界のトップ②~

ピュアな気持ちが世界に通用する選手を生み出す

──英樹さんのF1レース参戦では大変な苦労があったとお聞きしていますが、Jujuさんがレースに出られる中でのご苦労といったところでは、どのようなものがあるんでしょうか?

英樹さん:マネジメントをしっかりしないといけない。選手にそういったところで苦労させること自体が、選手の才能を潰すんでね。マネジメントのことで選手に負担をかけちゃいけないんです。

レーサーに限らずアスリートっていうのは、ピュアな気持ちがあるから集中して競技にのめり込める。

それが社会の縮図に巻き込まれて、その縮図を理解し始めると、不必要な気も使い始める。そうすると、本来はこうしたいっていうピュアな気持ちがあるんだけど、そうできないことまで理解し始めてしまう。そうなると本来の力を出したいけど出せなくなってしまう。変な意味で大人になってしまう。それはやっぱりアスリートをやっている間は不必要なことだと思うんですよね。

野田樹潤

写真提供:Juju/野田樹潤



──社会の縮図に巻き込まれるというと具体的にどういったことなんでしょうか?

英樹さん:例えば、野球だと日本には外国に行っても通用する選手がたくさんいます。野球は日本でも人気のスポーツなので、他のスポーツに比べたら社会の理解も非常に高いですよね。

「野球をやっています」って言うだけで「すごいね」って、「甲子園行った」「すごいね」って、「甲子園で活躍した」「すごいね」って、野球を知らない人でも認めてくれる。

それが、「レースやっています」って言ったら、「何暴走族みたいなことやっているんだ」って言われることもあるし、その差が非常に大きいなと感じます。

そういうところに巻き込まれると、ピュアな気持ちっていうのは無くなっていきます。野球の選手はそこで理解があるから、ピュアな気持ちを持ったまま、のめり込める子がいる。だから、世界にも通用する選手が出てくるんです。

社会性ゼロ。現役のうちはそれでいい

──そこでマネジメントが果たす役割というのは?

英樹さん:競技にのめり込んでいた子たちが、ひとたび競技をやめた時、すごく苦労するんですね。社会になじめない。社会性がないって言われる。でも、現役やっているうちは、社会性を捨ててでも競技にのめり込んでいないと通用しないんですよ。

F1ドライバーなんかも、社会性のある人間がいるかっていうと、社会性なんてゼロですよ。
普通の人からは無茶苦茶だと思われます。

だけど、そうでなきゃいけない。そうしてあげられるような体制を作るのがマネジメントチームなんですよ。そして、もう引退するよってときに社会に適応できるように導いてあげるところまでやってあげるのがマネジメント。そういうところが日本は遅れています。

さきほど言われたように「苦労されたそうですけど」っていうのは、私がF1やっていた時も今も変わりません。

日本でF1とか世界のトップレベルのレースに行くときに、レースのことを理解している人が圧倒的に少ない。レースのことを理解した上でマネジメントできる人は今まで日本にはほぼいなかった。

だから、チームをしっかり作って、Jujuが今持っている才能を潰させずにピュアな気持ちのままでレーサーとして送り出してあげる。余計な雑音が入ってくるところはマネジメントチームがサポートしてあげる。そういうチームを作れたら彼女は世界のトップレベルに行けるかもしれない。

野田英樹

──F1ドライバーは無茶苦茶なところがあるということでしたが、Jujuさんにもそういった部分があるんですか?

英樹さん:とんでもなくわがままなところがありますよ。無茶苦茶ではないですけど。

Jujuさん:同い年の子たちは、友達に好かれたいから自分を隠してでも友達に好かれたいって子が多くて──。自分を隠して、相手に合わせれば、友達はできると思うけど、自分はそうなりたくはないです。

自分を隠して接するんだったら、「友達じゃなくない」って思っちゃうから。自分の気持ちには正直でありたいと思っています。

──リスクを考えるのではなく、どうやったら自分のやりたいことをできるか。英樹さんが先ほどおっしゃっていたピュアな気持ち、感性が自然と備わっているんですね。

F1にこだわりはない。目指すは世界最高のドライバー

──F1が最大の目標だと思いますが、F3で一番の目標は?

英樹さん:F1にこだわっているわけじゃないんです。

プロとしてやるからにはトップを目指さなきゃいけない。

その時代の、時代時代にあったカテゴリでトップを目指すということなんで。F1だけが目指す場所ではないです。

今のこのカテゴリの中で最低限何ができるか、結果が出せたら次のステップで何ができるか、Jujuが16歳になったときに、18歳になったときに、どこが一番目指すことなのかっていうのは、時代の流れだから、変わってくる。

それがF1であったりフォーミュラEであったり、ル・マンなのかもしれない、インディなのかもしれない、もしかしたら新しいカテゴリかもしれない。いろんなカテゴリがありますからね。

どのカテゴリであっても世界レベルでのトップドライバーになるために、今、最大限出来ることをやることが目標なのかなと思っています。

世界を見渡したらとんでもない技術と知識を持ったドライバーがいます。とんでもないドライバーっていうのは、もちろん才能もあるけれども、そのバックグラウンドではとんでもない努力や経験をしているわけです。

私のポジションがポジションだから、この業界で、面と向かって言う人はいないですけども、Jujuに対しての周囲のいろんな話が風に乗って聞こえることもあります。でも、そんなことにもJujuは屈せずに今までずーっと努力してきて、人がやってないようなことをやって、それで今のJujuがいます。

これからもそのスタンスを変えずにやっていければ、日本から世界で通用するとんでもない選手っていうのが生まれるんではないのかな、っていうのを信じてやるしかない。そこに答えはないから。

Juju,野田樹潤,野田英樹

もっと多くの人に見てほしい

──先ほどお父さんも日本ではマイナー競技とおっしゃっていましたけど、まだレースを見に来たことがない人たちに伝えたいメッセージとかありますか?

Jujuさん:できることなら一番は会場に来て見てもらいたいです。

レースだけじゃなくて他の競技でもそうです。まだそんなに有名じゃなくて、私と同じ状況にいる子達もいると思うから。

野球だったら教えてくれるところが学校にもあるし、サッカーでもクラブとかあるけど、レースを教えてくれるところって言ったらほとんどない、お父さんの学校も他の場所にはないし、他にも同じように、教えてもらうことも難しいスポーツがあると思います。

そんなスポーツで頑張っている子たちを見て知ってほしいです。

──そういった子たちの中からいつか自分を脅かすライバルは現れてほしいですか?

Jujuさん:ライバルは欲しいですね。できたからと言って私が何か変わる事はないけれど、そっちの方が楽しいし、もっとレースが注目されるかもしれないから。ライバル募集中です!

Juju,野田樹潤,野田英樹