トータルバランスの良さが導いたシーズン2勝
24歳のスペイン人ライダーであるアレックス・リンス、Moto2を1年しか経験していない22歳のジョアン・ミル。このフレッシュなコンビで2019年に挑んだスズキは、シーズン2勝を挙げた。
エースライダーであるリンスは、第3戦アメリカズGPでヤマハのバレンティーノ・ロッシとのバトルを制し、自身初優勝を飾る。第12戦イギリスGPでは、ホンダのマルク・マルケスを相手に、最終ラップの最終コーナーで劇的な逆転優勝を遂げた。スズキが1シーズンで2勝を挙げたのは、2000年にチャンピオンに輝いたケニー・ロバーツJr.以来、19年ぶりのことだ。
MotoGPルーキーであるミルも積極的なライディングで、シーズンを通して印象的な走りを見せた。第17戦オーストラリアGPでは、自己最高位となる5位を獲得。エースであるリンスの前でフィニッシュしている。
飛躍の年となったスズキだが、大幅な変更があったわけではない。2015年にMotoGPに復帰して以降、スズキは確実に戦闘力を上げてきた。これまでの開発の積み重ねが、昨年の躍進につながったのだ。
バランスが良く、操作性が優れているスズキGSX-RR。ホンダやドゥカティの強烈なストレートスピードには劣るものの、直線での速さも改善。ロングストレートが特徴的なロサイル・インターナショナル・サーキットでは、リンスが上位勢に離されることなく4位入賞を果たした。
また、同じく長い直線があるチャン・インターナショナル・サーキットでも、ミルがヤマハのロッシをロングストレートでオーバーテイクするなど、総合的にレベルが上がっている。
開発の積み重ねが結果に表れたスズキだが、昨年は初となる試みとして、社内カンパニー組織であるスズキレーシングカンパニーを発足させた。
ホンダのHRC(ホンダレーシングコーポレーション)、ドゥカティのドゥカティコルセといったレース活動専門の企業としてレース業務を行う組織とは違い、「社内カンパニー組織でありながら、レース活動において上層部からの承認を得るといった流れを簡素化でき、独自の判断で迅速に意思決定することができる」という組織のようだ。
確実な開発によって進化しているマシンに、「若くて優秀なライダー」と「レース活動に専念できる環境」が整いつつあるスズキ。2020年シーズンの活躍が楽しみだ。
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