課題はホンダ全体の底上げか
2019年はホンダのエースであるマルク・マルケスにとってほぼ完璧と言えるシーズンだった。第3戦アメリカズを除いて優勝か2位という素晴らしい成績をおさめた。ライダーズチャンピオンシップでも史上初の400ポイントを上回るなど、まさに歴史を作ったと言っていい。
しかしホンダとして見たときに完璧だったかといえばそうとはいえない。ホンダのバイク、RC213Vに対応できたのはマルケスだけだった。LCRホンダのカル・クラッチローは毎年表彰台争いに絡むトップライダーだが、昨年彼が表彰台に上ったのはほんの数戦。マルケスのチームメイトだったホルヘ・ロレンソに至っては、トップ10フィニッシュが一度もないままシーズンを終えた。
怪我の影響があったとはいえ、250ccで2度、MotoGPクラスで3度の世界王者に輝いた名ライダーでもここまでの苦戦を強いられたのだ。これまでドゥカティのトップスピードに離されていたホンダは昨シーズン馬力を上げ、ストレートスピードを上げる事ができた。馬力の大幅な改善には他に多少の問題を生み出すことになったわけだが、それに唯一対応できたのがマルケスだったというわけだ。
先日マルケスとホンダは異例の4年契約を延長した。他のスポーツではよくあることだが、モータースポーツで長期契約はなかなかない。ホンダはマルケスがいなければライバルとの戦いで抜き出るのは難しく、現在ホンダにとってマルケス頼みだと言える。ホンダの課題はホンダライダー4人全員がコンスタントに上位争いできるマシンを用意することだ。
開幕直前のテストではホンダは苦しい内容に
開幕前最後の公式テストが開幕の舞台、カタールインターナショナルサーキットで行われたが、ホンダ勢にとって厳しい内容となってしまった。
昨年他を圧倒したマルケスだが、昨年末に手術を行った右肩が万全の状態ではなく、初日6番手、2日には8コーナーで転倒を喫し14番手、最終日は昨年型のバイクに乗り7番手といまいち波に乗れない様子。
同じく右肩の手術をした中上貴晶も初日は15番手タイムだったが、徐々に体調を取り戻しつつあり、2日目10番手、最終日には8番手とトップ10に入りタイムを上げてきている。しかし前回のセパンテストではロングランができておらず、今回のテストでも周回数は33周のみ。
中上のチームメイトであるクラッチローは初日19番手、2日目には2コーナーでクラッシュし両腕の擦過傷を負ってしまい、最終日も怪我の影響で満足にテストを行えなかった。
今年から兄マルクのチームメイトになったアレックス・マルケスは初日に体調を崩し21番手、2日目も19位と低迷し、最終日は21番手でテストを終えている。
つまりホンダ勢はこのテストで一度もトップ5入りしていないのだ。しかもタイムが振るわないだけではなく、怪我の影響で各ライダーの周回数が少ないことも懸念材料だ。マルク・マルケスは必要なものを理解したとコメントを残したが、この状況で開幕まで後2週間というのはかなり厳しい。
ただ、昨年も怪我を負った状態で序盤から圧勝劇を演じたマルケスなだけに、何かやってくれるのではと思ってしまう。課題が多い今年のホンダ。今年は各メーカーの進化もあり、昨年のようなマルケスの無敵艦隊状態とはいかないのかもしれない。