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紆余曲折あった弓道の歴史と武道としてのルール

2016 12/21 10:03
弓道ⒸShutterstock.com
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Photo by Josiah_S/Shutterstock.com

出典 https://sportslink-mag.com

現在は武道として親しまれる弓道だが、その歴史は古く、弥生時代には既に弓が使用されていたとされている。 元は狩猟の道具や戦に使用する武器として使われていた弓矢が、現在の武道となって受け継がれるに至るまでの弓道の歴史に迫ってみた。 現在における弓道のルールと併せて紹介する。

古代の歴史が証明する「長弓」の存在

「弓道」と聞いて、多くの方が弓と矢をイメージされるのではないだろうか。弓矢は古代の石器時代から様々な民族によっすでにて、狩猟のために使用されてきた。
日本では弥生時代に弓矢が使用されていたと推定されている。また石器時代末期のものとされる銅鐸には狩猟の絵があり、そこには長弓が描かれている。
現在の弓道にも伝承されているように、日本では古代から長弓が使用されており、これは世界でも類を見ないものだ。
身長よりも長く上下が均等でない形状は、現在の弓道では効率や性能に優れるとされているが、古代では精神性や宗教性を重んじたものといわれている。 その事は日本の史書である「魏志倭人伝」や「古事記」などの記述によって推察されている。

弓術の技術革新と礼射、武射

平安時代には、主に貴族の催事として礼射が行われる。弓術が戦に用いられたのは源頼朝が幕府を創立させた鎌倉時代。精神の到達点として武士の道義が確立された頃だ。
武士の多くは身心の鍛錬として「犬追物」や「笠懸」といった騎射を行うようになった。 これは鶴ヶ岡八幡宮で開催される「流鏑馬の盛儀」として現在に伝わっている。
室町時代に鉄砲が伝来するまで、弓術は礼射の弓と武射の弓との両面で進歩を遂げている。犬追物・草鹿等には厳格なルールが設けられ、 現在の弓道につながる原型を成していく。小笠原流による弓馬術礼法の基準などがそれにあたる。 一方で、日置流を代表とした武射の系統も普及している。
平安時代に端を発した弓術の技術革新は、同時に数々の流派を生み出すこととなった。

武道としての弓術。江戸時代から現代まで

鉄砲の伝来以降、武器としての弓は衰退していったが、心身の鍛錬を目的とした礼射は残った。 小笠原流を創始した小笠原氏は、代々将軍家における弓馬術礼法の師範として徳川家にも仕えている。 この時代に「通し矢」などの弓術技法は更に精巧さを増している。
そして明治28年、京都に「大日本武徳会」が創立され、奨励される武道に弓術も含まれた。 明治時代には本多利実による本多流の創始もあり、弓術が広く普及していたことがわかる。
大正から昭和初期にかけ、弓術は学校教育としても採用された。昭和4年にはそれまでの弓術から弓道へと名称が変更される。
第二次世界大戦の終結により一時は禁止されていた武道の授業だが、昭和26年に禁止は解かれ、同42年には学校の正科として採択されるなどして今日に至っている。

弓道の基本ルールはごくシンプル

非常に長い歴史があり、紆余曲折を繰り返しながら武道として発展してきた弓道。 それだけに様々な細かいルールが設定されているが、土台となる基本ルールはとてもシンプルだ。
その基本ルールについて紹介しよう。

弓道には個人戦と団体戦がある。
個人戦は通常3名の選手が並び、順に射弓を行う。団体戦は3名または5名の編成となり、チームごとに射弓を行う。
団体戦では射弓の回数と制限時間が設けられている。3人立の場合、各自4射を6分以内だ。5人立では各自4射を9分以内がルールである。

試合での勝敗は的中した数で決まる。個人戦では各々の的中数、団体戦では各チームの総的中数である。 試合で的中数が同じになった場合、トーナメント大会では1射ずつ追加で行うが、リーグ戦では引き分けとなることもある。

弓道の射距離と的に関するルール

弓道には「近的競技」と「遠的競技」がある。近的競技は28mの距離から射弓を行い、直径36㎝の的(星的、霞的または色的)を狙う。 順位決定戦では直径24cmの的を使用する場合もある。
遠的競技は射距離が60mとなり、的は直径100㎝の霞的や得点的だ。順位決定戦では直径79cmまたは50cmの的を用いる場合がある。

的中をルール上は「中り」と呼ぶが、中りか外れかの判定は矢の根が的面を射抜き、的の枠内に留まっているか否かとなる。
ただし矢が的を突き抜けた場合は中りと見なされる。また、矢が折れた場合は矢の根側の状態が判定基準となる。 その他、矢は的枠内に留まっているが的が転んでしまった場合や、中り矢に接触した状態で的枠内に留まっている場合も中りだ。
ただし矢が跳ね返ったり、中り矢に接触して的枠外に出てしまった場合は外れの判定である。

まとめ

狩猟に始まり、貴族の催しや心身の鍛錬、戦での武器、そして競技武道と、弓道は時代によって姿を変えながら今日まで続いてきた。 多種多様な流派の存在もそこに含まれる。 シンプルでも厳格なルールのある弓道で、一射入魂の精神を鍛えてみるのも良いかもしれない。