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【阪神JF】リアアメリアに黄色信号?京大競馬研の本命は新馬戦のラップが秀逸なウーマンズハート

イメージ画像ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)
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ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

とにかく上がりが求められるレース

12月8日(日)に行われるのは阪神JF(GⅠ 芝1600m)である。今年は1999年以来のフルゲート割れとなった。その原因はリアアメリア、ウーマンズハートなどが強すぎて、他が敬遠したからか?この2頭は果たして本当に強いのか?ラップの観点から見ていこう。

まず、過去3年のラップを下記に挙げた。

2018  12.2 - 10.7 - 11.9 - 12.2 - 12.1 - 11.0 - 11.8 - 12.2 (34.8-35.0)
2017  12.4 - 11.3 - 11.6 - 12.4 - 12.2 - 11.9 - 11.0 - 11.5 (35.3-34.4)
2016  12.4 - 11.0 - 11.3 - 12.0 - 12.1 - 11.5 - 11.5 - 12.2 (34.7-35.2)

阪神1600mはコース形態上3、4コーナー付近でペースが緩む傾向にある。それにより、中盤で脚をためられるので、瞬発力勝負となり決め手比べになる。

なので、阪神JFまでの新馬戦または未勝利戦(1600m~1800m)で1000m通過タイムが60秒以上(つまりスロー)でかつ、ラスト2Fが22.5秒以下だったレースで、なおかつ0.2秒以上着差を付けた馬を調べてみた。

2019年1000m通過60秒以上ラスト2F22.5秒以内2着に0.2秒以上の差を付けた馬の一覧

スローのレースというのはどの馬も終盤まで足がたまっている傾向にあるため、差が付きにくい。そんな中で着差を付けられるというのは強い馬の証拠だ。

2018年を調べてみるとラヴズオンリーユー、サートゥルナーリア、グランアレグリアなどがデータに該当しており、すでにGⅠを制している。また、他にデータに該当しているシャドウディーヴァやビーチサンバ、クリノガウディーなど2・3歳重賞で馬券内に食い込んできている馬も多くいる。

2019年1000m通過60秒以上ラスト2F22.5秒以内2着に0.2秒以上の差を付けた馬の一覧

今年は、サウジアラビアロイヤルカップを制したサリオスの新馬戦や、東京スポーツ杯2歳ステークスをレコードで制したコントレイルの新馬戦などが該当しており、とにかくこのデータを満たす馬は早期から活躍できる傾向にある。該当馬のうち阪神JFに出走するのは、ウーマンズハートとクラヴァシュドール、ロータスランドの3頭である。これらには注目したい。

衝撃の新馬戦

◎ウーマンズハート
新馬戦の内容が秀逸。レースラップは

12.7 - 12.1 - 13.0 - 13.3 - 12.4 - 11.1 - 10.7 - 10.9(37.8-32.7)

でラスト2Fが10.7‐10.9とどちらも10秒台でかつラストの失速率が小さいこのラップはなかなかお目にかかれない数字。スローでは普通どの馬も脚が余っているので、上がりの差も付きにくいのだが、上がり2位に0.6秒も着差を付けている。更にすごいところはレースレベル。3馬身半差をつけた2着馬マルターズディオサは次走強い勝ち方をして、サフラン賞でも勝利。6馬身以上差をつけた3着馬アミークスも次走圧勝。6着馬シンハリングですら次走勝ち、1勝クラスの赤松賞2着とあまりにもハイレベルの新馬戦だった。

ウーマンズハートの次走、新潟2歳ステークスは勝ち時計1.35.0と、飛び抜けた数字ではないが、これは道中スローだったことを考えると問題ない。しかもスタート前の旗を見ると向こう正面が追い風であるのが分かる。すなわち直線は向かい風で時計が出にくい状況であった。ペースも落ちつき、先行馬が有利な展開の中、それでも異次元の瞬発力を見せれて快勝。2着のペールエールは次走デイリー杯2歳ステークス3着、3着馬ビッククインバイオはアルテミスステークス3着、4着馬クリアサウンドは次走ファンタジーステークス3着と、同じレースで好走していた馬がすぐに、結果を残していることからもウーマンズハートの能力は相当なもの。

〇クラヴァシュドール
先述したデータの該当馬2頭目。新馬戦もさることながら、注目は2着だったサウジアラビアロイヤルカップ。高速馬場だったことを考慮しても1.32.9は優秀。全体のラップを見ると

12.3 - 10.8 - 12.0 - 12.1 - 12.0 - 11.2 - 10.8 - 11.5

と前半が速めのペースながらも終盤失速していないラップバランスがすばらしい。

▲リアアメリア
能力は認めるが、心配は折り合い面だ。アルテミスステークスは相当折り合いに苦戦していていた。それに、直線馬群が凝縮していて、先行馬と距離があまりなかったので、瞬発力があれば差せる競馬だったとも考えられる。勝ち時計1.34.3というのも抜けているとは言えない。ただ瞬発力はこのレースとのシナジーが見込めるので3番手評価にとどめた。

△カワキタアジン
勝利した未勝利戦は1200mであったが、前半3Fの35.7と1200m戦にしてはかなりのスローで上がりの脚が求められる展開であった。レースラップ全体は

12.4 - 11.5 - 11.8 - 11.6 - 11.5 - 11.7

で切れ味を求められたレース。カワキタアジンはスローで他の馬もある程度余力が残っている中で、中団から直線抜け出し4馬身差の圧勝。もちろんメンバーが弱かったことは事実だが、2、3、5、8着馬は未勝利戦でも馬券に絡んでいるので最低限のレベルは確保していると考える。

次走、すずらん賞に関してはケープコッドが先行し、前が有利な展開となった。その中をカワキタアジンは出遅れて後方からの競馬をしていたが、最後はいい脚で追い込んできて5着だった。このレースのメンバーレベルも悪くない。ヒルノマリブは次走白菊賞3着、3着コスモリモーネは次走1勝クラスで4馬身差の圧勝。6着プリンスリターンは函館2歳ステークス3着や、ききょうステークス(OP)1着など、2歳1勝クラスやOPで高水準のパフォーマンスを発揮している馬が多かった。その中でカワキタアジンは内容がよく、5着は価値がある。

前走(秋明菊賞5着)は出遅れて後方からの競馬、かつ外がよく伸びる馬場で最内を回って0.1秒差まで持ってきたことを評価したい。 もちろん3強に比べればややパフォーマンスが落ちるが、3頭のうちどれかが崩れればチャンスがあるだろう。

あとは、先述した条件に該当していたロータスランドと、未勝利戦で好時計を記録し、その次のサフラン賞を連勝して勢いに乗るマルターズディオサまで押さえておく。

阪神JF(GⅠ)予想
◎ウーマンズハート
〇クラヴァシュドール
▲リアアメリア
△カワキタアジン
×ロータスランド
×マルターズディオサ

《ライタープロフィール》
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。