JBCクラシックは最強世代を探せ!
JBCはアメリカのブリーダーズカップをお手本として、ダートの各カテゴリーのチャンピオンを決めるレースである。基本的に開催競馬場は持ち回りで、今年は初めて浦和で開催される。
浦和競馬場は南関東4場(浦和、船橋、大井、川崎)の中で直線が一番短く、カーブもきついことで有名。当地でのJBC開催にあわせて昨年に馬場改修工事が行われ、2000mのフルゲートが12頭に拡大。同時に2、3コーナーの幅も広げられて走りやすくなったとのことだ。
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その2000mで行われるのがJBCクラシック。上記は過去5年の成績を表にしたものだが、年齢表記ではなく生年表記にしている。こうすれば一目瞭然なのだが、2014~2017年まで4年連続で2010年生まれの馬が勝利。この世代のレベルが高かったということだろう。このJBCクラシックに関しては強い世代を見つけること=勝ち馬を見つけること、という方程式が成り立つとみている。
昨年、最強世代として君臨していた2010年産(現9歳)の牙城が崩れた。2013年産(現6歳)のケイティブレイブが1着、2着には2015年産(現4歳)のオメガパフューム。ここまでの傾向が続くのであれば、2013年産に注目だが、今年JRAから出走するのはクイーンズサターンだけ。成績的に世代のトップクラスとはいえないし、この世代の代表といえるゴールドドリームは先の南部杯で3着に敗れた。ということで、狙いは昨年2着の2015年生まれの産駒とする。
筆頭格は帝王賞を勝ったオメガパフューム。その帝王賞では位置取りが後ろすぎだと思ったし、4角も大外を回る形。それでよくあれだけしまいに足を残せたなと感心するばかり。地方ダート適性を含めて総合力では一番だろう。ただし、広い大井では間に合ったが、今回の舞台は浦和。とにかく前有利のコース形態で、前走のように勝負どころで後方にいたのではとても間に合わない。平安Sの時で見せた機動力も持ち合わせるが、前を捕らえ切れない可能性も頭に入れておきたい。あとデータ的に補足すると、このレースは4年連続で1番人気が連を外している。恐らく1番人気が予想される同馬には嫌なデータだ。
脚質を考えるとチュウワウィザード、ロードゴラッソの方がコース適性は上だろう。チュウワウィザードは帝王賞の時にも思ったが、長く足を使えないタイプ。平安Sの時のように上がりがかかるか、それとも直線の短いコースがベスト。今回はこちらを上に取りたい。
ロードゴラッソは昨年末にダート路線に変更したのが大正解。初重賞勝ちとなった前走のシリウスSは勝負どころで後続に急かされる形で上がって行き、直線入り口で先頭へ。消耗戦となり差し馬が台頭する流れの中、早めに抜け出して粘り込んだレース内容は強いのひと言。GI級と手合わせするのは今回が初めてだが、力を付けた今なら可能性は十分にある。
心情的に地方所属馬にも頑張ってほしいが、このレースはあのフリオーソもアジュディミツオーも、トーシンブリザードでも勝てなかったレース。善戦までとみたい。
◎チュウワィザード
○ロードゴラッソ
▲オメガパフューム
藤田菜七子騎手はJBCスプリントを制することができるか?
今回、JBCスプリントは1400mで行われる。800mは短すぎるし、1300mだとフルゲートが11頭になってしまうので仕方がない。過去にも幅広い距離で行われているので、その点では問題なしだ。
このレースは4年連続で1番人気が2着。クラシックと違って信頼度は高いといえる。1番人気が予想されるのは藤田菜々子騎手騎乗のコパノキッキング。前哨戦の東京盃を逃げ切って勝利し、予定を変更しての参戦となった。根岸Sを勝っているので距離は全く問題なし。この馬の場合、とにかく発馬。前走のようにスタートが決まればいいが、クラシックの項でも書いたようにとにかく前に行けないと厳しい競馬場。特にこの1400mではそれが顕著。加えてコパノキッキングはもまれ弱いところもあるから、出遅れると極端な競馬をせざるを得ず厳しくなる。あっさり勝つか、それとも大敗かのどちらかではないかと思っている。
クラシック同様にコース適性を買って本命は地元馬ノブワイルドを指名。同条件で行われた前走のオーバルスプリントでは終始セフティーリードを保って快勝。クラシックと違って、過去に地方馬も馬券圏内に来ているし、何といっても浦和所属馬。地の利を生かせれば、2007年のフジノウェーブ以来となる地方馬のスプリント制覇も可能とみた。
ミスターメロディはデビュー当初にダート適性は証明済み。個人的に芝路線からいきなりダートの大舞台に挑戦、というローテーションは好きでないのだが、硬めの足さばきなどを見てもやはりダート向きかなと思う。調子がよくないように見えたスプリンターズSでも見せ場を作った馬。力は十分足りるし脚質も合いそう。
◎ノブワイルド
○ミスターメロディ
▲コパノキッキング
JBCレディスクラシックは5歳以下が有利
レディスクラシックもスプリントと同じ1400mで行われる。フルゲートの都合上、1400mか2000mしか選択肢がないのでそれは仕方ないとして、このレースの優先出走権が与えられるレディスプレリュード(大井・ダート1800m)の距離も短くしてよかったのではと思う。現に、レディスプレリュードに優勝して優先権を手に入れたアンデスクイーンは距離不足を理由にJBCクラシックへと回った。
このレースは今年で9回目だが、全て5歳以下の馬が勝っている。昨年も1~3着の全てが4歳馬。若い馬が活躍するという特徴からも、2016年にこのレースで2着したレッツゴードンキ(当時4歳、現7歳)には厳しいデータといえる。
脚質的に前有利の観点から考えると、圧倒的スピードを誇る新星モンペルデュの名前が真っ先に浮かぶ。1000mでもほぼ持ったままで前へ行ける速さは群を抜いていて、1200m以下で5戦5勝、1400m以上だと2戦0勝という典型的なスプリンター。あと1ハロンがカギなのは間違いないが、小回りの浦和なら何とかごまかしが利かないものか。
この馬の存在を最も嫌がるのがゴールドクイーン。2走前のスパーキングレディーCは距離を意識して控えたのだろうが、向正面で早くも手が動いていた。理想はやはり逃げだが、モンペルデュのハナを叩くのは至難の業。展開を考えると今回は厳しいのではないか。
このレースは死角が少ないファッショニスタとヤマニンアンプリメの争いとみる。ファッショニスタは昨年の3着馬で力が足りるのは間違いない。昨年は1800mだったが、もともとこの馬は1400mを主戦場にしていた。短距離でもスッと行ける足があり、軸として最もふさわしいと思える。
ヤマニンアンプリメの前走は位置取りが全て。途中から上がって行ったが間に合わなかった。浦和競馬場の特徴がよく出たレースだったといえるだろう。それを踏まえて今回は好位付けすると思われるが、ほかのJRA馬より出足が速くない。初コンビを組む武豊騎手がどう乗ってくるかに注目だ。
このレースも力さえあれば地方馬の台頭が可能。注目はサラーブ。前走が地方転入緒戦。JRAで8月に2勝クラスを勝ったばかりの馬で、いきなりの重賞挑戦はさすがに厳しかったが、1秒以内の差ならそこまで悲観しなくてもいい。4歳馬で若さも魅力。
◎ファッショニスタ
○ヤマニンアンプリメ
▲モンペルデュ
△サラーブ
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《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想や「最終逆転」コーナーを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。