過去10年で一番のスローペース?
9月7日(土)に中山競馬場で行われるのは紫苑S(GⅢ・芝2000m)。秋華賞に直結する3歳牝馬限定のトライアル重賞だ。
オークス2着馬のカレンブーケドールに、夏を越して成長した新勢力が挑む一戦。このレースを制するのはどの馬か。そして、馬券に配当妙味をもたらすオイシイ馬はどれか、検討していこう。
まずはレース展開や馬場傾向、コースの特徴といった点を分析していく。
ⒸSPAIA
逃げた馬が連対したのは2013年の勝ち馬セキショウのみ。基本的には差し有利なレースで、前半が後半より2秒近く遅かった直近の2年でも差し馬が連対している。
今年のメンバーを見渡すと確固たる逃げ馬は不在。一応、前走のフローラSで17番枠から3番手につけられたレオンドーロを逃げ馬として想定した。
他にわざわざ競りかけるような馬がいないことや、レオンドーロ自身が速いペースを刻んでいくようなタイプや立場でもないことから、スローペースが濃厚。
過去10年で最遅の前半62秒を超えるペースになると読む。レース傾向は差し有利でも、今年に関しては後方からの馬は割り引きたい。
読めない馬場状態と無双するルメール
路盤改修が行われた2015年からの3回はそれまでと違って開幕週から時計がかかり、外差しが決まりやすい傾向にあった。しかし昨年は一転して高速馬場になっていた。
これでは、身もふたもないが、今年がどちらのパターンになるかは土曜日になってみないと正直分からないため、当日の馬場傾向に注視する必要がある。
ⒸSPAIA
コースの特徴としては表に示したように外枠が有利。特に7・8枠は回収率もよく、なるべく外枠の馬を軸に据えたいところ。
さらに同コースでの騎手別成績を調べたところ、ルメール騎手が凄まじい好成績を叩き出していることが判明した。その他ではカレンブーケドールに津村騎手は勝率は悪いが、複勝率はそこまで悪くない。丸山騎手は大穴を勝たせた経験があり、人気薄なら押さえておくとよいだろう。
“隠れ中山巧者”を先物買い
我々の記事では毎度のことだが、なるべく配当的に魅力のある馬を推奨しよう、という観点から本命はパッシングスルーにした。フローラS4着時は上位入線馬の中で最初に鞍上の手が動きだし、それでも最後までじわじわと伸びて勝ち馬と0.1差という内容。どうも瞬発力不足な感じに見えて、東京より中山向きではないかという印象を持った。
実際、中山に求められる適性およびコース形態が似ている福島に替わった前走は、先行勢総崩れの展開を唯一3番手から馬なりで抜け出しての完勝だった。中山は今回が初出走となるものの、十中八九得意と見て間違いない。枠も大外枠を引き当てた。コース相性のよさがバレる前に先物買いで狙ってみたい。
対抗にはカレンブーケドール。オークスの映像を見ると、直線半ばまでは3着クロノジェネシスと脚色がほぼ一緒だったが、最後に外からラヴズオンリーユーが伸びてくると、それに呼応するように加速して、クロノを2馬身半突き放した。それ以前のレース内容を見ても、よく言えば勝負根性抜群、悪く言えば相手なりという馬かもしれない。大崩れは考えにくいが、格上相手でこそ狙いたいタイプなので今回は対抗止まり。
3番手にはクールウォーター。前述したような超スローペースになれば先行力は強みになる。大寒桜賞ではのちの青葉賞馬リオンリオンから0.2差、スイートピーSはレース上がり33.3という極端な瞬発力勝負で切れ負け。見限るのは早計だろう。全兄カミノタサハラは同コースの弥生賞を制しており、適性面も期待できる。
以下、先行馬を中心に、グラディーヴァ、フェアリーポルカ、ルメール騎手騎乗のレッドベルディエス、中山巧者のフィリアプーラ、エアジーンまでが△評価。先週の札幌2歳Sは本命馬が勝利しながら惜しい相手抜けがあったので、今週は相手をやや広めに押さえた。
▽紫苑S予想▽
◎パッシングスルー
○カレンブーケドール
▲クールウォーター
△グラディーヴァ
△フェアリーポルカ
△レッドベルディエス
△フィリアプーラ
△エアジーン
《関連記事》
▶新潟記念は金子氏所有馬のワンツー決着 先週のSPAIA予想陣の結果とともに振り返る
▶【京成杯AH】今は開幕週でも外差し有利な傾向 中山コースで切れるあの牝馬を指名
▶【セントウルS】勝ち馬の平均上がりは33.9 馬場傾向からは決め手のある馬に注目
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ 約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。