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【ダービー卿CT回顧】1番人気の連敗止めたトロヴァトーレ 10年前の勝ち馬モーリスと重なる強さ

2025 4/7 11:02勝木淳
2025年ダービー卿チャレンジトロフィー、レース結果,ⒸSPAIA

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迷いなき進路取り

ダービー卿チャレンジトロフィーはトロヴァトーレが勝ち、重賞初制覇。2着コントラポスト、3着キープカルムで決まった。

2、3着の着差3/4馬身以下はハナ、クビ、クビ、クビと続き、7着タシットまでは0.3秒差以内とハンデ戦らしい激戦がゴールまで続いた。

そもそもトップハンデ58.5kgに対し、最軽量は55kg。上下差3.5kgと極めて力量差がなかった。正直、いくらハンデ戦でも厳しかろうという馬は一切おらず、まさにどこからでも入れた。

それだけに、人気までも疑ってかかりたいところだったが、レースを締めたのは1番人気トロヴァトーレ。この日、絶好調のJ.モレイラ騎手。その手綱の冴えが混戦を断ったといってもいい。

この日からBコースに替わった中山の芝で2番枠。作戦に迷いはなかった。出たなりでイン追走。トロヴァトーレはいくらか前を追いかけようとムキになるところをみせるも、モレイラ騎手はがっちり抑えてキープ。4コーナーでも外を狙わず、先行勢の後ろで機を伺う。直線はラチ沿いへ。状況を見定める冷静な判断力が光った。

前後半800m46.4-46.0。レースラップに緩みがなく、それでいて後半が速いという構成では、コーナーでのロスが勝負をわける。最短距離を通ることこそ、勝利への近道だ。

とはいえ、1番人気で先行勢の壁に突っ込む形は難しい。外から交わしにいこうという意思があれば、2着コントラポストをとらえられたかどうか。


モーリスに似た晩成の血

レースラップは12.5-11.2-11.2-11.5-11.5-11.5-11.4-11.6。アサカラキングの逃げに対し、メイショウチタン以下、後続もついていく構えをみせ、張りつめたまま、勝負所へ。

残り400m23.0のまとめでは、小さなロスが結果に直結する。中山5勝、中山マイルなら3戦3勝のトロヴァトーレの舞台巧者ぶりも際立った。

もともとデビュー2連勝で葉牡丹賞を勝った素質馬。クラシックは弥生賞6着、青葉賞11着と壁にぶつかり出走を逃したが、マイルから1800m路線に舵を切ると、2着以下なし。本質が成績にあらわれてきた。

母シャルマントの姉はディアドラで、母の母ライツェントなのでソニンク牝系。ロジユニヴァースが出た系統で中距離のイメージも、この牝系にはジューヌエコール、リューベック、フリームファクシとマイル前後を得意とするタイプや、年を重ねて距離短縮で再び活力を取り戻す馬もいる。日本の種牡馬との交配を重ねることで、スピード系に磨かれていく印象がある。

トロヴァトーレはその典型であり、超一流マイラーに駆けあがる準備が整ったといっていい。中山での良績が目立つが、東京マイルだって【1-1-0-0】。中山専用では決してない。今回のように馬群で我慢し、しっかり脚を溜めて直線に向かえれば、楽しみはある。

1番人気の勝利は10年ぶり。その10年前の勝ち馬はモーリス。古馬になって強くなるイメージが重なる。モーリスはその後、安田記念からマイルCS、香港マイル、チャンピオンズマイルとGⅠ・4連勝をやってのけた。


血統表に残るフジキセキとエルコンドルパサー

2着コントラポストはハンデ55kgで最軽量タイ。オープン昇級後はディセンバーSで0.9秒差、洛陽Sは0.3秒差と着実に成績をあげていた。かつてはマイルだと少しパンチ不足の印象があったが、ここにきてマイルでの安定感も出てきた。

母アカンサスは牡馬相手に中距離でオープン勝ちがあるタフな馬だった。その父フジキセキはサンデーサイレンス系でも持続力とスピードに特化しており、マイラーも多く輩出した。コントラポストも父ルーラーシップから母父フジキセキに血の特性が変わってきたのではないか。

3着キープカルムはトロヴァトーレの背後からその進路をなぞるような競馬だった。そうなれば当然、仕掛けのタイミングは遅れてしまうが、進路は着実にとれる。待たされた分、最後は弾けた。

母ダンスアミーガは10年前の同舞台ターコイズSで16番人気2着と大穴を提供したことで知られる。牝系はダンスパートナーなので、ダンシングキイの系統。さらに母系にはエルコンドルパサーの血が入っているのも熱い。たった3世代しか産駒を残せなかったが、それでもその血は消えない。いつか凱旋門賞に挑む日本馬の血統表にその名を見つける日がくると信じたい。

2番人気ロジリオンは9着。外枠で前に壁を作れない状況は厳しく、さらに直線でも不利があった。流れに乗ったレースはしており、決して力負けではない。次走は成績と内容を踏まえ、評価していこう。


2025年ダービー卿CT、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。

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