データで見る「穴候補3頭」
いよいよ今週日曜に有馬記念が行われる。芝中長距離戦線の総決算にして年末の風物詩。今年もドウデュースらGⅠ馬10頭が参戦するオールスター戦となった。普段競馬をやらない人も、このレースだけはぜひ馬券を買って楽しんでいただければイチ競馬ライターとして嬉しい限りだ。
勢力図としては天皇賞(秋)とジャパンCを連勝したドウデュースが断然の首位。どちらもスローぺースの展開不利をものともしない強烈な勝ち方であり、大雨でも降らない限りその優位は揺るがない。
馬券の焦点は、残る2席にどの馬を選ぶか。様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴馬候補を導き出した。
「3歳の中長距離GⅠ馬」は複回収率135%! レガレイラ
1頭目は3歳牝馬レガレイラを挙げる。昨年のホープフルSでは4角10番手から豪快に差し切ってGⅠ制覇。後のジャパンC2着馬シンエンペラーを破った。
まずはデータ的な前提に触れておく。有馬記念は1着賞金5億円を争う国内屈指の超ハイレベル戦。それゆえ好走馬の大半を「既にGⅠ実績がある馬」が占める。身もフタもないがそもそも「強い馬」でなければ、枠や展開に恵まれようが上位進出は難しい。
実際、過去10年の有馬記念では「芝2000m以上の平地GⅠの勝ち馬」が【8-5-10-44】複勝率34.3%、複回収率75%。「同未勝利馬」は【2-5-0-86】複勝率7.5%、複回収率30%。好走率の差は当然として、回収率でも前者がはるかに優勢となっている。後述する2頭含め「芝中長距離GⅠを既に勝ったことがある馬」を選ぶのが今回の基本方針となる。
芝中長距離GⅠ勝ち馬のうち、3歳馬は特に好成績で【3-1-2-4】複勝率60.0%、複回収率135%。古馬との能力差が埋まりつつある12月末にして斤量差2kgはやはり大きい。
上位人気のアーバンシック、ダノンデサイルも重視が妥当だが、もう1頭のレガレイラも忘れてはならない。皐月賞、日本ダービー、ローズSはいずれも上がり最速で猛然と追い込むも位置取りが後ろすぎて届かず、エリザベス女王杯は直線で挟まれる致命的な不利があった。
今年に入ってツキに見放されたレースばかりだが、世代屈指の能力があることには変わりない。展開さえ噛み合えば2024年のうっぷんを晴らす激走があっても驚けない。
「ジャパンCキレ負け組」に金脈あり ジャスティンパレス
2頭目はジャスティンパレス。昨年の有馬記念は1番人気に推されるも追い込み及ばず4着。1-2-3着を4角3-2-1番手の馬が占める決着によく差を詰めてはいた。今年はジャパンC5着からここへ向かう。
有馬記念における「前走ジャパンC組」の取捨はシンプルだ。ジャパンC5着以内なら【3-3-4-11】複勝率47.6%、複回収率112%に対し、同6着以下は【0-0-0-30】と全滅している(※過去10年)。大きな逆転はなく、掲示板を確保した馬にフォーカスすればよい。
ジャパンC5着以内馬のうち、その際の上がりが2位以内だと【1-0-0-6】複勝率14.3%、複回収率32%と案外振るわず、むしろ同3位以下【2-3-4-5】複勝率64.3%、複回収率152%の方がはるかに活躍している。言い換えれば、東京の「末脚キレ味勝負」で分が悪かった馬こそ、有馬記念で狙い目になりうるのだ。
ジャスティンパレスはジャパンCでは上がり3位で5着に終わった。もともと3200mの天皇賞(春)を勝っているスタミナ型で、本質的には消耗戦を好む。
しかし今年はドバイSC、天皇賞(秋)、ジャパンCがいずれもスローペース、宝塚記念は馬場が悪すぎて力を出せなかった。近走着順こそ今一歩だが、タフな流れになればもっと走れていい。もっとも、今回も今回で逃げ馬不在なのは痛いが……。
「中山芝2500mの鬼」横山和生 ベラジオオペラ
最後は大阪杯の勝ち馬ベラジオオペラを選ぶ。鞍上はダービーから7戦連続での騎乗となる横山和生騎手。何を隠そう、彼こそが「中山芝2500mの鬼」である。
過去5年で横山和騎手の中山芝2500m成績は【4-2-3-7】複勝率56.3%、単回収率628%、複回収率219%と非の打ち所がない。ちなみに16回の騎乗のうち12回は4角を3番手以内で通過していた。このコースでは前々で運ぶ傾向が強く、スローペースが想定される今回もそのスタイルはマッチするだろう。
また、タッグを組む上村洋行厩舎の管理馬では(コース限定せず)【9-4-5-16】複勝率52.9%、単回収率161%、複回収率116%と好相性で、一発に期待できる。
ベラジオオペラは一言で評するなら「何でもできる」のが長所の馬。これまでスローペースの瞬発力勝負、道悪、高速馬場のロングスパートなど様々な形に対応し、距離も1800~2400mまでソツなくこなしてきた。先行してよし、差してよしと脚質も自由自在。まさにオールラウンダーだ。
ただ、自身が器用なオールラウンダーであるがゆえに、相対的には「他馬が走りにくい条件」や「位置取りに注文がつく条件」の方が有利に働く。具体的に書くと東京芝2000mのような大箱コースでの脚力比べより、立ち回り次第でごまかしが利く中山の有馬記念の方が合うはずだ。
付け加えると、前走時は「夏バテが尾を引いた」とのことで陣営のトーンが上がっていなかった。3歳時も夏負けで神戸新聞杯をパスした経緯があり、どうやら暑さに強くない。裏を返せば12月の厳冬期はこの馬が最も輝く季節。存分に暴れまわってほしい。
<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。
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