今開催東京のトレンド「4連勝」
過去10年ダイヤモンドSの1番人気は【6-2-0-2】。このレースの誘導馬を務めたミライヘノツバサの20年など大波乱もあるが、数少ない長距離重賞とあってここ照準のステイヤーがきっちり結果を出すことが多く、1番人気はイメージより堅実な傾向にある。
直前の京都牝馬Sまで2022年JRA重賞は1番人気17連敗。前売りから1番人気を守ってきたテーオーロイヤルの勝利によって連敗は阻止されたと思われた。ところが、最終的にレクセランスが1番人気、テーオーロイヤルは2番人気。連敗は18になった。重賞で1番人気がこれほど連敗するのは記憶にない。
勝ったテーオーロイヤルは昨年、青葉賞4着で日本ダービーへの出走権を逃し休養。秋は菊花賞抽選除外の不運もありながら、3連勝で一気にオープンまで駆けあがった。今開催の東京は、開幕週白富士Sジャックドール、東京新聞杯イルーシヴパンサーと4連勝でメインを制する4歳馬が続出。この世代、晩成型の有望株もそろい、実に層が厚い。今年は世代間での争いより世代内の競争が激化しそうだ。
シーザリオとマンハッタンカフェ
レースはグレンガリーが先手を奪い、最初の1000mは13.0-11.7-12.4-12.5-12.0、1.01.6。番手のアンティシペイトが気になるのか、ペースは前半で落ち切らず、その後の1000m12.1-12.4-13.1-13.0-12.7と1、2コーナーにかけてペースを落とさず、大逃げの形に持ち込んだ。グレンガリー、アンティシペイトがポツンポツンと進む形になり、向正面でようやく13秒台が2度あらわれ、中盤1000mは1.03.3。序盤が極端に遅くならず、中盤できっちり緩む、これは天皇賞(春)でよくみられるラップ構成。誤魔化しようがなく、もろにステイヤー資質を問われた。4番手から満を持して先頭に立ち、押し切ったテーオーロイヤルはその体型も含め、現代では珍しい純正ステイヤー。長距離適性ならば世代屈指の存在であることを示した。
テーオーロイヤルの父リオンディーズは朝日杯FSこそ勝ったが、たった5戦で引退。その最終的な距離適性は分からずじまいだったが、その母シーザリオの父はスペシャルウィークで母系にはサドラーズウェルズ。半兄エピファネイアと同じくリオンディーズの距離適性は幅広い。母メイショウオウヒは自身も産駒もダート適性が高いものの、その父マンハッタンカフェは3歳夏に成長、菊花賞と有馬記念、翌年天皇賞(春)を勝った。リオンディーズとの交配によってマンハッタンカフェの血も目覚め、テーオーロイヤルに注がれる。春の盾はぐっと近づいた。
長距離戦に慣れたいヴェローチェオロ
2、3着ランフォザローゼス、トーセンカンビーナは最後の直線まで後方にいた追い込み型。全体的に流れが決して楽ではなかった証でもある。ランフォザローゼスは19年青葉賞2着以来の好走。古馬になり2000m以下中心に使われ、6歳冬ではじめて3000mを超える距離に出走、2着に入ったのは正直、驚きだ。今月末引退の藤沢和雄調教師は最後まで常識を超えてくる。あわやテーオーロイヤルに届くのではないかという田中勝春騎手渾身の追い込みも胸を打った。JRAの2月はドラマが多い季節。ランフォザローゼスに関していえば、去勢休み明けから復調傾向。スタミナ寄りの馬場と展開、相手関係で狙いたい。
3着トーセンカンビーナはランフォザローゼスより先に仕掛けていったこともあるが、手応えではやや見劣った。前走ステイヤーズS同様、以前よりズブさが増してきた。東京の直線で目一杯追える形になったので、スタミナを生かして3着まできたが、最後の直線が内回りの阪神大賞典では最後に差を詰めても上位に届かずという可能性は高い。慎重に見極めたい。
5着3番人気ヴェローチェオロはペースが落ち切らない序盤から引っかかり気味に進み、流れが緩んだ中盤もリズムをつかめなかった。最後も止まらず伸びてはいるので、長距離適性は認めつつも、3000m超で結果を出すには前半から中盤にかけての呼吸が大切になる。長距離で競馬を教えていければ、重賞でも通用するだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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