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【シルクロードS】紙一重の攻防をクリア!  メイケイエールが復活の勝利

2022 1/31 10:37勝木淳
2022年シルクロードステークスのレース展開,ⒸSPAIA

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陣営と池添謙一騎手の執念、実る

昨年スプリンターズSでは発馬直後にものの見事に外に逸走、ハミ受け不良で注意を受けたメイケイエール。それでも最後は内が伸びる馬場を外から迫って4着。まともなら能力はGⅠ級だ。

これまで回顧記事で再三指摘してきたが、メイケイエールは1200m戦なら前半折り合いを欠き、暴走してしまっても、止まることはなかった。鞍上の制御を振り切ってしまえば、馬は最後まで走り切るのは難しい。メイケイエールはそこを越えてきた。それ以上にクセ馬としてのややこしさが全面に出てしまったため、忘れられがちだが、3歳春までに重賞3勝、超A級でないとできない記録だ。

調教からホライゾネット、引き返しを装着。頭を上げるクセを抑えるために打てるだけの手を打ってきた。陣営の努力は馬具だけではない。メイケイエールは前や横に馬がいるとたちまちエキサイト、ひたすら追い抜きに行く超マジメな気性。いつもパドックは大人しく、競馬になると豹変してしまう。普段からうるさいわけではなく、競馬で落ち着かせなければならない。これを調教で改善するのは並大抵のことではないはずだ。陣営と池添謙一騎手に心から賞賛の拍手を送りたい。

この日も発馬を決めたあと、外から馬が来ると頭を上げる仕草を見せ、外枠からハナを奪いに来たビアンフェが前を横切ったときは、さらに危なかった。だが、そこをギリギリやり過ごし、クリア。これまで再三、苦しめられた内枠での立ち振る舞いは前進の証だった。前半をクリアできれば、能力は超A級。見事に抜け出した。状態のいい外目を先行勢が意識してくれたことで、進路はスムーズ。そこに光が差した。

正直、騎手にとって馬場を選べるような自在に操れる馬ではない。それでも勝たせた池添騎手の手腕は見事。レースに挑む過程において最後を託される騎手独特のプレッシャーをよくぞ跳ねのけた。

さあ待望のGⅠへと言いたいところだが、やはり危うさはまだ残る。外枠、もしくはビアンフェのような早い馬が内側に入ってくれるなど、枠順の条件はつくだろう。この勝利によって次は馬の精神状態がどう変化するかも分からない。競馬は本当に難しい。優しくメイケイエールを見守ってあげたい。

本番でも穴で一考、シャインガーネット

レースはハイペースも厭わない徹底先行型ビアンフェがハナ。前半600mは12.2-10.5-10.9で33.6。ビアンフェもまたスプリンターズSでゲート入りを拒み、ゲート再審査、発馬に不安がある。今回もスタートダッシュは鋭くなく、先頭に立つまでに脚を使った。叩いて変わるキズナ産駒。ライバルのモズスーパーフレアは引退。甘く見られればチャンスはある。

後半600mは11.5-11.2-11.8、34.5。坂下から残り200mまで11.2。ここで抜け出したメイケイエールは力が違った。2着シャインガーネットは1200m特有の厳しい流れのなか、7番手で流れに乗れた。直線を向いて外に出すタイミングも完璧、セントウルS以来2度目の1200m戦で適応してみせた。

中京はファルコンS勝ちがある得意舞台。そのファルコンSは重の極悪馬場。牝馬ながらパワー型で、適度に時計を要した点もよかった。同じ開催日割りだった昨年の高松宮記念は重馬場で勝ち時計1.09.2。雨はわからないが、適度に荒れた馬場状態になる公算は高く、本番も適性がかみ合う。要注意だろう。

見直したいのはエーポス

3着は外を追い込んだナランフレグ。以前は左回り中心だったが、昨秋は阪神でOP2、1着とイメージを変える内容、差し脚に安定感が出てきた。中京は得意舞台なだけに、ここはせめて2着に入り、賞金加算したかった。急坂、荒れた馬場の中京で上がり33.3は特筆すべき記録。それだけに高松宮記念出走が叶うかどうか。

1番人気カレンモエは7着。早めに抜け出し、最後に甘くなるという競馬で重賞2着3回。それを踏まえ、松山弘平騎手が追い出しを我慢したものの、弾けなかった。父母ともに高松宮記念を勝ったスプリントチャンピオン。本番に出てほしい一頭だが、この敗戦でどう判断するだろうか。以前ほど、最後に抜け出す脚がなかったのは休み明けのためか、それとも年齢から来るものか。中間は坂路で49.8を出しているだけに、まだまだやれると踏みたい。

惜しかったのは6着エーポス。外目で流れに乗れたが、外に馬が集まってしまい、最後の直線で進路がなく、追い出しを待たされてしまった。ゴール前、猛追してカレンモエを捕らえたように脚を余した。短距離の差し馬として安定しつつある。見直したい。


2022年シルクロードステークスのレース結果インフォグラフィック,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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