関西所属の2騎手に注目
21年は関西も若手の台頭が目立った1年だった。すっかり上位人気馬常連に名を連ねる松山弘平騎手以外にも岩田望来騎手、団野大成騎手、坂井瑠星騎手など重賞でも光る騎乗が多くみられ、着実にトップジョッキーへの階段を駆けあがってきた。
一方のベテラン勢も、幸英明騎手がアカイイトでエリザベス女王杯を勝ち、武豊騎手が朝日杯FS制覇、JRA・GⅠコンプリートに王手をかけるなど、話題に事欠かない1年だった。
注目騎手のピックアップに困ったので、目先を変えて、単勝回収値に着目した。21年に500鞍以上騎乗した騎手のなかで、単勝回収値が100を超えた騎手が鮫島克駿騎手、亀田温心騎手、石川裕紀人騎手、西村淳也騎手の4人。ここでは関西所属の3人のうち、鮫島克駿騎手と亀田温心騎手について昨年1年間のデータを使い、掘り下げてみる。
鮫島克駿 21年JRA69勝(全国14位関西9位)
デビュー7年目の21年はJRA69勝。直近3年は42、28、37勝だから、昨年は大きく勝ち星を上積みした一年だった。今年も1/23終了時点で6勝とまずますのすべり出しだ。
個人的に考える鮫島克駿騎手の特徴といえば、馬場読み。サンレイポケットで勝った新潟大賞典は克駿騎手の読みが冴えたレース。春開催の新潟は芝の状態が芳しくなく、外伸びの傾向だった。
新潟大賞典も当然ながらみんな直線は外狙い。ところが、克駿騎手は馬場の真ん中あたり、ギリギリ伸びる部分をピンポイントで突き、勝ち切った。荒れ馬場をこなせるサンレイポケットの特性と克駿騎手の馬場読みが冴えた。
馬場状態が変わりやすいローカルでは馬場読みは重要。克駿騎手のコース取りに注目すると、馬場傾向がみえてくる。
それではデータを見ていこう。基本的にはローカルが主戦場。関西圏であれば、現在開催中の小倉【23-19-23-165】勝率10.0%、複勝率28.3%が質量ともに充実。やはり地元九州では頼りになる。
関東では新潟が【20-14-15-95】勝率13.9%、複勝率34.0%。小回りの小倉と広い新潟、正反対の競馬場で良績をあげるあたり、馬場読み名人らしい。
馬場読みという意味でクラス別成績にも特徴がみえる。新馬が【10-10-5-36】勝率16.4%、複勝率41.0%と抜群。はじめての競馬に挑む若駒にとって、少しでも馬場状態のいいところに導かれるのは大きい。単複回収値は197、101、人気以上に走らせてくる。
新馬戦の馬場別成績をみると、芝【6-6-4-27】勝率14.0%、複勝率37.2%、ダート【4-4-1-9】勝率22.2%、複勝率50.0%。好走確率で考えるならばダートだろう。ダートの新馬戦に克駿騎手が騎乗してきたら、積極的に買いたい。
一方、馬券的妙味という意味では芝。単複回収値は234、111。今年も1/9中京6R芝2000mの新馬戦9番人気サンライズエースで3着。ラブリーデイの全弟モーダルジャズら素質馬がそろった一戦で11頭中9番人気での激走だった。
芝のコース別成績は当然、小倉と新潟が中心。小倉芝1200m【11-4-3-46】勝率17.2%、複勝率28.1%、小倉芝2000m【5-3-4-19】勝率16.1%、複勝率38.7%と短距離も中距離もこなす。新潟芝1200mにいたっては【3-1-1-6】勝率27.3%、複勝率45.5%と驚異的。春の新潟まで覚えておきたい。
亀田温心 21年JRA38勝(全国34位関西21位)
昨年500鞍以上騎乗した騎手のなかで、単勝回収値トップだった亀田温心騎手。デビュー3年間の勝ち星は12、40、38勝なので、昨年は2年目の記録こそ超えられなかったものの、単回収値124と若手の穴ジョッキーという地位を築いた。
同期には岩田望来騎手、団野大成騎手、菅原明良騎手など有望株がずらりと並び、そこまで注目を浴びない存在だからこそ、馬券妙味がたっぷりある。そして同期の腕達者と比較しても遜色ない存在。それを証明したのが12/18中京12R大須特別(2勝クラス、ダ1400)のオーマイガイだ。
秋に復帰したオーマイガイは内田博幸騎手が乗り、東京、中京で3戦連続2着。一旦は抜け出すものの、あと一歩足りず最後に捕まるという競馬を繰り返した。当時8歳の秋、さすがに2勝クラスで堅実に好走できても、勝ち切る力はないと見られていた。
大須特別で騎乗したのが亀田騎手。減量特典のない特別戦だったが、亀田騎手は積極的に先手を奪い、前半600m34.4と飛ばした。これまでのオーマイガイ同様、最後の200mは12.6と失速したものの、後続に3馬身差の圧勝。亀田騎手の強気な姿勢と最後まで持たせる技術が光った。
亀田騎手の特徴のひとつが枠番別成績。1枠が【8-8-2-38】勝率14.3%、複勝率32.1%と抜群。単複回収値224、112だから注目しないわけにはいかない。上記の大須特別も1枠だった。白帽子の亀田騎手は確実に買い目に入れておきたい。
これをさらにダートに絞ると、1枠は【3-4-0-12】勝率15.8%、複勝率36.8%と上昇。芝は馬場状態次第で1枠有利な場合もあるが、ダートの1枠は基本的に砂を被ることが想定され、有利とはいえない。
そんな条件でも、オーマイガイのように1枠から積極的に騎乗する姿勢が好成績に結びついている。ダートの白帽子の亀田騎手は馬券妙味もあり、狙うしかない。
位置取り別成績はやはり逃げ【11-4-4-24】勝率25.6%、複勝率44.2%、先行【15-19-8-78】勝率12.5%、複勝率35.0%と積極的な騎乗で好成績を残した。昨年のキーンランドCはレイハリアで好位から抜け出し勝利。重賞での一発も逃げ、先行なら十分考えられる。
ただ、亀田騎手の積極策はちょっと読みにくい。前走で逃げた馬は【4-4-1-41】勝率8.0%、複勝率18.0%、単複回収値40、52とそこまでではなく、前走先行が【16-9-10-107】勝率11.3%、複勝率24.6%、単複回収値155、72と成績がいい。また前走後方も【8-5-9-138】勝率5.0%、複勝率13.8%、単複回収値239、143。
亀田騎手を買う場合、出馬表をチェックする際、前走で逃げた馬より先行だった馬、もっというと穴は前走後方だった組から出現する。前走で後方からレースを進めた馬を、少しでも前で競馬させ、好走へ導く。これが亀田騎手の特徴。前走後方だったとしても、亀田騎手が騎乗する場合は油断してはいけない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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