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【シンザン記念】指数上位馬に不安要素 穴はジャスティンヴェル

2022 1/8 17:00山崎エリカ
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今年のシンザン記念は低調なメンバー構成

2022年シンザン記念PP指数,ⒸSPAIA,インフォグラフィック


シンザン記念はジェンティルドンナ、ミッキーアイル、アーモンドアイ、ピクシーナイトなどの大物が誕生している一方、極端にメンバー層が薄く、レベルが低い年もある。今年は2勝馬がソリタリオの1頭のみ。前走デイリー杯2歳Sで3着のカワキタレブリーが能力値3位、前走2勝クラスで2着のウナギノボリが能力値5位にランクインしていることからもわかるように低調なメンバー構成だ。

こういう低調なメンバー構成の年は、前走好走後に成長を促した休養明けの馬が、変わり身を見せて勝ち負けすることが多い。また、2018年のアーモンドアイのように、それらが勝つことで、終わってみればレベルが高かった年もしばしばある。今年の該当馬はラスールやショウナンアメリアである。

ラスールはルメール騎手が「新しいグランアレグリア」と表現し、ルメール騎手がこの馬に乗るために毎年恒例の年始のバカンスを短期で切り上げている(アーモンドアイの時ですら、バカンスのために戸崎騎手に譲っている)こともあり、過剰人気は必至であまり買いたくないのが本音。

しかし、ノーザンFの期待馬であるか、今年2月で勇退する藤沢和調教師に機会を与えたいかのどちらか、または、どっちもであることは間違いないだろう。ノーザンFの有力馬がここに出走して来ず、相手を楽にしていることもそれを物語っている。

能力値1位~5位の紹介

【能力値1位 マテンロウオリオン】
阪神ジュベナイルF当日の阪神芝1600mの新馬戦では11番枠からまずまずのスタートで先行策。内の馬の出方を窺いながら2列目中目まで上がり、道中も逃げ馬エムズフラッシュとの差を詰めて行く形。エムズフラッシュが3~4角から動いて、早仕掛けという状況下で並びかけて行き、内回りの合流地点で先頭。3~4角の早仕掛け、さらにもう1頭分外に出せばいいものを、馬場のギリギリ悪いところを通ったことが祟って、ラスト1Fの登り坂で馬場の良い外を通ったエバーシャドネーに3/4差ほど差し切られた。上手く乗っていれば勝っていた内容だった。

勝ちに等しい内容だったことから、前走は1勝クラスの万両賞に格上挑戦。6番枠から出遅れて最後方からとなったが、横山典騎手らしく単独の最後方で脚を温存し、4角でも最内を通しながら出口で外に出して、一気の差し切り。3着馬を1馬身半差ほど突き放して、悪くない指数で勝利した。ただ、前走時は出遅れが怪我の功名となって、明らかに展開に恵まれた。前走は噛み合っての好走だけに、今回は同じようにはいかない可能性が高い。指数上位ではあるが過大評価はできない。

【能力値2位 ビーアストニッシド】
前々走の未勝利戦では8番枠から二の脚の速さで先手を取ったものの、外からソングフォーユーがハナを主張して来たので、控えて2番手。序盤で折り合いを欠いていたが、内ラチに頼るような形ですぐに折り合いをつけて、そのまま2番手から最後に抜け出して勝利した。ただ、指数は悪くはないが特に強調できるようなものでもなかった。

前走の京都2歳Sは未勝利勝ち直後でいきなりの重賞挑戦。3番枠から好発を切って楽に主導権を握り、いきなり2着と結果を出したのには驚かされた。11月阪神の芝2000mは先行馬に厳しい馬場状態。序盤でビーアストニッシドに絡んで来たグッドフェイスは最下位に敗れ、3列目の内でレースを進めてビーアストニッシドとハナ差の3着だったフィデルは次走のホープフルSでも4着に善戦している。

前々走から距離を延ばして、スタミナを生かす競馬をすることで、良さが出たのだろう。それだけに距離が短くなることへの不安はあるが、力はある。また、岩田康騎手に乗り替わって以来、徹底してラチに頼る競馬をしているので、新馬戦で見せたモタれ癖や掛かり癖が随分と解消されている。そういう意味では、今回の最内枠はいいかもしれない。

【能力値3位 カワキタレブリー】
7月函館芝1200mの新馬戦を6番枠から好位の内でレースを進めて勝利。前にいた2着馬をゴール手前でアタマ差交わしての勝利だったように、そこまで優秀な内容というわけではなかったが、その後は使われるごとに着実に上昇。前走は重賞のデイリー杯2歳Sで3着するまで成長した。

ただ前走は5番枠から好位を取ったものの、徐々に位置を下げ、中団からインコースを狙っての好走。極端なスローペースで速い上がりが求められた中、中団最内で脚を温存し、最後の直線でも開いた内を突く競馬が上手く嵌った感がある。前走からさらに上昇を期待するとなると、そう簡単ではなさそうだ。

【能力値4位 ソリタリオ】
前々走の新潟未勝利戦では、10番枠から促して2列目の外から、単独2番手まで上がり、ラスト1Fで抜け出して2馬身半差の快勝。逃げ、先行馬にとっては厳しい馬場状態だった新潟芝を好位から抜け出した内容は、着差以上の強さを感じさせるものではあった。

前走のこうやまき賞は、7番枠からゲートで立ち上がって出負け。中団外からの競馬になったが、前2頭が競りあって後続を引き離して行く中で、前との差を詰めるようにして上がり、3角手前では2列目の外。3~4角でも楽な手応えでレースを進めていたが、直線序盤で追い出されて先頭に立っても後続との差を広げられず、ラスト1Fでは抜け出したが、外からウナギノボリに差し込まれ、クビ差の勝利となった。

前走で最後が甘くなったのは、出負けを挽回して勝ちに行く競馬をしたことと、終始外々を回るロスの大きい競馬になったからだろう。今回は前走から状態面が上がるかどうかが微妙ではあるが、前走で今回と同舞台の中京芝1600mを勝利していることは有利となりそうだ。

【能力値5位 ウナギノボリ】
新馬戦では7番枠から出遅れて中団。インコースを追走したが直線序盤で進路がなく、やや外に持ち出して馬群の間を割って伸び、先に抜け出したリゴレットに半馬身差をつけて勝利した。

同馬は次走サウジアラビアロイヤルCで4着、前走のこうやまき賞も2着と着実に力はつけている。ただ、新馬戦以降は、全て最後方からの競馬で出遅れ癖はだんだん酷くなっている。また、押してもなかなか進んで行かないうえに、瞬発力もなく、極端なスローペースとなったデイリー杯2歳Sでは、位置取りの悪さと決め手のなさが祟って最下位に敗れている。

標準的に時計の掛かる今の中京芝なら、スローペースになったとしてもキレキレの決め手を求められることもないし、出遅ればければもっとやれるという期待もある。しかし、今回もまた出遅れる可能性は否定できない。またこのようなタイプは出遅れずに勝ち抜く競馬をすると、意外に伸びないこともある。今回のメンバーならば力は互角以上の存在で有力であることは確かだが、あてにはならない。

穴馬はジャスティンヴェル 前走は度外視

ジャスティンヴェルは新馬戦で5馬身差の逃げ切り勝ちを決めたが、ラスト2Fは11秒2秒-11秒8秒と減速しており、そこまで高い評価ができるものではなかった。しかし、前々走のききょうSは勝ち馬のドーブネが逃げ切った流れを、中団外々から4角大外を回りながら、最速の上がり3Fタイムでの2着となかなか評価できる走り。意外と強いと思わせられた。

前走の万両賞当日は、馬場の内側が悪化した状況下で1番枠。外から差したマテンロウオリオンが勝利している一方、内を通ったゼッケン1番から3番までの馬は綺麗に3頭とも11頭立ての9~11着に敗れる結果となっている。それだけに終始中団の内々の競馬になった前走の大敗は度外視できるだろう。今回で一気の巻き返しが十分に期待できる。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)マテンロウオリオンの前走指数「-11」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補


ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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