1番人気、キャリア2、3戦の2勝馬
阪神に外回りコースができ、阪神JFが実力通りに決まるようになって8年後、トリッキーな中山マイルで行われていた朝日杯FSも阪神外回りに変更された。以後、ダノンプレミアム、ステルヴィオ、タワーオブロンドン、アドマイヤマーズ、グランアレグリア、サリオス、ステラヴェローチェなど3歳以降も活躍する本格派が続々とあらわれた。
かつての早熟っぽい馬が活躍する2歳GⅠではなくなり、翌年を展望する価値あるレースへと生まれ変わった。そんなクラシックへつながる登竜門的レースについて、阪神移設後の7年間のデータをもとに探っていこう。
1番人気は【3-1-2-1】勝率42.9%、複勝率85.7%と驚異的。阪神移設後、崩れたのは16年牝馬のミスエルテ4着のみ。牝馬だと18年グランアレグリア3着含め未勝利だが、今年牝馬の登録はあるものの、1番人気にはならない公算が大。牡馬に限ると【3-1-1-0】とすべて馬券圏内。蹴っ飛ばすのは危険だ。
また、2番人気も【2-2-1-2】勝率28.6%、複勝率71.4%。1、2番人気がそろって消えたのは16年しかなく、本命対抗は1、2番人気でよさそうだ。しかし、3番人気は【0-1-1-5】複勝率28.6%と一気に信頼度が落ち、4、5番人気ともに【0-0-0-7】と馬券圏内がない。つまり1、2番人気を除く残りひと枠が混戦で、10番人気以下【0-1-3-48】複勝率7.7%などヒモ荒れ感が強い。キャリアが浅い2歳戦らしく、事前の戦力比較が不十分で、不当に人気を落とす隠れた実力馬がいる。3連系なら十分高配当は狙えるので、出走馬の戦力分析は入念にしたい。
次にキャリアについて。1戦は【1-0-0-1】。15年2番人気リオンディーズが勝ち、16年3番人気クリアザトラックが7着と極端(いずれもМ.デムーロ騎手騎乗)。ベストは3戦【3-3-1-27】勝率8.8%、複勝率20.6%、ついで2戦【2-3-2-22】勝率6.9%、複勝率24.1%、4戦【1-1-4-23】勝率3.4%、複勝率20.7%まで。5戦以上は【0-0-0-21】。
理想は勝ち馬7頭中5頭の2勝以上。1勝馬の勝利は上記のリオンディーズのほかに20年7番人気グレナディアガーズがいるが、上記の1番人気【3-1-2-1】はすべて2勝以上。今年もジオグリフ、セリフォス、ドウデュース、ドーブネなど上位人気はここに当てはまる。まず圏外はないか。
前走オープン【0-0-1-15】と不振
上位人気馬を買おう、おしまい。……ではなく、複穴探しも含めここからはあきらめず前走成績を探ってみよう。
まずドーブネ、ドウデュースが当てはまる前走オープンが【0-0-1-15】複勝率6.3%と不振。やはり重賞組が基本で、GⅢ【2-3-1-14】勝率10%、複勝率30%、GⅡ【1-4-4-31】勝率2.5%、複勝率22.5%が狙い。
つぎに重賞組のレース別成績をみると、サウジアラビアRC【2-2-2-5】勝率18.2%、複勝率54.5%と抜けている。ところが今年は勝ったコマンドラインが不在、この組は登録がない。デイリー杯2歳S【1-2-2-15】勝率5%、複勝率25%、京王杯2歳S【0-2-2-16】複勝率20%あたりが有力だが、絶対視は禁物だ。
そこでセリフォス、プルパレイが該当するデイリー杯2歳S組について着順別成績をみる。やはり勝った馬は【1-1-1-2】勝率20%、複勝率60%で、セリフォスは合格。プルパレイの4着は【0-1-0-2】複勝率33.3%で悪くなく、14年14番人気アルマワイオリ2着と大穴も出現。覚えておこう。
次に【0-2-2-16】の京王杯2歳S組について。今年は2着トウシンマカオ、8着ヴィアドロローサ、9着ベルウッドブラボーが該当。負けた2頭はいずれも2勝馬で見限れない。しかし、その着順別成績を出すと、掲示板以内【0-2-2-10】、6着以下【0-0-0-6】。買えるのはトウシンマカオのみかと思いきや、2着だった馬は【0-0-0-4】と微妙。京王杯2歳S組はデータから強調しづらい。
それからジオグリフの札幌2歳Sは【0-0-0-1】とデータがほぼない。ドン尻からひとまくり、2着に4馬身差つけたレース内容からもジオグリフを評価しないわけにはいかない。ただ、3着トーセンヴァンノなどその後出走した馬が好走していないのは気になるところだ。
侮れないデュガ、オタルエバー
ここまで重賞組でいいのはセリフォス、プルパレイ、ジオグリフぐらい。オープン【0-0-1-15】が引っかかり、データ上、買い材料をもった馬が少ない。そこで前走1勝クラス【2-0-0-21】勝率、複勝率ともに8.7%も含め、条件戦組にも目を向けてみよう。
前走条件戦組を距離別にみると、1600mが【2-0-0-11】。該当馬は抽選対象のスプリットザシー、トゥードジボン。1400m【1-0-1-12】に該当する2勝馬はオタルエバー、デュガ(中京2歳Sと両睨み)の2頭。どちらも前走逃げ切り勝ち。前者は新潟2歳S3着と重賞実績があり、後者の前走は追いかけてきた好位勢をねじ伏せた。今年はこれら条件戦を勝った2勝馬にもチャンスがありそうだ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。
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