中京移設後は波乱含み
12月に入ってGⅠシリーズもいよいよ佳境に突入。1週目はダート王決定戦のチャンピオンズC。今年も海外からの参戦はなく、前身のジャパンCダートのコンセプトは薄れつつある。また中京に移ったことで、レース傾向自体も大きく変化してきた。ここでは過去10年間のうち、中京で行われた7年間のデータを使用、その傾向を探っていく。
まず人気別成績をみると、1番人気【1-3-0-3】勝率14.3%、複勝率57.1%。中京に移って1番人気で勝利したのは18年ルヴァンスレーヴのみ。14、15年コパノリッキー、20年クリソベリルなどGⅠ馬でさえ期待を裏切り、波乱度合いは増している。2番人気【2-0-0-5】勝率、複勝率ともに28.6%、3番人気【0-2-3-2】複勝率71.4%と上位人気の好走確率は低くはないが、8番人気【1-2-0-4】勝率14.3%、複勝率42.9%など伏兵にもホットスポットがあり、注意は必要だ。
次に年齢別成績。今年の話題の中心ソダシが当てはまる3歳は【2-1-0-9】勝率16.7%、複勝率25%。もちろん初ダートという問題もあり、3歳のデータを素直に当てはめられない。そもそも前走が芝だった馬は【0-0-0-1】、昨年のヨシオ1頭しかおらず、判断しにくい。
他の年齢別成績を見ると、息の長い活躍馬が多いダート界らしく、芝だと主力になる4歳は【1-0-1-23】勝率4%、複勝率8%と低く、5歳【2-2-3-18】勝率8%、複勝率28%、6歳【2-3-2-19】勝率7.7%、複勝率26.9%あたりが主力になる。
父クロフネとソダシの最大の相違点とは
ここで少し話をソダシに移したい。血統面では父クロフネの中京ダート1800m通算成績は【24-19-18-203】勝率9.1%、複勝率23.1%で着度数別トップ。前走が芝だったクロフネ産駒は【1-2-2-14】勝率5.3%、複勝率26.3%。前走芝だった馬の種牡馬別成績を出すと、この記録は着度数別で1位ディープインパクトから離されること14位。父クロフネ、母の父キングカメハメハは【1-0-1-10】勝率8.3%、複勝率16.7%。
さらに別角度から。クロフネ産駒、前走芝で先行した馬は【1-1-1-2】勝率20%、複勝率60%。また前走が芝2000mだと【0-0-1-2】。クロフネ産駒のコース相性はいいものの、芝からダート替わりだと信頼度は低下する。それでも芝で先行していた馬の好走確率は高い。どちらともいえないところだが、やはり初ダートでいきなりGⅠというのはハードルが高い気がしてならない。伝説級といっていい父クロフネのダート転向が引き合いに出されるだろうが、そのクロフネとて、初ダートはGⅢ武蔵野Sだった。毎年、フェブラリーSで芝から転戦してきた馬が苦戦している点も忘れないようにしたい。
逃げ、先行勢が優勢
阪神施行と傾向が変わった点として位置取り別成績がある。阪神時代は逃げ馬には要注意だったものの、先行と中団はほぼ互角だった。ところが中京では逃げ【0-0-3-5】複勝率37.5%、先行【4-3-2-17】勝率15.4%、複勝率34.6%とはっきり前優位になった。中団は【1-2-1-34】勝率2.6%、複勝率10.5%でトーンダウン。差しに回ると苦戦するようになり、展開がより大きなウエイトを占める。序盤から強気に攻める馬から目を離せない。
今年も中心はJBCクラシック組
JBCなど地方で大きなレースが多い秋シーズンはローテーションがバラバラになる。そこでここからは前走レース別に好走パターンについて考えてみたい。
前走レース別成績を出すと、着度数別の上位にJBCクラシック、マイルCS南部杯、JBCレディスクラシック、日本テレビ盃と上位に地方競馬のレースがズラリと並ぶ。中央のトライアルのみやこS、武蔵野Sはその下位に位置する点は見逃せない。
まず前走地方組について。ここは人気別成績を出す。地方交流重賞となれば、JRA勢は当然上位人気に推されるもの。5番人気以内の成績がよく、6番人気以下は【0-0-0-6】。地方のカジノフォンテンも前走JBCクラシックで5番人気とデータをクリアする一方、5着だったケイティブレイブは7番人気でこれに触れる。前走マイルCS南部杯4着インティも5番人気で、前走地方組はケイティブレイブ以外を評価したい。
一方、前走がJRAだった馬ではみやこS【0-2-2-21】複勝率16%を拾う。その人気別成績から好走条件は4番人気以内【0-2-2-13】。5番人気以下だと【0-0-0-8】なので、ここに線を引きたい。波乱決着だった今年は1着メイショウハリオ(5番人気)などを評価するなら、1番人気6着クリンチャー、4番人気7着スワーヴアラミス、3番人気12着オーヴェルニュの巻き返しを期待したい。
なお前走が武蔵野Sだった馬は【0-2-0-20】連対率9.1%と狙いにくい。やはり東京ダート1600mは中京ダート1800mと結びつきにくい。好走は15年3番人気2着ノンコノユメ、18年8番人気2着ウェスタールンドと鋭い決め手を武器にする馬たち。今年あえて狙うなら、2着エアスピネルよりスムーズさを欠いて6着だった除外対象のタガノビューティーだろうか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。
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