名実ともに「マイル王」決定戦
2021年11月21日に、今年も阪神競馬場で行われる第38回マイルCS。「スピード」「スタミナ」ともに備わった実力馬が好結果を残すことから「日本一堅いGⅠ」と呼ばれた時期もあった。近年はそこまで堅く収まっているわけではないが、それでも、ここ10年で馬単が万馬券になったのは2回だけ。馬連は9年連続で4000円を切る配当となっている。
今年も「マイル王」の称号を目指して18頭が登録。昨年の覇者グランアレグリアを筆頭に、3歳のマイル王者であるシュネルマイスター、2年続けて連対中のインディチャンプなど、「マイルチャンピオン」の名にふさわしいメンバーがそろったといえるだろう。
今回はGⅠということで、いつもより少し長めの過去15年のデータと、最近(近5年)の傾向も合わせて検証していきたい。
中心は4歳馬
まずは東西の所属別から見ていこう。美浦所属馬の83頭に対し、栗東所属馬は倍以上の176頭が出走している(海外馬は8頭)。連対数は美浦が9連対(5勝)で、栗東馬は21連対(10勝)。勝率、連対率で見ると、ほとんど差がない。ここ5年も出走割合に変化はないが、勝率でやや美浦所属馬が上回っている。
最も活躍している年齢は4歳馬。5勝は5歳馬と並んでトップの数字で、13連対は各世代の中で最も多い。連対率は24.1%で、2位の5歳馬と比べて倍近い数字となっている。これに続くのは11連対の5歳馬。5歳馬は出走頭数で最多となっている。
不振なのは3歳馬で、4歳馬と同じ出走頭数(54頭)ながら、勝ち馬は2頭だけ。2着馬は1頭もいない。7歳以上も出走した28頭中、2009年の勝ち馬カンパニー(8歳)以外は馬券にすら絡んでいない。
ひとまず4歳馬が中心と考えていいが、ここ5年で見ると少し傾向が変わる。全体で見れば不振の3歳馬だが、馬券に絡んだ4頭のうち、3頭が近5年で記録したもの。人気も4、5、7番人気と伏兵的な評価の馬ばかり。逆に2019年のダノンキングリー(2番人気)、2020年のサリオス(2番人気)は期待ほど走れていない。
3歳馬なら、穴っぽいところを狙うのがよさそう。同じくここ5年だと、6歳以上(18頭)で掲示板に載ったのは2016年のダノンシャーク(4着)と、2017年のイスラボニータ(5着)だけ。ともに当レースで連対している実力馬だが、それでも年齢の壁に阻まれているように、高齢馬は割り引いた方がいいだろう。
性別だと、牡馬、セン馬が27連対(13勝)。出走頭数からして違うので当然といえば当然か。勝率、連対率ではほぼ差はない。ただ、近年のGⅠは牝馬強しのデータをよく見かけるだけに、牡牝互角のデータはちょっと意外。特にここ5年で連対した牝馬は2020年の1着馬グランアレグリアだけ。重賞クラスの牝馬はことごとく沈んでいるので、GⅠ実績がない牝馬は目をつぶって切るのもひとつの手だろう。
このレースは前走で好走していた馬の成績がよく、連対した30頭中、21頭が前走3着以内の馬だった。前走が圏外だった馬がノーチャンスというわけではないが、なぜか結果が出ていないのが前走4着馬。出走した23頭すべてが本番で連対を外している。また前走10着以下と大敗していた55頭は、1頭も馬券に絡んでいない。
前走で条件戦やオープンを走っていた馬から連対した馬はいない。下剋上はなかなか難しいようである。重賞組が主力となるわけだが、やはり強いのは前走GⅠ組。3つのグレードの中で最も出走頭数は少ないが、連対数は最多で、当然ながら勝率や連対率もトップ。これは近年も傾向は変わっていない。
そのGⅠの中でも相性がいいのは天皇賞(秋)。27頭が出走して6連対(4勝)となっている。連対数だけならGⅡの富士S(以前はGⅢ)が8連対(3勝)で最多。富士Sに関しては、ここ5年で見ても4連対(1勝)と悪くないのだが、天皇賞(秋)は【0-1-1-5】と勝ち馬が出ていないのは気になるところ。
そのほかの細かいデータをプラス・マイナス別に分けてみる。まずプラスデータだが、連対した30頭中、28頭が前走で5番人気以上に支持されていた。
マイナスデータの方だが、前走で1秒以上負けた馬48頭はすべて着外となっている。また逃げ馬に厳しいレースでもあり、ここ15年で逃げ切ったのは2016年のミッキーアイルだけ。前走で逃げた馬が馬券に絡んだのも、2016年のミッキーアイルと、同年3着のネオリアリズムだけ。逃げ馬や前走で逃げた馬は評価を下げた方が無難だ。
モーリスと同パターン
マイルCSの傾向をまとめてみる。まず好走確率が高いデータはA「4歳馬」B「前走3着以内」C「前走GⅠ」D「前走5番人気以内」。
逆に勝率が低くなるデータはE「6歳以上」F「GⅠ実績のない牝馬」G「前走4着、または10着以下」H「前走が条件かオープン、または海外」I「前走で1秒以上負けた」J「前走で逃げた」。
今回は過去15年と近5年の両方のデータを踏まえて検証したのだが、どちらを重視するか難しいところだ。例えば、天皇賞(秋)は過去15年で見ると最も相性のいい前哨戦となるが、ここ5年だと2、3着にそれぞれ1頭いるだけだ。それはひとまず置いておいて、両方で好相性のデータを残している馬を選択していこう。
まずは年齢。ここ5年で3歳馬が巻き返しているといっても、勝率、連対率、そして連対数でトップは4歳馬。今年は4歳馬の登録がクリノプレミアム、サリオス、ダーリントンホール、そしてロータスランドの4頭。このうち、マイナスデータを抱えているのはクリノプレミアムとロータスランドで、ともにF「GⅠ実績のない牝馬」に該当。無条件で切ってもいいと上記で書いたので、この2頭は消し。
残った2頭を比べてみると、ダーリントンホールは年齢以外にプラスデータを持っていないが、サリオスはC「前走GⅠ」、D「前走5番人気以内」にも該当。4歳馬ではサリオスが最有力候補となる。前走8着からは2頭の勝ち馬が出ており、また前走安田記念から勝ったのは、サリオスと同厩舎のモーリス。今回もきっちり仕上げてくるはずだ。
人気が予想されるグランアレグリアは年齢以外のプラスデータを持ち、マイナスデータはなし。もちろん今回も有力候補となる。ちなみにこの馬、前走から距離短縮だったパターンは過去4回あって、3勝2着1回。連対率は100%となっているが、さて今回はどうなるか。
近年好調の3歳馬は5頭が登録。このうち、データ上でマイナスがないのはグレナディアガーズとシュネルマイスター。両馬ともB「前走3着以内」D「前走5番人気以内」に該当しているのだが、3歳馬は穴っぽい人気の馬が来る傾向。両馬とも上位人気が予想されるが、シュネルマイスターより手ごろな人気になりそうなグレナディアガーズの方を上に取りたい。
◎サリオス
◯グランアレグリア
▲ダーリントンホール
△グレナディアガーズ
×シュネルマイスター
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
12月が近づいてきましたが、コロナの第六波が来るかもと思うと、旅行や会食の予定を立てたり、予約が取りづらくなります。どちらも行くなら今しかないんですが、こういう時に限って仕事が忙しくて時間がないんですよね。といっても、会社がつぶれた経験をし、仕事があることのありがたさが身に染みて分かっているので、贅沢なんぞ言っていられませんね。
《関連記事》
・【マイルCS】339万馬券のち平穏決着? ハイブリッド式消去法で伏兵馬は全滅、残った4頭とは
・【マイルCS】グランアレグリア連覇を阻むのは3歳馬! シュネルマイスターよりも怖い3歳馬とは?
・【マイルCS】秋のマイル王決定戦の歴史 シンコウラブリイなど5勝、藤沢和雄師のラストイヤー