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【マイルCS】秋のマイル王決定戦の歴史 シンコウラブリイなど5勝、藤沢和雄師のラストイヤー

2021 11/16 06:00緒方きしん
マイルCS過去5年の戦績,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

波乱が続くか、平穏決着か

エリザベス女王杯は10番人気のアカイイトが勝利し、大波乱となった。馬券とは無関係だが4着に11番人気、5着に12番人気の馬が食い込んでいることからも、その波乱ぶりが伺える。芝の状態などが絡んでいるのか、単発の波乱で終わるのか……。続くマイルCSにも注目が集まる。

昨年の最優秀短距離馬であり本レース覇者であるグランアレグリアが得意のマイル戦に戻るほか、マイルCSで1着→2着と2年連続で好走しているインディチャンプ、昨年5着からの逆転を狙うサリオスなど、2020年マイルCS上位馬がズラリと揃う。

好調の3歳世代からはシュネルマイスター、グレナディアガーズといった有力馬が参戦。さらには伏兵評価のケイデンスコールやサウンドキアラ、ロータスランドなど素質十分なチャレンジャーが集まった。

過去にはオグリキャップやサッカーボーイ、アグネスデジタルやブルーメンブラットらが制した、秋のマイル王者決定戦。今回はマイルCSの歴史を振り返る。

阪神開催で、1番人気の10連敗がストップ

マイルCS過去5年の戦績,ⒸSPAIA


ここ5年において、1番人気があげた白星は昨年グランアレグリアの1勝のみ。2009年にカンパニーが勝利して以降、1番人気が10連敗を喫していたが、初の阪神開催で流れを変えた。それまでは2019年こそ1番人気ダノンプレミアムが2着に食い込んでいるものの、2016年、2017年は5着、2018年に至っては1番人気モズアスコットが13着に沈んでいた。

ただ、1番人気が苦戦しているとは言え、近年はあまり荒れていないのがこのマイルCS。昨年は1番人気→3番人気決着、それ以前も3番人気→1番人気、5番人気→3番人気、4番人気→2番人気、3番人気→2番人気で決着している。5番人気以内での決着ということで、馬連の配当は最も高かった2018年でも32.2倍という状況だ。

最後に6番人気以下の馬が連対したのは、2014年のダノンシャーク(8番人気)まで遡る。その年は人気が割れていたこともあり、8番人気・3番人気決着ではあるものの馬連配当は38.9倍に収まっている。

大荒れとなったマイルCSと言えば1995年。1着は4番人気トロットサンダー・横山典弘騎手、2着に16番人気メイショウテゾロ・上籠勝仁騎手が食い込み、馬連の配当は1043.9倍の10万馬券となった。

名伯楽に思い出の1勝をプレゼントできるか

西高東低と言われることもある昨今の競馬界において、このマイルCSでは関東馬の活躍が多く見られる。ステルヴィオやモーリス、ニッポーテイオーやエアジハードといった馬たちが、美浦所属で本レースを制している。来年2月で定年を迎える藤沢和雄調教師も過去に多くのマイルCS勝ち馬を送り出してきた。今年はその名伯楽が迎える、最後のマイルCSとなる。

1988年に開業した藤沢調教師は、1992年にシンコウラブリイで重賞初制覇を達成すると、翌年に同じくシンコウラブリイでマイルCSを制覇、GⅠ初勝利をあげた。その後、1997年・1998年にはタイキシャトルでマイルCSを連覇、さらにはゼンノエルシド・グランアレグリアでもマイルCSを制している。他にもダンスインザムードで2着、タイキトレジャーで3着など、多くの好成績を残した。

その藤沢調教師が管理するグランアレグリアが、連覇を目指して今年も出走。昨年は安田記念、スプリンターズSを連勝し挑んだ舞台だが、今年は安田記念2着、天皇賞(秋)3着と連敗で迎える。先述したタイキシャトルのほか、過去にはダイワメジャーやデュランダル、ダイタクヘリオスやニホンピロウイナーなどが連覇を成し遂げてきたマイルCS。8月には喉頭蓋を開放する手術を受けたグランアレグリアだが、ここで復活し牝馬初の連覇を達成できるだろうか。

次世代へスピードを繋ぐ、名種牡馬たち

また、マイルCSは多くの名種牡馬・名繁殖を輩出している。タイキシャトルはダートのGⅠ馬メイショウボーラー・芝のGⅠ馬ウインクリューガーを輩出し、母父としてはダービー馬ワンアンドオンリーを送り出した。サッカーボーイは菊花賞馬ナリタトップロードや名ステイヤー・ヒシミラクル、秋華賞馬ティコティコタックを輩出し、母父としてもマイネルキッツやツルマルボーイがGⅠを制している。

そして忘れてはいけないのが、2005年の覇者ハットトリック。同年の安田記念で15着、天皇賞(秋)で7着に敗れていたハットトリックだが、ここでの勝利をステップに、その次走・香港マイルでも勝利した。それ以降は勝ち星なく引退を迎えたが、同馬の"3ゴール目"はここから。海を渡り種牡馬となったハットトリックは、初年度から仏GⅠ馬ダビルシムを輩出するなど世界的な活躍を見せる種牡馬となったのである。その産駒は、アメリカやアルゼンチン、ブラジルなどのGⅠを制している。

さらにエアジハードは安田記念勝ち馬ショウワモダンを、デュランダルはオークス馬エリンコートを輩出。もちろん、今もなお一線級の活躍を続ける名種牡馬ダイワメジャーや、続々と素質馬を送り出している新興勢力・モーリスもいる。牝馬としてここを制したノースフライトも、その牝系を大きく広げた。

このレースを勝ちきれるほどのスピードは、次世代にも受け継がれて間違いなく大きな武器となっていく。今年の出走馬からもきっと、次世代にその豊富なスピードを繋げてくれる名繁殖・名種牡馬が出てきてくれるに違いない。そうした未来に想いを馳せながら、レースを見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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