「底力が求められたタフな一戦」
今年は阪神競馬場を舞台に行われるみやこS。GⅠ級は例年通りJBCクラシックに向かったが、本レースも帝王賞3着馬クリンチャー、平安S圧勝のオーヴェルニュ、3歳馬メイショウムラクモなど楽しみな顔ぶれが集結。チャンピオンズCに向けても注目の一戦となりそうだ。
※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。
【帝王賞】
月曜夜からの断続的な雨の影響で重馬場での開催。レースは船橋所属のカジノフォンテンがハナを主張して前後半1000m60.8-61.9の前傾1.1秒。中盤も大きく緩むことはなく、非常にタフな底力が求められる一戦となった。
3着馬クリンチャーは中団外目で脚をタメ、3~4角は大外からポジションアップ。テーオーケインズには大きく離され、ノンコノユメにも差されはしたが、4着以降には2馬身以上の差をつけており、GⅢクラスで地力上位であることは間違いない。
7着馬オーヴェルニュは3番手で流れに乗り、直線も見せ場を作ったが、残り200m手前で脚が上がってしまった。レコード勝ちの平安Sから中4週で8キロ増、かつ過去最高馬体重なら仕方なし。状態次第ではあるが、別路線組より格上の存在とみている。
「好調スワーヴアラミス」
【エルムS】
トップウイナーが押して先手を取り、アメリカンシードとヴェンジェンスは2番手から。前後半3F36.3-38.2のハイペースで、前有利の函館とはいえさすがに先行馬には厳しい流れとなった。
1着馬スワーヴアラミスは好位で流れに乗ったが、向正面では気合をつけられるなど怪しい手応え。それでも、3~4角からじわじわと差を詰めて、残り50m程で2着馬を差し切った。初ブリンカーの効果もあってか、最後まで集中して走れていた点に好感。小回りの消耗戦が合う。
3着馬ロードブレスは中団外目で脚をタメる形。3~4角は距離ロスを最小限に抑えつつポジションを上げていき、直線は馬群を割って3着まで追い込んだ。坂井瑠星騎手の好騎乗が目立った結果であり、少々うまくいき過ぎた感は否めない。
「メイショウムラクモが3馬身差の快勝」
【レパードS】
内枠からレプンカムイがハナを主張し、前半3F35.9の速めの流れ。ただ、新潟ダ1800mらしく中盤でペースが緩み、再度上がったのは直線に向いてから。後方一気は厳しく、ある程度のポジショニングが必要な一戦となった。
1着馬メイショウムラクモは減っていた身体を戻して前走以上のパフォーマンス。機動力とタフさに長けたダート中距離馬で、消耗戦になれば古馬相手でも十分に通用する器だ。小回り向き。
「オーヴェルニュの巻き返しに期待」
帝王賞組クリンチャー、オーヴェルニュはここでは格上の存在。特にオーヴェルニュは平安Sでの走りが圧巻だっただけに巻き返し濃厚の一頭だろう。また、昨年の平安Sでオメガパフュームとゴールドドリームの間に割って入ったヴェンジェンスも長欠明け3戦目でそろそろ変わってきても不思議ではない。3歳馬メイショウムラクモは小回り向きだが、自身でペースを作れるタイプだけに軽視はできないか。
注目馬:オーヴェルニュ、ヴェンジェンス
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。