今年で第7回
2021年10月9日に東京競馬場で行われるのが2歳のGⅢ、サウジアラビアロイヤルカップ。昨年は土砂降り、不良馬場の中をステラヴェローチェが鮮やかに差し切ったレースだが、その前の勝ち馬を見てもサリオス、グランアレグリア、ダノンプレミアムと強力なラインナップ。
紛れの小さい東京マイル、かつ暮れのGⅠまで十分に間隔をとれる4回東京の開幕週という時期もあって、ここには例年、素質馬が集結する。今年も世代トップクラスの大器と噂されるコマンドラインが出走を予定している。
普段は過去10年のデータを用いて傾向を見ていくが、サウジアラビアRCは今年でまだ第7回。元々同時期に施行されていたオープン特別で、90年代にはエアグルーヴやメジロドーベルが勝った「いちょうS」が基となるレースだ。
その「いちょうS」も8・9年前にあたる2回、1800mで施行されるなど、どうにもそのまま参考にするのは難しい。よって今回は過去6回のサウジアラビアRC、および新設重賞として行われた2014年「いちょうS」、計7レースを参考に進めていく。
早期デビュー組、5連勝!
さっそく人気別から。さすがは超一流の出世レース、ほとんど紛れていない。1番人気は【2-3-1-1】、複勝率85.7%。唯一の馬券圏外は14年いちょうSなので、改称後は全て馬券に絡んでいることになる。
続く2番人気も【1-3-1-2】、連対率57.1%と強さを見せ、勝ち馬7頭は全て4番人気以内。5~9番人気は【0-1-2-31】、10番人気以下は【0-0-0-16】。ほとんど番狂わせを許さない。
次に前走クラス別。前走新馬が【4-6-2-9】で連対率47.6%。当然と言えば当然だが、圧倒的な成績だ。ちなみに、新馬戦で0.3秒差以上つけていると【3-4-0-2】で連対率77.7%。コマンドライン、ステルナティーアは素直に信頼したい。
前走で未勝利を脱出してきた馬は【3-0-3-19】と悪くないが、1勝クラス経由だと【0-0-0-11】、OP・重賞経由は【0-1-2-18】と不振。このレースに関しては経験より素質がモノを言うようだ。
ではそのコマンドラインとステルナティーアどちらを1着に予想するか、という観点で、もう一つ強いデータを。前走からの出走間隔に注目すると、中3週以下は【1-2-0-29】で勝率3.1%と苦戦。中4~8週は同3.2%、中9週以上は【5-1-2-7】、勝率33.3%とあまりにも露骨な傾向が出た。有力な新馬が6・7月の東京、阪神に集まるようになった昨今の情勢を見事に反映している。
16~19年の勝ち馬はいずれも6月の新馬勝ち以来、昨年のステラヴェローチェは7月5日の阪神で新馬勝ちして以来のレースで、つまり早期デビューで勝ち上がった組が5連勝中だ。強いて序列をつけるなら新馬戦開幕週の6月5日に勝ったコマンドライン>8月新潟デビューのステルナティーア、ということになる。
重箱の隅をつついて穴探し
ここまで述べたように堅い決着が多い、というのは抑えた上で、あえて重箱の隅をつつくように数少ない穴馬の好走パターンを探ってみた。
たった6頭しかいない4番人気以下での馬券絡み、ちょっと苦しいがそのうちの4頭には「前走が17頭立て以上」という共通項があった。「4番人気以下」かつ「前走が17頭立て以上」は【1-1-2-7】、複勝率36.4%。このレースにおける、貴重な複回収率100%超えのデータだ。
前走で多頭数戦を使っている方がよい、というのは人気馬を含めても同じ傾向。前走が10頭立て以下だと複勝率10.0%、11~15頭なら同29.7%、16頭以上なら同38.1%。当然のことだが、多頭数の方が1着をとる難易度が高いため、勝ち方が地味でも少頭数のそれよりは確かな地力の証明となる。
ただ、今年は残念ながら「前走16頭立て」に合致する馬が不在。一応、前走が15頭立てだったステルナティーアはいる。こちらもコマンドラインほどではないにしろ、好データが揃う。
最後に2歳重賞の定番、生まれ月別成績を。ここまでセオリー通りになるのか、という感じだが1月生まれ【2-3-2-1】、複勝率87.5%がとにかく強い。もっとも2月~4月生まれはほぼ有意差なしのデータなので、「早生まれがベター」というよりは「1月生まれ」というプロフィールにこだわりたい。
今年の想定で1月生まれはステルナティーアのほかにスタニングローズがいる。新潟2歳Sでは道中最後方から、上がり32.9秒の脚で5着と重賞の相手に健闘した。奇しくもこの馬もコマンドライン、ステルナティーアと同じサンデーレーシングの所有馬。同馬主のワンツースリーまであっても全く不思議ない……というより、今年はこのワンツースリー決着が濃厚だと結論付けたい。
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