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【京成杯AH】待望の重賞初制覇! 見えたカテドラル好走の法則とは

2021 9/13 11:30勝木淳
2021年京成杯AHのレース結果,ⒸSPAIA

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カテドラルの好走パターン

サマーマイルシリーズは2勝したロータスランドが既に優勝を決め、今レースは消化試合感は否めなかったが、その分、3歳の実績馬グレナディアガーズ、バスラットレオンが参戦したことで、例年とは構図の異なるレースとなった。しかしながら結果はサマーシリーズ転戦組のカテドラル、コントラチェックが1、2着、グレナディアガーズは3着だった。京成杯AHらしい難解な結末だった。

勝ったカテドラルはどこか掴みきれないところがあるが、今年はマイル重賞2、2、12着。安田記念以外は崩れていない。春のダービー卿CT2着から中山マイルへの適性は周知の通りだが、とにかく後方から差してくるタイプでアテにならない。ここ最近は安定してきたとはいえ、人気で買うのは勇気が必要だ。だが、カテドラルは全4勝のうち、新馬を除く3勝すべてが距離短縮のとき。レースの流れが早くなると勝利する。中京記念が小倉芝1800mだったことを味方につけた。

またコントラチェックが作った前後半800m45.6-46.4の締まった流れもカテドラルに向いた。緩い流れでは距離短縮でも上記のカテドラルの好走パターンには当てはまらない。さらに絶好の馬場状態で内枠も幸いした。その分、最後の直線での捌きが問題だった。案の定、直線に入ると前が壁になり、進路はなかった。外のマイスタイルが伸びないと判断した戸崎圭太騎手が絶妙なタイミングで進路を外に切りかえた。

しかし中山の直線はたった310m。横に動いて進路を切りかえると間に合わないことが多い。それでも届いたのはカテドラルに脚力があったからこそ。法則からすると、次走は序盤が流れる1400mなら連勝もあるのではないか。ハーツクライ産駒はひとつ勝つと、それまでのイメージを脱ぎ捨てることがある。今後はもう少し買いやすくなるだろう。

根っからの中山巧者・コントラチェックの激走

2着は12番人気コントラチェック。京成杯AHは5枠が強いというデータがあるが、カラテではなく、こちらだったとは正直思いもしなかった。だが、コントラチェックは中山【4-1-0-2】、重賞3勝はすべて中山、それも1200、1600、1800mとすべて異なる距離で根っからの中山巧者だ。

若い頃は制御が難しく、オーバーペースで自滅することも多かったが、短距離に活路を見出し、コントロールしやすくなった。今回は久々のマイル戦だったが、かつてのように無理に抑えることなく、先手を主張。吹っ切れたような走りを披露した。55.5キロを背負って2着は立派だ。カテドラル以上に買いどきが難しいタイプだが、現状では中山で買っておきたい。

3着は1番人気グレナディアガーズ。NHKマイルC以来の馬は【0-0-1-7】、データ通りといえばそれまでだが、難しいローテだった。グレナディアガーズも阪神や東京といった直線の長いコースの経験しかなく、はじめての中山で手こずった印象。1番人気馬だからこそ、早めに外に出して進路を作った分、カテドラルやコントラチェックにコーナーでリードを奪われてしまった。それでも急坂もクリア、最後まで差を詰めてきており、やはりマイラーとしての資質は十分ある。

同じ3歳でも中山実績があるバスラットレオンは2番人気15着と大敗。春に中山の重賞で好走した3歳馬は、比較的好走するというデータを裏切った形に。こちらはスタート直後につまづき、後手を踏んでしまった。勝ったNZTは逃げて圧勝したようにスピードが持ち味。今後を考え、控える競馬を予定していたようだが、さすがに好位ではなく、後方では勝手が違いすぎた。今回はノーカウントでもよさそうだ。

人気を背負った組ではカラテが3番人気で5着。中山マイルは冬に連勝した舞台でもあり、絶好の条件だったが、最後は伸びきれなかった。関屋記念で中団から差して好走したことで、今回はやや構えすぎた。舞台は中山、以前のような積極的な競馬が理想だろう。菅原明良騎手、ちょっと馬を信じすぎたかもしれない。挑戦者としての競馬で復活を期したい。

決着時計は1.32.0。昨年は馬場整備をこれまでと変更したことで、例年以上に柔らかい馬場になり、傷みが進んでしまった。それを踏まえ、今年はさらに整備時期を変え、これまでの秋開催の中山に近い馬場になった。野芝のみで構成されるこの時期の中山の芝は、とにかく高速決着になりやすく、インを突くか、好位にいないと難しい。雨の影響を受けると、また変化するだろうが、1週目の結果を復習して、馬場傾向を早めに捉え、3日間開催に挑みたい。


2021年京成杯AHのレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。


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