コース紹介
今週は新潟芝1000mを舞台に、サマースプリントシリーズ第3戦・GⅢアイビスSDが行われる。現役屈指の千直マイスターとして同レース2勝目を狙うライオンボス、GⅡ京王杯2歳S勝ちなどの実績を持つ若武者モントライゼ、韋駄天Sを鮮やかに差し切って最速争いに名乗りを上げたタマモメイトウなど、電撃の5ハロン戦にふさわしいメンバーが揃った。
当該コースが舞台の重賞はアイビスSDのみ。今週は夏の風物詩的存在であるこのコースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは特記がない限り2016年7月30日〜2021年5月23日)。
まずはコース紹介。4コーナー奥のポケット地点をスタートし、最初の1ハロンはゆるやかに上る。そこからまた1ハロン程度下った後、細かな起伏を通過し、残り2ハロン弱は平坦なターフでの末脚比べとなる。
日本の夏、新潟千直桃帽の夏
<新潟芝1000m・過去5年の枠別成績>
1枠【5-9-6-211】勝率2.2%/連対率6.1%/複勝率8.7%
2枠【5-7-7-217】勝率2.1%/連対率5.1%/複勝率8.1%
3枠【11-9-10-211】勝率4.6%/連対率8.3%/複勝率12.4%
4枠【9-16-10-209】勝率3.7%/連対率10.2%/複勝率14.3%
5枠【17-6-17-209】勝率6.8%/連対率9.2%/複勝率16.1%
6枠【12-18-17-202】勝率4.8%/連対率12.0%/複勝率18.9%
7枠【26-32-27-225】勝率8.4%/連対率18.7%/複勝率27.4%
8枠【40-29-30-218】勝率12.6%/連対率21.8%/複勝率31.2%
枠別成績は極めて単純、外であればあるほど好走率が高い。8枠は唯一勝率1割超えを果たしている上、単勝回収率102%と全馬買うだけでプラス収支になる。このうち凡走が目立つのは500m以上の短縮ローテで臨んだ馬【0-1-2-28】ぐらいで、一定のスピード能力を証明している馬ならケチのつけようがない。
アイビスSDの過去10年を見ても8枠は【4-2-1-17】と頭抜けており、迷ったら桃帽を買うレース。好走例がないのは1枠と3枠で(ともに【0-0-0-17】)、点数を絞りたいなら消し。特に1枠は掲示板に入った例すらなく、経済コースという利点なしに荒れた馬場を走るとてつもないハンデがうかがえる。
<新潟芝1000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【39-36-10-107】勝率20.3%/連対率39.1%/複勝率44.3%
先行【45-37-43-265】勝率11.5%/連対率21.0%/複勝率32.1%
差し【37-41-51-726】勝率4.3%/連対率9.1%/複勝率15.1%
追込【4-12-20-600】勝率0.6%/連対率2.5%/複勝率5.7%
極限のスピードコースらしく前が絶対的な有利。過去5年でこのコースを追い込んで勝ったのはラインミーティア(17年アイビスSD含む2勝)とナランフレグ、そして先日の韋駄天Sを勝ったタマモメイトウの3頭しかいない。ただし、韋駄天Sは稍重馬場を利した面があり、きれいな芝を走った際に同じようなレース運びができるかは疑問の余地が残る。
アイビスサマーダッシュでは5年連続で逃げた馬が連対しているが、差し・追込も4勝とほぼ互角。ただし追込は【1-0-1-44】とほぼ全滅で、ラインミーティアと昨年3着ビリーバーのみが馬券圏内。追い込み脚質の馬が人気を集めるようならバッサリ切ってしまった方が期待値は高い。
渋好みのロードアルティマ
<新潟芝1000m・過去5年の種牡馬別成績>
ダイワメジャー【6-9-14-80】勝率5.5%/連対率13.8%/複勝率26.6%
ロードアルティマ【2-4-2-21】勝率6.9%/連対率20.7%/複勝率27.6%
アドマイヤムーン【2-5-5-30】勝率4.8%/連対率16.7%/複勝率28.6%
ロードカナロア【9-7-5-32】勝率17.0%/連対率30.2%/複勝率39.6%
アイビスSDに産駒が出走する種牡馬別成績では、快速馬を多数送り出すダイワメジャーの好成績が目につく。ただし、前走4角3番手以内が【4-4-10-25】複勝率41.9%であるのに対し、10番手以下だった馬は【1-1-0-20】。ポジションを取って競馬ができることが好走条件で、人気必至のモントライゼはむしろ危ない。
対照的に台頭するのは何とも渋いロードアルティマ。同コース【1-3-1-2】のヒロイックアゲンだけでなく、未勝利戦で17番人気2着(16年10月16日・キョッコウ)などの激走もあり、複勝回収率は300%を超えている。ヒロイックアゲンはすっかり姉御的風格がついてきた7歳馬だが、今年もオーシャンS14番人気4着などまだまだやれる。
その他ではアドマイヤムーン、今年のアイビスSDに出走はないもののロードカナロアを押さえておけば問題ない。特に後者は4割近い複勝率、単勝回収率200%超え、昨年のアイビスSDをジョーカナチャンが勝利するなど上級条件でも活躍しており、日本競馬史上最速クラスの能力を産駒に伝えている。
<新潟芝1000m・過去10年の騎手別成績>
鮫島克駿【5-7-3-26】勝率12.2%/連対率29.3%/複勝率36.6%
津村明秀【7-6-6-48】勝率10.4%/連対率19.4%/複勝率28.4%
杉原誠人【4-5-5-52】勝率6.1%/連対率13.6%/複勝率21.2%
千直にはかつて西田雄一郎という生き字引がいた。アイビスSDをケイティラブで逃げ切り、ラインミーティアで差し切ったのはお見事の一言に尽きる。昨年末をもって騎手を引退、トレーナーとしての新たなキャリアをスタートさせている。
そんな西田騎手の後継になれそうなのが鮫島克駿騎手。今年早くも重賞を2勝するなど、めきめきと頭角を現しているこのジョッキーは3割近い連対率をマークしており、中でも単勝回収率368%と人気薄の好騎乗ぶりが目立つ。2年前は前日の落馬負傷で乗り替わり、昨年はジョーカナチャンを捉えられず逃したアイビスSDのタイトルを、今年こそ相棒ライオンボスと掴んでほしい。
千直で直近6走連続馬券圏内とゾーンに入っているのが津村明秀騎手。前走から継続騎乗となる場合は【5-3-0-13】と数字を一段上げ、単勝回収率は400%を超えている。韋駄天Sを鮮やかに勝ったタマモメイトウは前走から3kgの斤量増など課題が多いが、手綱さばきでどこまで克服できるか注目。ほか、ビリーバーに騎乗する杉原誠人騎手も単回収率106%の千直巧者といえそうだ。
上位人気想定では川田将雅騎手(モントライゼ)が【0-0-1-0】、松山弘平騎手(ロードエース)が【0-0-0-2】とほとんど騎乗経験がない。普段主場で乗っているジョッキーがあまり勝ち切れないレースでもあり、過度の信頼は禁物だ。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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