ナムラリコリスが大逆転
函館2歳Sは世代最初のJRA重賞。6月の新馬戦に有力馬が集まるようになって数年経つが、このレースの主力は相変わらず函館(今年は札幌)でデビューした馬。クラシックを見据えてレース間隔をとるために早期デビューする勢力とは違って、短距離路線でどんどん賞金を稼ぐ、いわゆる「速攻系」が中心をなす。
この時期までに使えるレースは1回か、せいぜい2回程度。2歳7月時点での能力とレースセンスを競う一戦。生まれ持った気性と並んで、ここまでのレースで積んだ「経験」の質も問われる。
2019年生まれ世代最初のJRA重賞ウィナーに輝いたのは、これが3戦目のナムラリコリスだった。新馬戦では今回1番人気に推されたポメランチェがレコードで逃げ切る中で4馬身離れた2着。2戦目の未勝利戦を勝ちあがっての出走だった。
ナムラリコリスの過去のレース映像を見ると、道中は促していないと下がってしまいそうな渋い手応え。一般論として気性の勝った馬が新馬戦から駆けるといわれるのに対し、こういうタイプは叩いてレースを理解してからよくなることが多い。
これまで2戦とも、前に馬を見ながら追走し、4角~直線にかけては騎手の指示を聞いて自分の脚を使う。そんな「レースの作法」を分かったのか、ナムラリコリスは3番手を追走、少しずつ加速して抜け出す王道の競馬で後続を1.1/4馬身離して見せた。引っかかる面がなく距離の融通は利きそうで、暮れの阪神JFでも上位人気に名を連ねる可能性はある。
対照的に、新馬戦で4馬身後ろに置き去った相手から0.7秒差の7着に敗れたのがポメランチェ。昨年までの過去10年、函館2歳Sで「前走が4角2・3番手」だった馬は連対率17.9%、単/複回収率111%/111%に対し、「前走逃げた馬」は同10.7%、単/複回収率31%/75%。このうちキャリア1戦の馬、すなわち新馬戦を逃げて即ここ、という馬はさらに落ちて連対率8.8%。
もちろん、2着カイカノキセキのように結果を出す馬もいないではないが、少なくともポメランチェに関してはそうではなかった。前後半のラップは33.7-36.2。馬場差を考えれば新馬戦の33.6-34.3とは段違いに厳しい逃げだった。重賞の相手にプレッシャーをかけられての逃げは容易ではない。あくまで、いちデータ派の所見だが、こと重賞を目指す馬に関して新馬戦を逃げることの弊害は大きいように感じられてならない。昨年1番人気13着のモンファボリも同じような臨戦過程だった。