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【プロキオンS】舞台は小倉ダート1700m! カギを握る距離短縮組の取捨とは?

2021 7/4 17:02勝木淳
プロキオンSインフォグラフィック1ⒸSPAIA
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舞台は小倉ダート1700m

プロキオンは冬の大三角を形づくるこいぬ座の恒星。その名称は夏に不似合いな気もしなくもないが、中京との結びつきはCBC賞やトヨタ賞中京記念に比べれば、はるかに薄い。よって小倉替わりをうっかり忘れる危険性は少ない。

だが、施行条件は大きく変わり、中京ダート1400mから小倉ダート1700m、ここには違和感しかない。よってプロキオンSの過去のデータは使用しにくく、ここでは夏の小倉開催、ダート1700m、古馬3勝クラス以上29レースのデータを用いて、小倉ダート1700mの好走パターンについて考えてみる。

まず小倉ダート1700mという舞台についてざっと述べる。北海道や福島と同じローカル競馬場に多い周回コースを1周ちょっとする舞台。中央場に多いダート1800mの小回り版といった感じか。だが、レイアウトは似ているものの、中央のダート1800mと比べると、道中でペースが緩む、息を入れるような場面が少なく、どちらかというとスピード優先。中央のダート1800mで強い馬が狙いすましてローカルのダート1700mに出走すると、前半で置かれてしまって挽回が苦しくなるといった場面も多い。

小倉のダート1700mはスタート後から1コーナーを緩やかにのぼり、1・2コーナーの中ほどを頂点にゴールに向けてじわじわとくだる。序盤の先行争いが激しくなると、最後に脚があがるが、序盤で隊列がすんなり決まると、楽に走れるくだりを利用した先行馬は簡単には止まらない。外枠に逃げ馬が入るなど、序盤が落ち着かない雰囲気を察知したときは注意だが、基本は先行有利の舞台であると考えたい。


人気順では決まらない

こういった舞台であることを頭に入れつつ、具体的に夏の小倉ダート1700m古馬3勝クラス以上のレースについてデータをみよう。

過去10年人気別成績ⒸSPAIA


人気の傾向をみると、1番人気は【6-4-6-13】勝率20.7%、複勝率55.2%。29レースで6勝は微妙なラインではありながらも、複勝圏内には半数以上が入っており、まずまずといったところか。目立つのは2番人気【10-7-3-9】勝率34.5%、複勝率69%。反面、3番人気が【2-2-5-20】勝率6.9%、複勝率31%と振るわない。上位人気堅実というより、2番人気が強いといった感じか。4~8番人気はざっくり互角で、9番人気以下は不振。2番人気から中穴へといった馬券が効率的か。


過去10年年齢別成績ⒸSPAIA


3勝クラス以上の高額条件でデータをとったため、3歳は【0-0-2-7】と数が少ない。「夏は3歳馬」という格言は下級条件でのものだ。主力は4歳【11-10-7-42】勝率15.7%、複勝率40%と5歳【12-13-13-107】勝率8.3%、複勝率26.2%のふた世代。とかく勝ち切る傾向は4歳といえる。プロキオンS出走予定馬ではサンライズホープ、マリオマッハー、メイショウカズサらが当てはまる。またダートでもスピード重視のコースとあって、高齢馬は苦戦傾向で、7歳以上は【0-3-1-55】と振るわない。


過去10年年齢別成績ⒸSPAIA


プロキオンSに必ずしも当てはまるものではないが、小倉ダート1700mの血統傾向をつかむために種牡馬別成績を出す。ゴールドアリュール、キングカメハメハ、ネオユニヴァース、クロフネ、オルフェーヴルと上位はサンデー系とスピード優先のダート競馬に強い馬が並ぶ。オルフェーヴルは出走数こそ少ないが、【2-3-0-2】勝率28.6%、複勝率71.4%と優秀。アルドーレやマルシュロレーヌなど夏の小倉でオープン入りした馬もいる。種牡馬データは実績上位のウェスタールンド(父ネオユニヴァース)にとって追い風になる。


狙いはダノンスプレンダー

コース分析で中央場のダート1800m好走馬が苦戦すると述べたが、これについて前走距離からどういった傾向があるかみてみよう。


過去10年前走距離別成績ⒸSPAIA


前走が1700m未満だと【3-6-2-73】と苦戦傾向にあり、1700mだった馬【10-10-8-90】勝率8.5%、複勝率23.7%と1700m超【16-13-19-137】勝率8.6%、複勝率25.9%は互角。おや、1700m超から来る馬は悪くないじゃないか。こういったイメージによる決めつけはもっとも怖いもの。では前走1700m超だった馬についてちょっと掘り下げてみよう。


過去10年前走距離別成績ⒸSPAIA


じつはコース分析で述べた1800mで好走して狙いすましてローカル参戦というパターンは、前走が1700m超のレースで勝ってきた馬を指す。前走1700m超の着順別成績では、前走1着が【1-3-1-10】勝率6.7%、複勝率33.3%と好走するも勝ちきれない。3勝クラス以上のデータなので(つまりオープンからオープンも入る)、必ずしも昇級馬ではない点も注意。昇級でペースに戸惑ったわけではない。

逆に1700m超で勝ちきれなかった馬、前走2着【5-1-2-6】勝率35.7%、複勝率57.1%、前走3着【3-1-2-9】勝率20%、複勝率40%ぐらいが好走ゾーン。4着【3-2-5-7】あたりまでは警戒したい。つまりサンライズホープは連下にとどめ、ダノンスプレンダーあたりを上位に評価したい。また東京ダート1600mのアハルテケS経由の馬が多数いるが、距離延長は苦戦傾向にあり、評価を下げるべきだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


プロキオンSインフォグラフィック2ⒸSPAIA



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