穴で狙うなら差し馬
6月27日(日)に阪神競馬場で行われる宝塚記念(GⅠ・芝2200m)。上半期の中央競馬を締め括る春のグランプリに挑むのはGⅠ馬3頭を含む13頭。昨年春秋グランプリ制覇を果たしたクロノジェネシスを中心に、無敗のまま大阪杯を制したレイパパレ、言わずと知れたシルバーコレクター・カレンブーケドールなど、頭数は少ないながらもグランプリにふさわしいメンバーが集まった。
宝塚記念といえば毎年一波乱あるレース。昨年も12番人気のモズベッロが3着となって3連単配当183,870円の高配当を演出したように下位人気馬の好走が目立つ。グランプリレースというだけあって層が厚く、人気通りには決まらないということだろう。そんな難解な一戦でデータを基に推奨できるのはどの馬なのか。今週も検討していこう。

まず過去10年の宝塚記念のレース傾向を見よう。三冠馬オルフェーヴルが勝利した12年を除き勝ち馬は4角6番手以内。道中は中団より後ろに構えていた16年勝ち馬マリアライトや20年勝ち馬クロノジェネシスも、3~4コーナーの下り坂を利用して位置取りを押し上げており、勝ち切るには直線を向く以前に先頭集団に加わっている必要がある。
ただ2・3着馬については傾向が一変。直線が短い内回りコースながら差し・追い込み馬の健闘が目を引く。2・3着馬全20頭のうち11頭は4角7番手以下で、なんとそのうち5頭は二桁人気の穴馬。コース形態からイメージされる「前有利」は相手探しには使えず、むしろ過小評価されている差し馬は積極的に買い目に加えるべきだ。
馬場が渋れば内枠各馬は大幅に割引

〈過去5年の阪神芝2200m戦(良馬場以外)・枠別成績〉
1枠【0-0-3-16】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率15.8%/複回収率98%
2枠【4-2-1-12】勝率21.1%/連対率31.6%/複勝率36.8%/複回収率171%
3枠【0-0-0-19】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%/複回収率0%
4枠【1-0-0-19】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率5.0%/複回収率7%
5枠【2-2-3-15】勝率9.1%/連対率18.2%/複勝率31.8%/複回収率63%
6枠【0-4-2-18】勝率0.0%/連対率16.7%/複勝率25.0%/複回収率88%
7枠【2-3-3-21】勝率6.9%/連対率17.2%/複勝率27.6%/複回収率100%
8枠【4-2-1-24】勝率12.9%/連対率19.4%/複勝率22.6%/複回収率57%
執筆時点では宝塚記念当日の天気予報は雨で、目下北上中の台風の存在を思うと良馬場での施行はまず叶わないだろう。そこで過去5年の阪神芝2200mで行われた良馬場以外の13レースにおける枠順別成績を調べた。表を一見すれば分かるように露骨に外枠が有利。宝塚記念では大外8枠が【7-0-2-13】と異常な好成績であることに照らしても、外枠に収まった馬の評価は上げたい。
対して、2枠を除いて内枠成績は壊滅的。1~4枠に収まった5番人気以内の馬の成績は【2-1-1-21】と人気馬でも好走は難しく、有意に不利といえる。また突出した良績を誇る2枠だが、今回に限ってはこちらも強調材料とならない。というのも、外枠からは牡牝関係なく好走馬が出ているのに対し、2枠からの好走馬はほとんどが牡馬。牝馬は【1-0-0-5】とこれだけ見れば他の内枠と大差ない。データ的にはレイパパレを推奨するどころか、軽視すべきということになる。
牝馬黄金時代は終わらない
◎クロノジェネシス
アーモンドアイが引退した今、グランアレグリアと並んで牝馬黄金時代を牽引する存在。昨年の宝塚記念・有馬記念ではともに道中からロングスパートを仕掛けて捲っており、今回も4角までには前目の位置を確保できるはず。しかも、1秒差をつけて快勝した昨年より明らかにメンバーは手薄だ。
確かに過去10年でドバイシーマクラシックから参戦した馬は【0-1-2-6】と勝利例がないが、今年はジェンティルドンナにとってのゴールドシップ、ドゥラメンテにとってのマリアライトに当たる強敵は見当たらない。道悪は大の得意で雨も歓迎、と負ける要素がいよいよなく、まさしく本命にふさわしい。
◯モズベッロ
前走大阪杯でコントレイルやグランアレグリアに先着したように、道悪かつミドル~ハイペースという条件の下ではGⅠ馬にも劣らないパフォーマンスをみせる。馬場状態も先週日曜午後の芝レースをみるに内が有利ということでは決してなく、開催4日目といえどもやはり相手選びにおいては、前残り的な偏りはないとみる。昨年ほどの人気では買えないことが惜しいが、好走に必要な条件は揃っており上位争いに絡むこと必至だ。
▲カレンブーケドール
重賞未勝利ながらGⅠ成績は【0-3-1-2】と相手なりに走る偉い馬。前走も牝馬には苦しい条件ながら3着に残しており、勝ち星こそないが地力は間違いなくGⅠ級。ただ過去10年で天皇賞(春)3着以内からの臨戦馬は【0-0-2-14】と不振傾向にあり、3200mで好勝負を見せた反動はさすがに大きいよう。特に馬体重減or増減なしなら【0-0-0-9】で、該当馬は迷わず消し。加えてこの馬はデビューから体を増やし続けていることを考えると、当日目に見える形で疲れがあるようなら割り引きたい。
△キセキ
一昨年、昨年ともに2着と宝塚記念は相性の良いレースで、特に昨年は捲っていくクロノジェネシスに付いていっての2着と好内容。前走のQE2世Cでも出遅れているように気性に不安があるが、今回は最後入れの大外枠を引いており、単にデータ的に有利という以上に枠で評価を上げたい。
以下、3着候補として道悪適性のあるミスマンマミーアまで印を回す。前走目黒記念はGⅡとは思えない超スローペースで、後ろから運ぶこの馬は勝負にならなかった。前走大敗や相手関係の強化から人気もそこそこであろうし、「高配当演出差し馬」として激走を期待したい。
そしてトリガミを嫌いレイパパレは消しとした。大阪杯デーは同コースの9R明石特別(2勝クラス)も逃げ馬がぶっちぎっているように、逃げ有利の特殊な馬場に大きく助けられており、0秒7差のVも額面通りには評価できない。前走はノーマークで楽に運んだが、今回はさすがにそうはいかないはず。同型のユニコーンライオンもおり、苦しい競馬になると案外ということは十分に考えられる。距離不安もあることから、少なくとも2番人気で買いたい馬ではない。
▽宝塚記念予想▽
◎クロノジェネシス
◯モズベッロ
▲カレンブーケドール
△キセキ
×ミスマンマミーア
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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