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【宝塚記念】上位人気馬軒並み不安、武豊アリストテレス復活へ 東大HCが阪神芝2200mを徹底検証

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コース紹介

今週は阪神芝2200mを舞台に、春のGⅠシリーズを締めくくる宝塚記念が行われる。春秋グランプリ3連覇がかかるクロノジェネシス、大阪杯を圧勝した超新星レイパパレ、堅実派カレンブーケドールの牝馬3強に、天皇賞(春)4着から復権を狙うアリストテレス、道悪巧者のモズベッロ、宝塚記念2年連続2着の実績を持つキセキなどが挑む。

まずはコース紹介。阪神芝2200mは正面のポケット地点をスタートし、高低差2m近い急な上り坂を通過して1コーナーへ。そこから3コーナーにかかるまでの長い平坦な道のりを進むと、最後の直線半ばまではだらだらと下りが続き、ゴールまで200mの地点で2度目の急坂を駆け上がる。

当該コースの重賞はGⅠ宝塚記念のみ。今年度は京都競馬場改修の影響を受け、例年は京都芝2200mで施行されるエリザベス女王杯も行われる(使用するデータは2011年6月25日〜2021年5月1日)。

万難を排して桃帽を買え

阪神芝2200m・過去10年の枠別成績ⒸSPAIA


<阪神芝2200m・過去10年の枠別成績>
1枠【10-12-15-101】勝率7.2%/連対率15.9%/複勝率26.8%
2枠【18-12-13-102】勝率12.4%/連対率20.7%/複勝率29.7%
3枠【12-13-15-111】勝率7.9%/連対率16.6%/複勝率26.5%
4枠【14-13-9-122】勝率8.9%/連対率17.1%/複勝率22.8%
5枠【13-19-8-130】勝率7.6%/連対率18.8%/複勝率23.5%
6枠【11-15-20-136】勝率6.0%/連対率14.3%/複勝率25.3%
7枠【15-11-19-166】勝率7.1%/連対率12.3%/複勝率21.3%
8枠【16-14-10-177】勝率7.4%/連対率13.8%/複勝率18.4%

コーナーがタイトな内回りコースらしく、基本的に内枠有利。特に2枠は単勝回収率103%と大台超えを果たしている。さらに1・2枠を引いた馬のうち、前走逃げ・先行だった馬は【17-9-11-48】複勝率43.5%。単勝回収率191%・複勝回収率110%と馬券的信頼度が高い。経済コースかつ前目のポジションを取れる馬を黙って買えば間違いないようだ(宝塚記念でも【1-1-2-2】複勝率66.7%。11年6番人気1着アーネストリー、18年12番人気3着ノーブルマーズなど人気薄の激走もあった)。

しかし宝塚記念だけは様相が全く違う。真逆の8枠成績が過去10年で【7-0-2-13】単回288%とずば抜けて良い。近年はさらにその傾向が顕著で、2013年以降の7レースにおいては2018年を除いて全て8枠が勝っている。

変則日程の今年は梅雨で馬場が荒れ切っていない開催2週目での施行ということもあり、傾向が変化する可能性もあるものの、やはり桃帽は無条件で買っておきたい。ちなみに過去10年の8枠からの好走馬は、全て(1)8番人気以内、(2)4・5歳、(3)前走4角3番手以下、の3条件を満たしており、この条件に合致する馬は【7-0-2-2】だった。

阪神芝2200m・過去10年の脚質別成績ⒸSPAIA


<阪神芝2200m・過去10年の脚質別成績>
逃げ【15-14-10-73】勝率13.4%/連対率25.9%/複勝率34.8%
先行【50-44-41-243】勝率13.2%/連対率24.9%/複勝率35.7%
差し【34-32-37-359】勝率7.4%/連対率14.3%/複勝率22.3%
追込【7-15-19-359】勝率1.8%/連対率5.5%/複勝率10.3%

コース傾向としてはセオリー通り、逃げ・先行有利は揺るがない。前走4角4番手以内の馬を全て買うだけでも単勝回収率111%・複勝回収率99%とプラス域が狙える。迷ったら前につけられる馬を狙いたい。

しかしここでも宝塚記念は特異で、例外的に差しが決まっている。スイープトウショウが勝った2005年以来、上がり最速をマークした馬は【10-7-0-0】と全頭が連対している。上級クラスらしい淀みないペースと加速しやすい下り坂のコース形態などがあいまってこのような極端な数値が出ているのだろう。

ただし連対馬17頭のうち、前走も上がり最速だったのは2006年のディープインパクトと2011年のブエナビスタだけ(前走海外組除く)。それどころか、前走国内で上がり最速だった馬は2007年以降【0-1-1-25】と大苦戦している。該当馬はレイパパレとモズベッロ。ともに消して妙味を高めたい。

レイパパレよりカレンブーケドール

阪神芝2200m・過去10年の種牡馬別成績ⒸSPAIA


<阪神芝2200m・過去10年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【20-16-10-108】勝率13.0%/連対率23.4%/複勝率29.9%
キングカメハメハ【13-10-12-71】勝率12.3%/連対率21.7%/複勝率33.0%
キズナ【4-1-1-11】勝率23.5%/連対率29.4%/複勝率35.3%
ルーラーシップ【3-5-6-27】勝率7.3%/連対率19.5%/複勝率34.1%

ツートップのキングカメハメハ・ディープインパクトはいずれも甲乙つけがたいが、全体の回収率では単勝112%・複勝88%のキンカメに軍配が上がる。

ただ宝塚記念に限定するとディープの好走率が高い。宝塚記念で狙いたいのは「キレないディープ」つまりディープ産駒らしからぬ馬。前走国内で上がり3位以内の産駒が【0-0-0-12】と全滅しており、長くいい脚を使うタイプが浮上する。今年の該当馬ならレイパパレよりカレンブーケドールだ。

宝塚記念に出走馬はいないものの、キズナ産駒は父ディープを超える数字を記録。今後出走数が増えるタイミングで馬券を仕留めたい。ルーラーシップも複勝率が優秀で、目下2年連続2着のキセキも当然見限れない。なお、バゴ産駒(クロノジェネシス)は【2-0-2-7】だった。

阪神芝2200m・過去10年の騎手別成績ⒸSPAIA


<阪神芝2200m・過去10年の騎手別成績>
M.デムーロ【5-3-9-14】勝率16.1%/連対率25.8%/複勝率54.8%
川田将雅【16-7-7-33】勝率25.4%/連対率36.5%/複勝率47.6%
武豊【12-10-4-29】勝率21.8%/連対率40.0%/複勝率47.3%
ルメール【4-2-1-17】勝率16.7%/連対率25.0%/複勝率29.2%

騎手別ではM.デムーロ騎手が最も安定している。近年の結果には目を見張るものがあり、2017年以降では【3-1-5-3】複勝率75.0%だ。宝塚記念当日は東京での騎乗とあって、残念ながら頼りにはできないが、このコースで最も信頼できる騎手であることは間違いない。

レイパパレに騎乗する川田将雅騎手はさすがトップジョッキーといった成績だが、距離延長時はやや数字を落としており、前走同騎手組に限ると【2-2-0-7】。単複回収率ともに50%以下と買いにくく、やはり評価は難しい。

宝塚記念騎乗組で最も買いたいのが武豊騎手。上位人気馬の騎乗が大半ながら単複回収率100%超えは相性の良さを裏付けるもので、昨年の宝塚記念でもキセキを6番人気2着に導いている。今年の騎乗馬アリストテレスも天皇賞(春)のリベンジという同様のローテーションを踏んでおり、2年連続の好走も十分ありうる。

頭に叩き込んでおきたいのが、阪神芝2200mをルメール騎手がかなり苦手にしている点。複勝率3割に届かないコースは他にあまり例がなく、宝塚記念に限定すれば6度騎乗し一度も3着以内がない。5レースが2番人気以内だったことを考えれば驚愕の結果で、今年もクロノジェネシスで安泰というわけにはいかない。

ユニコーンライオン激走再び?

阪神芝2200m・過去10年の調教師別成績ⒸSPAIA


<阪神芝2200m・過去10年の調教師別成績>
矢作芳人【6-2-5-16】勝率20.7%/連対率27.6%/複勝率44.8%
音無秀孝【4-4-4-26】勝率10.5%/連対率21.1%/複勝率31.6%
斉藤崇史【1-1-1-8】勝率9.1%/連対率18.2%/複勝率27.3%

調教師別成績では、リスグラシューでの宝塚記念圧勝が印象深い矢作芳人調教師をピックアップ。4割超えの複勝率がまず強調材料だが、阪神での施行だったエリザベス女王杯でもラヴズオンリーユーが3着を確保したように、GⅠでの信頼度が高い厩舎だ。鳴尾記念を制した勢いそのままに、ユニコーンライオンの激走があるかもしれない。

音無秀孝調教師は単勝回収率257%が素晴らしい。ミッキーロケットで宝塚記念を制した際も7番人気で、大本命よりも人気薄での大駆けが特徴的だ。牝馬3強に人気で劣りそうなアリストテレスも、人気落ちのここが狙い目か。

斉藤崇史調教師は出走機会が少ないものの、上記2人に比べると好走率が低い。高野友和調教師は【2-1-2-8】だが、2勝クラス以上の勝利がない点が気になる。

阪神芝2200mコースデータインフォグラフィックⒸSPAIA



《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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