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【日本ダービー】「栗東騎手」「ノーザンF生産」など好走データは8つ サトノレイナス勝算あり

2021 5/26 11:00門田光生
日本ダービーの騎手所属別成績(過去10年)インフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

今年も牝馬

2021年5月30日、東京競馬場で第88回日本ダービーが行われる。今年は桜花賞2着馬サトノレイナスがダービーへ参戦。牝馬のダービーといえばウオッカの名前が思い浮かぶが、ここ10年で出走した牝馬は、2014年のレッドリヴェール(12着)だけ。サンプルが少なく、データ予想をする上でこの馬の扱い方が重要なポイントとなりそう。

先週行われたオークスは1番人気馬が着外に沈んでしまったが、果たしてダービーは人気通りに収まるのかどうか。今回も過去10年のデータと照らし合わせて、好走馬、そして勝ち馬を探していきたい。

ダービー出走馬の騎乗騎手ⒸSPAIA
ダービー出走馬の所属ⒸSPAIA


競馬に携わる者なら、誰もが憧れる「ダービー〇〇」の称号。その昔「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になることより難しい」と英国首相が言ったとか、言ってないとか。それはともかく、馬の能力や陣営の努力はもちろん、「運」も味方して初めて、その称号を手にすることができるのだろう。

ここ10年で「ダービージョッキー」に輝いたのは美浦所属1人に対し、栗東はのべ9人。「ダービートレーナー」は美浦所属2人、栗東所属はのべ8人。西高東低の傾向となっている。

ダービー出走馬の前走ⒸSPAIA
ダービー出走馬の前走着順、前走人気、着差ⒸSPAIA


オークスは桜花賞と忘れな草賞組が好成績を残していた。ダービーはというと、やはり一冠目の皐月賞組が強く、連対馬20頭のうち15頭が該当。続いて京都新聞杯組の3連対。近年のダービー馬はこの2レースからしか出現していない。

なかなか勝ち馬が出ないことで有名になってしまった青葉賞組は【0-2-3-19】。連対なら可能性はあるので、相手候補には考えておきたい。なお、連対馬はこの3レースからしか出ていない。

続いて前走結果を調べてみると、6着以下に負けた馬、前走で6番人気以下の馬、そして前走でコンマ6秒以上負けていた馬の連対率はいずれも3%を切っている。上記の条件に該当しながらも、ダービーで好走したのはどのような馬だったのか。

まず前走6着以下だが、2017年の2着馬スワーヴリチャード(皐月賞6着)と、2018年の勝ち馬ワグネリアン(皐月賞7着)の2頭。スワーヴリチャードは2番人気、ワグネリアンは1番人気と、ともに皐月賞で高い評価を受けていた馬だった。

前走6番人気以下は2011年の2着馬ウインバリアシオン(青葉賞6番人気→1着)と2018年の2着馬エポカドーロ(皐月賞7番人気→1着)。ともに前走を勝っているところがポイントか。

そして前走でコンマ6秒以上負けた馬は、上記にも出てきた2018年の勝ち馬ワグネリアン(コンマ8秒)。ここに該当しても、前走(特に皐月賞)で人気した馬、そして前走勝ちの馬は評価を落としすぎないように注意したい。

ダービー出走馬の生産者ⒸSPAIA


ダービーブリーダーと言うのか、生産者部門ではノーザンファームが4勝、2着6回と堂々のトップ。しかし、それ以上に目立つのがノースヒルズ生産馬。【3-0-0-1】は驚異的な確率。ただ、今年は出走馬がいなかった。逆に不振が目立つのは社台ファーム。ここ10年で【0-0-1-21】と連対馬を出していない

セール出身馬ⒸSPAIA


セレクトセールをはじめ、市場取引馬の成績はどうなのだろうか。まずセール出身馬は63頭が出走。そのうち連対したのは6頭(2勝、2着4回)で、すべてセレクトセール出身だった。勝ち馬2頭の共通点はディープインパクト産駒、1億円以下、そして意外にも社台系以外の生産牧場となっている。

ダービー出走馬の前走枠順ⒸSPAIA


オークスは前走で内枠を引いた馬が苦戦するというデータを紹介したのだが、1~3着馬のすべてが前走で内枠を引いた馬。見事に裏目った。何だか申し訳ないが、ちなみにダービーでも同様のデータがある。懲りないやつだと思われるだろうが、データで分析している以上、使わないという選択肢はない。

オークスとは全く逆で、前走が1~3枠だった馬9勝に対して、4~8枠だと1勝しか挙げていない。オークスを踏まえて過信しすぎるのはよくないが、数字的に強いデータなのは間違いない。

ダービーのプラスデータⒸSPAIA
ダービーのマイナスデータⒸSPAIA


最後にダービーにおけるプラスとマイナスデータを羅列していく。まずはプラスデータから。ここ10年のダービーはディープインパクト産駒(6勝)、キングカメハメハ産駒(2勝)、そしてハーツクライ産駒(1勝)が合計9勝。残る1勝はステイゴールド産駒だが、すでに死亡しておりこの世代に産駒がおらず、今年もこの3頭の産駒からダービー馬が誕生する確率が高いと考える。

可能性があるなら、オークスのようにキャリアが浅い種牡馬になるか。また、前走で差し、追い込みの競馬をした馬が8勝。これはオークスでも同様のデータがあった。そしてキャリア4、5戦の馬が14連対。あまりキャリアを重ねすぎるのもよくないようである。

マイナスデータの方だが、騎手が乗り替わったパターンは勝率0%。2着も1回しかない。ダービーが獲れそうな馬はそう簡単に手を離さないということか。22頭が出走してすべて着外というNHKマイルC組も苦戦必至。

最後に毛色。1989年に勝ったウィナーズサークルは芦毛初のダービー馬誕生で話題になったが、それ以来芦毛のダービー馬はいない。これもここ10年で勝率0%のデータなので活用できるかと思ったが、今年は登録の時点で芦毛がいなかった。

1/2の確率なら

おぼろげながらダービー馬となるのに必要なデータが見えてきた。まず好走パターンだが、A「栗東所属、栗東騎手騎乗」B「皐月賞か京都新聞杯経由」C「ノーザンファーム生産馬」D「セレクトセール出身馬で、かつ1億円以下、ディープインパクト産駒、社台系以外の生産馬」E「前走が1~3枠」F「ディープ産駒orキングカメハメハ産駒orハーツクライ産駒」G「前走で差し、追い込み」H「キャリア4、5戦」。

この10年で好走パターンから外れているデータは、I「前走6着以下」J「前走6番人気以下」K「前走コンマ6秒差以上の負け」L「社台ファーム生産馬」M「前走から乗り替わり」N「NHKマイルC組」。

上記のデータと登録馬を照らし合わす作業をしていて、まず驚いたのはノーザンファーム生産馬の多いこと。アイウエオ順だと8頭連続で同ファーム生産馬となり、登録馬18頭のうち、何と13頭が該当。さらに登録馬の半分近くがセレクトセール出身馬でもあった。現代競馬の縮図を見た思いである。

さて、今回はダービーということでいつも以上に項目を増やしてみた。まず好走パターンは8つ。さすがにすべてをクリアした馬はいなかったが、7つ該当する馬が2頭いた。まず1頭目は皐月賞9着馬のヴィクティファルス。Dの「セレクトセール出身馬で、かつ1億円以下、ディープインパクト産駒、社台系以外の生産馬」というムチャぶりのデータ以外を満たしていた。

ちなみに、登録馬でDの項目をクリアした馬はいなかった。ヴィクティファルスの問題は、マイナスデータであるI「前走6着以下」とK「前走コンマ6秒差以上の負け」に該当すること。この項目での例外に出てきたワグネリアンやスワーヴリチャードほど皐月賞で高い評価は受けていなかったが、4番人気でも人気馬の範囲に入ることは入る。ほかにふさわしい馬がいるかもしれないので、ひとまず保留。

なかなか騎手が決まらずヤキモキさせたヨーホーレイクだが、どうやら栗東の騎手に決定した様子。これでA「栗東所属、栗東騎手騎乗」をクリアしてプラスデータが7つ該当。この馬もヴィクティファルスと同様に皐月賞の人気と着差、加えてM「前走から乗り替わり」の項目が割引材料。

ステップレースである皐月賞でのポイントの一つが「人気」なので、11番人気だった同馬を4番人気のヴィクティファルスより上に評価することはできないか。世間に少数存在する「カミノタサハラ=幻のダービー馬説」を唱える1人なので、弟のこの馬には個人的に期待しているのだが、こればかりは仕方がない。

一方で、マイナスデータがないのはエフフォーリア、サトノレイナス、ワンダフルタウンの3頭。前走で人気して、かつ結果を出した馬が並んでいる。この3頭のうち、最もプラスデータが少ないのはエフフォーリア(BCH)。美浦所属馬×美浦所属騎手の組み合わせからダービーが出たのは2009年のロジユニヴァースが最後。

1990年代までさかのぼっても「ナカノコール」のアイネスフウジン(1990年)と「魂の逃げ」サニーブライアン(1997年)ぐらいで、データ的に強くは推せない。また、ワンダフルタウンはダービー馬が出ない青葉賞組。これも頭よりヒモ狙いとなる。

残るはサトノレイナス。ここ10年で牝馬の参戦はレッドリヴェールだけと書いたが、20年に広げてもウオッカが加わるだけで、やはりサンプル数が少ない。ただ偶然か、この2頭ともサトノレイナスと同じ桜花賞2着馬。ほぼ同じ条件での出走となり、ダービー馬となる確率1/2なら、分の悪い賭けではない。

マイナスデータで「前走から乗り替わると勝率0%」という項目があったが、ルメール騎手が皐月賞で騎乗(4着)したアドマイヤハダルや毎日杯2着馬グレートマジシャンではなく、こちらを選択して継続騎乗となったのも、データ的に何かの縁かもしれない。

相手だが、マイナスを抱えているが、それ以上に好データがそろっているヴィクティファルスとヨーホーレイクは外せない。あとマイナスデータがないエフフォーリアとワンダフルタウンも、連なら可能性は十分だろう。皐月賞ステラヴェローチェもプラスデータが多く、マイナスデータは1つだけ。これも付け加えておく。

◎サトノレイナス
〇ヴィクティファルス
▲ヨーホーレイク
△エフフォーリア
×ワンダフルタウン
×ステラヴェローチェ

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
オークスを勝ったユーバーレーベンはゴールドシップ産駒。正直、産駒がこれだけ早くGIを勝つとは想像していませんでした。しかも、自身が三冠で唯一勝てなかった府中2400mとは。父ステイゴールドの産駒もそうでしたが、ビッグレッドの繁殖牝馬、およびトレーニング方法がこの系統とぴったり合うのでしょう。

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