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【日本ダービー】偉業か危険な人気馬か 過去データが示す牝馬サトノレイナスの取捨は?

2021 5/27 06:00高槻とおる
東京芝2400m重賞のラップタイム比較ⒸSPAIA

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ウオッカ以来の牝馬Vを狙うサトノレイナス

オークスに出走していれば、ソダシと人気を分け合っていたはずのサトノレイナス。2014年12着のレッドリヴェール以来となる牝馬の日本ダービー出走を選択し、2007年のウオッカ以来となる牝馬の日本ダービー制覇を狙っている。

過去15年までさかのぼってみても、ダービーに参戦した牝馬は前述のレッドリヴェールとウオッカだけ。ホースマンなら誰もが憧れるタイトルではあっても、そう簡単に挑戦しようという気持ちを抱けないからこそ、この僅かな参戦数なのだろう。

1週前には同じ舞台でオークスが行われる。普通に考えれば、同じ牝馬の戦いの方がチャンスがより大きいのは間違いないし、3歳春に牡馬のトップクラスと2400mの厳しいレースを経験することで、心身ともにダメージを受ける可能性だってある。関係者のよほど強い気持ちがなければ、なかなか出走を決断することはできないだろう。調教師、馬主など、サトノレイナス関係者の日本ダービーに対する熱い想いが伝わってくる。

競馬ファンの一人としては、ぜひともサトノレイナスに頑張って欲しい気持ちだが、それとは別に、データから推せる馬なのか、それとも狙いづらい馬なのか、冷静に判断してみたいところでもある。伏兵扱いの馬ならいいのだが、恐らく皐月賞馬エフフォーリアに次ぐ人気を集めるのではないか。気持ちは応援だが、危険な人気馬なら馬券的には非常に美味しい。そこで今回は、過去データからサトノレイナスは買いか切りか、その1点に絞って検討してみたいと思う。

前走マイル組の好走条件

サトノレイナスの前走は桜花賞2着。オークスの場合は桜花賞からの出走は当たり前のローテーションだが、マイル戦から日本ダービー出走となるとその数はグンと減る。

日本ダービー 前走芝1600m戦出走馬成績2006~2020年ⒸSPAIA

前走でマイル戦を使っていた馬は、過去15年間で39頭。そのうち37頭がNHKマイルCからの出走で、残る2頭が桜花賞から出走してきたウオッカとレッドリヴェールになる。日本ダービーで3着以内に好走したのは2007年1着ウオッカ、2着アサクサキングス、2008年1着ディープスカイ、3着ブラックシェルの4頭。それぞれの前走成績は2・11・1・2着だ。2009年以降も多くのNHKマイルC組が参戦しているが、昨年のサトノインプレッサの4着が最高着順と成績は冴えない。

3着以内に好走した4頭には、2400mの距離に対応できるような下地がそれまでの成績にあったのだろうか。牝馬のウオッカはやはりマイル中心だが、1800mの1勝クラス黄菊賞で連対実績があった。アサクサキングスには1800mのきさらぎ賞勝ちが、ディープスカイにも1800m重賞の毎日杯勝ちが、ブラックシェルには2000mの弥生賞2着の成績があった。対するサトノレイナスは過去4戦すべてがマイル戦。正直、距離が延びて悪い馬とも思えないのだが、経験や実績がないことは事実で、やはり不安材料とはいえそうだ。

スロー傾向にCコース替わり 条件は厳しい

サトノレイナスのレース運びを見ると、過去4戦はいずれも中団から後方でレースを進めている。出負け癖もあるが、2歳時はややテンションが高いレースもあり、折り合い面も意識して控えるレースをしているところもあるのかと思う。当然、今回の距離延長でも鞍上は折り合いに最大の注意を払うと思うが、過去のレースラップを比較してみて、この馬に最適な舞台はやはりオークスだったかなと感じてしまった。

東京2400m重賞のラップと上がり比較2006~2020年 良馬場対象ⒸSPAIA

東京芝2400mで行われる重賞には、青葉賞、オークス、日本ダービー、ジャパンCの4つがあるが、過去15年の良馬場時の平均ラップを見てみる。上がりの数字はいずれも34.8秒~35.1秒程度と大差ないが、前半5Fと後半5Fのラップ差を比較すると、-1.0~1.8秒と後半の方が明らかに速い青葉賞、日本ダービー、ジャパンCに比べ、オークスは-0.1秒と前後半のタイム差がほとんどない。

4角位置成績を見ても、青葉賞と日本ダービーは4角先頭、4角2~5番手の馬で20%前後、ジャパンCでも4角先頭13.3%、4角2~5番手の馬で18.7%の連対率があるのに対し、オークスは4角先頭で6.7%、4角2~5番手でも13.7%の連対率しかない。明らかに逃げ・先行勢にとって厳しいレースなのだ。ユーバーレーベンが勝った今年のオークスでも、前5F通過は59.9秒、後半5Fとのタイム差は-0.5だった。サトノレイナスにとっては、恐らく戦いやすい流れだったはずだ。

日本ダービーの4角成績だが、6~9番手の連対率は11.7%、10番手以下だと5.9%。サトノレイナスがこれまで通りの待機策を取るなら、ちょっと怖い数字だ。東京コースは今週からCコースに替わり、荒れ始めた内ラチ沿いを仮柵が覆う。良馬場なら前が簡単に止まらない高速コンディションになる可能性が高いだろう。それを意識して早目に動く可能性もあるが、初距離でいつもと違うポジション取りをすることにもリスクはある。

ちなみに、ウオッカの日本ダービー以前のレースの4角位置を見ると、新馬から1・2・6・4・5番手で、桜花賞も6番手だった。イメージより前でレースをしていて、日本ダービーは4角8番手。前を射程圏に入れながら、しっかりと脚をためることができている。ここまで調べてみても、実はルメールを背にグイグイ追い込んで来るサトノレイナスのイメージが浮かぶところが情けないが、人気馬に不安データがあるのだから、ここは軽視してこそのデータ派だろう。とっても怖いが、人気の牝馬を強気に消してみたい。

ライタープロフィール
高槻とおる
グリーンチャンネルで結果分析、レース分析番組の構成作家を担当していた。現在は経営者取材などライターとして幅広く活躍中。ラップを長年研究しているが、実は馬券はパドック派。

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