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【オークス】鍵は「内枠とキレ」、ソダシは父の血が不安要素 東大HCが東京芝2400mを徹底検証

東京芝2400コースデータ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA
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コース紹介

今週は東京芝2400mを舞台に、3歳牝馬クラシック第2戦のオークスが行われる。桜花賞2着馬のサトノレイナスがダービーに出走することとなり、無敗の牝馬二冠を目指すソダシが断然の1番人気に支持されそうだが、オークス母子制覇がかかるアカイトリノムスメ、忘れな草賞を快勝したステラリア、フローラSを勝ったクールキャットなども樫の女王の座を狙う。

東京芝2400コースデータ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

当該コースが舞台の重賞は4レース。グレード順に、GⅠは今週のオークス、最強の3歳馬を決める競馬の祭典・日本ダービー、昨年三冠馬3頭の参戦で大いに盛り上がったジャパンCの3レース。GⅡはダービートライアルの青葉賞が行われる。今週は格の高いGⅠが複数施行されるこのコースの特徴をデータで分析していく(使用するデータは2011年5月22日〜2021年5月16日)。

まずはコース紹介。ホームストレッチをスタートして直線しばらくは平坦な道を進んだ後、向正面半ばまでだらだらと下っていく。向正面の坂こそあるものの、上りきると再び3コーナー途中まで下り坂。ここでスピードアップした各馬を待ち受けるのは直線の高低差約2mの坂。大箱東京の1周、長丁場かつ最後までタフさを問われるコースだ。

1・2枠は反則級の好成績

東京芝2400m・過去10年の枠別成績ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去10年の枠別成績>
1枠【37-29-28-268】勝率10.2%/連対率18.2%/複勝率26.0%
2枠【50-21-39-271】勝率13.1%/連対率18.6%/複勝率28.9%
3枠【26-29-29-315】勝率6.5%/連対率13.8%/複勝率21.1%
4枠【31-30-27-326】勝率7.5%/連対率14.7%/複勝率21.3%
5枠【32-33-41-337】勝率7.2%/連対率14.7%/複勝率23.9%
6枠【31-41-34-367】勝率6.6%/連対率15.2%/複勝率22.4%
7枠【34-45-37-420】勝率6.3%/連対率14.7%/複勝率21.6%
8枠【33-44-40-446】勝率5.9%/連対率13.7%/複勝率20.8%

枠別成績を見ると1・2枠の好成績が目立つ。GⅠ30レースに限定しても、半数の15勝を1・2枠が挙げており、大きなアドバンテージとなる。特に1枠は【8-7-5-37】複勝率35.1%、2017年以降では【4-4-2-11】複勝率47.6%とほぼ半数が馬券に。オークスでも17年から3年連続で好走馬が出ており、チェックしておく必要があるだろう。

大箱1周コースとあって外枠は距離ロスが大きく、複勝率では2割台に踏みとどまっているが、勝率・連対率は大きく下がってくる。オークスで相性が悪いのは6枠で、2011年のホエールキャプチャ3着を最後に9年間馬券圏内がない。点数を絞るならばここから消すべきだ。

東京芝2400m・過去10年の脚質別成績ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去10年の脚質別成績>
逃げ【28-29-22-202】勝率10.0%/連対率20.3%/複勝率28.1%
先行【99-89-90-656】勝率10.6%/連対率20.1%/複勝率29.8%
差し【105-105-103-986】勝率8.1%/連対率16.2%/複勝率24.1%
追込【40-45-54-874】勝率3.9%/連対率8.4%/複勝率13.7%

脚質別成績ではチャンピオンコースらしく、どのポジションからもまんべんなく好走馬が出ている。オークスに限定すると決め手がある馬が圧倒的優位で、上がり最速をマークした馬は【7-3-2-1】複勝率92.3%だ。唯一の馬券圏外だった2017年のディアドラも9番人気ながら4着に突っ込んでおり、キレのある馬は軽視すると痛い目にあう。

ちなみにオークスで上がり最速だった13頭のうち、ラヴズオンリーユーを除く12頭はすでに重賞で上がり最速の経験があった。また該当馬は全頭が前走4番人気以内でもあった。目下5戦連続で上がり最速をマークし、かつ前走忘れな草賞2番人気ステラリアが今年の差し馬枠か。

ソダシ、クロフネの血が不安

東京芝2400m・過去10年の種牡馬別成績ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去10年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【64-41-40-266】勝率15.6%/連対率25.5%/複勝率35.3%
キングカメハメハ【15-13-12-129】勝率8.9%/連対率16.6%/複勝率23.7%
クロフネ【2-1-1-33】勝率5.4%/連対率8.1%/複勝率10.8%

種牡馬別成績ではディープインパクトが他を引き離す好成績。64勝は2位のステイゴールド(31勝)をダブルスコアで圧倒しており、単勝回収率も116%と、このコースとの相性の良さが浮き彫りになっている。今年も多数の産駒をオークスに送り出しており、注視しておきたい。

長らくディープインパクトと2強を形成してきたキングカメハメハは若干見劣る数字が並んでおり、割り引く必要がありそう。オークスでは過去10年で【0-1-0-8】、2016年のチェッキーノが2着に来ているが、それ以外は馬券圏内はおろか掲示板もない。ククナ、アールドヴィーヴル、タガノパッションには厳しいデータだ。

一方、無敗の桜花賞馬ソダシが父に持つクロフネも2400mという距離が大きな壁になる。クロフネ自身もNHKマイルCを圧勝しながらダービーで5着に敗れており、付け入る隙がありそう。

期間を限定せずにクロフネ産駒×芝2400m以上のレースデータを調べると、重賞ではこれまで30頭が挑戦して【0-1-2-27】だった。GⅠでは【0-0-2-14】と連対がなく、馬券になったのも前述のホエールキャプチャが最後。圧倒的な1番人気ながら、頭と決めつけて戦略を練ると思わぬ落とし穴にはまるかもしれない。

東京芝2400m・過去10年の騎手別成績ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去10年の騎手別成績>
ルメール【29-19-11-42】勝率28.7%/連対率47.5%/複勝率58.4%
M.デムーロ【12-7-13-36】勝率17.6%/連対率27.9%/複勝率47.1%
川田将雅【6-9-3-27】勝率13.3%/連対率33.3%/複勝率40.0%
吉田隼人【2-3-3-26】勝率5.9%/連対率14.7%/複勝率23.5%

騎手別成績ではいうまでもなくルメール騎手がトップ。6割近い複勝率を叩き出し、アーモンドアイで数多のGⅠを制した国枝栄調教師とのタッグも強力。ただし懸念材料がないわけではなく、GⅠ【5-2-1-10】のうち、乗り替わりに限ると【0-0-0-6】で、掲示板を確保した例もない。4年前のオークス、乗り替わりで3番人気となったエンジェルフェイスで10着に敗れたケースもあり、アカイトリノムスメも絶対視は危険だ。

M.デムーロ騎手は全体の数字もさることながら、美浦所属の調教師とのタッグで単複回収率がともに100%を超えている点が強調材料。人気薄でも激走例が多いからこその結果で、ユーバーレーベンの巻き返しにも期待が持てる。

また外枠を引いた時の安定感も魅力で、7・8枠かつ5番人気以内に限定すると【6-3-5-2】複勝率87.5%と素晴らしい。執筆時点では枠順が出ていないが、オークスに限らず該当条件がそろえば自信を持って買いたい。その他、ステラリアに騎乗する川田将雅騎手は連対率の高さが光る。

ソダシに騎乗する吉田隼人騎手は騎乗数が多くないものの、2017年以降では【1-2-2-5】複勝率50.0%にまで向上しており、全体成績の額面よりはるかに信頼できる。勝ち切るケースが少ない点は気になるものの、1番人気が1度しかない中で大健闘しており、完全に消すのはやりすぎだろう。

相沢師、22年ぶりの樫制覇へ

東京芝2400m・過去10年の調教師別成績ⒸSPAIA


<東京芝2400m・過去10年の調教師別成績>
友道康夫【11-8-8-40】勝率16.4%/連対率28.4%/複勝率40.3%
相沢郁【2-9-4-28】勝率4.7%/連対率25.6%/複勝率34.9%
須貝尚介【3-1-3-16】勝率13.0%/連対率17.4%/複勝率30.4%

調教師別成績では友道康夫調教師をピックアップ。栗東所属のトレーナーながら2桁の勝利は立派で、複勝率も4割の大台。GⅠでもマカヒキ、シュヴァルグランなどが結果を出している。未勝利・君子蘭賞を連勝しているニーナドレスが出走予定だ。昨年2番人気で大敗してしまったデゼルの分まで激走してほしい。

フローラSで14番人気ながら2着、大波乱を起こしてオークスに殴り込みをかけてきた日高の星スライリー。管理するのは相沢郁調教師だ。2勝は友道師に遠く及ばないものの、連対率ベースでは差がほとんどなく、複勝回収率は122%と穴党にうれしいデータが出た。この厩舎といえばウメノファイバーのオークス制覇、22年ぶりの樫奪取がかかる。

ソダシを管理する須貝尚介調教師はGⅠで【0-1-1-11】。府中で鮮やかな末脚発揮というタイプではなかったゴールドシップが数字を引き下げている面はあるが、単系馬券で逆らう価値はありそうだ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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