GⅠで人気のルメールを消す
今週日曜は最強ステイヤー決定戦、天皇賞(春)が行われる。前走で思わぬ大敗を喫したものの、菊花賞でコントレイルと熱戦を演じたアリストテレス、そのアリストテレスを尻目に阪神大賞典を大楽勝したディープボンド、菊花賞馬ワールドプレミアに加え、現役屈指のシルバーコレクター・カレンブーケドールや日経賞覇者ウインマリリンなどの強力牝馬が脇を固める、楽しみかつ難解な一戦となった。
今年の天皇賞(春)は何より阪神開催が厄介。同レースが阪神で施行されたのは大横綱ビワハヤヒデが単勝1.3倍の圧倒的支持に応えた1994年が最後で、このレースも厳密にいえば2006年のコース改修以前のもので参考にはならない。真のサンプルはJRAが申し訳程度に施行してくれた2月末の松籟Sのみである。GⅠ週はコース分析記事を連載しているが、検索結果の画面上に表示されるたった1レースの3勝クラスを見ながら頭を抱えてしまった。
とはいえ、上位人気馬が軒並み不安要素を持つこのレースをデータ抜きで攻略するのは不可能。そこで今週は「長距離は騎手で買え」という格言通り、あえて“騎手のデータだけ”を使って天皇賞(春)攻略を目指すとどうなるのか、検証していく。
<3000m以上の芝レース・騎手別成績1>
武豊【30-17-16-53】勝率25.9%/連対率40.5%/複勝率54.3%
ルメール【7-2-5-10】勝率29.2%/連対率37.5%/複勝率58.3%
和田竜二【9-7-4-50】勝率12.9%/連対率22.9%/複勝率28.6%
川田将雅【2-2-3-37】勝率4.5%/連対率9.1%/複勝率15.9%
芝3000m以上のレースに限定し、騎手の全キャリアを対象に成績を確認した。天皇賞(春)で買いたい騎手を考えた時、武豊の名前が脳裏に浮かばない競馬ファンは恐らくいないだろう。初騎乗のイナリワンからスーパークリーク→メジロマックイーン2回と怒涛の4連覇、通算【8-6-4-8】複勝率69.2%は唯一抜きん出て並ぶものなしの数字だ。長距離実績で見ても極めて堅実で、右足甲骨折から復帰する今回も期待大。
コンビを組むディバインフォースは下位人気だろうが、16番人気ながら横山典弘騎手がいつの間にか4着にねじ込んでいたあの菊花賞を思い出したい。そんな大駆け実績のある馬に、繰り返すがこのレースをなんと8回勝っているレジェンドが乗る。買うしかない。
武豊騎手以来の天皇賞(春)3連覇がかかるルメール騎手も全く遜色ない。勝率と複勝率は表中トップで、これだけ見るとアリストテレスも逆らえないように見える。ただ好走歴をよく分析すると、中9週以上【5-0-2-0】に対し、中4~8週では【1-1-1-9】、さらに前走で0.1秒差以上の負けを喫した馬は【0-0-0-8】だった。
着外だったときのデータを紐解くと、開催自体が不安になる馬場だった菊花賞のアルアイン、同じく菊花賞の、ウルトラC的乗り替わりで単勝が売れに売れたニシノデイジー。ともに2番人気ながら凡走という例がある。
この、中4~8週かつ前走0.1秒差以上負け、言い換えれば「順当なステップレースを接戦以外で負けていた馬」に騎乗した時のルメール騎手は、馬券内はおろか掲示板も皆無。前走の阪神大賞典から中5週のアリストテレスもここに吸い込まれかねない。真のステイヤー適性に疑問が生じた今、「GⅠで人気のルメールを消す」という令和の日本競馬に逆行するような馬券を買ってみたい。
コントレイルと仲良くクラシックを皆勤し、ついに主役としてGⅠに臨むディープボンド。コンビを組むのはナイスガイ和田竜二騎手。人気薄への騎乗が多く、好走率自体は平凡も、単複回収率はともに100%を超えている。特に継続騎乗では【6-6-3-24】と複勝率が倍になり、さらに3番人気以内では【5-3-0-0】だ。
世紀末覇王ことテイエムオペラオーだけでなく、サドラーズウェルズ産駒唯一のJRA重賞ウィナー・サージュウェルズ、ヤマニンセラフィム産駒唯一のJRA重賞ウィナー・ナムラクレセントと渋い馬でもきっちり結果を出している。ディープボンドをキズナ産駒初のJRA・GⅠウィナーに導く可能性も十分だ。
そして、長距離戦で案外数字が悪いのは川田将雅騎手。複勝率2割以下、そして天皇賞(春)【0-0-0-13】は嘘のような本当のデータで、じわじわ人気しそうなオーソリティも評価を下げる。