バスラットレオンが5馬身差の逃げ切り
4月10日に中山競馬場で行われたのはニュージーランドT。来月に迫った3歳マイル王決定戦、NHKマイルCの前哨戦だ。
人気の中心となったのはアヴェラーレ、バスラットレオンの2頭。前者が東京の新馬、1勝クラスを圧巻の内容で連勝してきたのに対し、後者は札幌2歳S、朝日杯FS、シンザン記念と、勝ち星にこそ届かない中、常に世代の一線級と渡り合ってきた。勢いと未知の魅力を秘めたアヴェラーレ、信頼と実績のバスラットレオンという構図だった。

しかしその両頭のレース運びは対照的。好発から楽に先手を奪ってマイペース、飛ばしすぎず緩めすぎず、完全にレースを支配したのはバスラットレオン。アヴェラーレは内の中団で待たされて仕掛けるタイミングがなく、ようやく前が開いた直線では再び挟まれる場面もあり、全く競馬にならなかった。
それにしても、勝ったバスラットレオンが後続につけた着差は5馬身。過去10年のマイル重賞で5馬身差勝利というのはレシステンシアの阪神JF、メジャーエンブレムのクイーンC、この2例だけだった。これだけの稀有な走りを見せた以上、次の本番に期待がかかるのは当然のことだろう。
種牡馬キズナの物語
バスラットレオンの父はキズナ。東日本大震災の翌年にデビュー、現役時代はエピファネイアを下してダービー馬に輝き、秋にはオルフェーヴルとともに日本代表として欧州遠征。ニエル賞で競馬発祥の国の3歳王者、エプソムダービー馬ルーラーオブザワールドを撃破した名馬だ。
種牡馬としても初年度からマルターズディオサやビアンフェといった活躍馬を送り出し、先日は阪神大賞典をディープボンドが制覇。短距離から長距離、ダートまで懐の深い同馬は、実は「キズナ産駒の単勝を機械的に買い続ければプラス収支」といった回収率をマークしている馬券ファンには嬉しい存在だ。
そのキズナ産駒だが、GⅠでの成績は【0-1-0-24】。それ以外の重賞だと【10-3-6-49】、単回収率241%、複回収率104%だから、いかにGⅠだけ苦戦しているかが分かる。
現役時代、種牡馬としても同期のエピファネイアは既にデアリングタクトを輩出してGⅠを3勝。競合が多い上に選べる繁殖牝馬にも制限のあるディープインパクト産駒という「ハンデ」があるとはいえ、負けていられない。
同グループの後輩ディープ産駒、コントレイルが種牡馬入りするまでに立場を固めておきたいキズナお父さんに、ディープボンドやバスラットレオンが待望のタイトルをプレゼントすることは果たしてできるのだろうか。ドラマとしては応援したいところだが、データを見ると馬券的には静観が賢明か。
2着に入ったタイムトゥヘヴン。8枠15番というのはやや酷な枠順だった。もちろん、翌日の競馬では内を避ける騎手も多かったように、中山芝は少しずつ外有利にシフトしてきているが、そうなればそうなったで内の馬が外に張ってくるために外枠は振られて厄介だ。今回の着差はその分もあった。
父ロードカナロア、母は桜花賞馬キストゥヘヴン。血統からいえば距離短縮が奏功したのも納得だ。今後の進むべき道が明確になったのは大きな収穫だ。
15着と大敗を喫したアヴェラーレは、前述したようにほとんど競馬になっておらず、馬の評価自体は完全に参考外の一戦でいい。
騎乗したルメール騎手はレース後コメントで「このレースのことは忘れてほしい」と、いつもの茶目っ気ある言い回しでミスを認めたが、同日の阪神牝馬Sで3着と巻き返したドナウデルタでのターコイズSや、さらに思えば昨秋の京成杯AH、アンドラステでも似たような形での敗戦があった。
進路取りに焦らない騎手、かつ厳しいマークの対象になりやすい宿命もあるだけに、今後も中山マイル、多頭数で内枠に入ってしまったときは同様のリスクを承知の上で買うかどうかの判断をしたい。
《関連記事》
・【皐月賞】今年こそは共同通信杯組! ダノンザキッドよりエフフォーリアを買いたいワケとは
・【皐月賞】東大HCが中山芝2000mを徹底検証 馬券に役立つデータは?
・上手な付き合い方のコツは?ルメール騎手の「買える、買えない条件」