「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【朝日杯FS】20年ぶり!前走未勝利戦のグレナディアガーズが激走 勝負を分けたポイントとは

2020 12/21 11:12勝木淳
2020年朝日杯フューチュリティステークスレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

前走未勝利戦【0-0-1-8】データがまたも破られる

2020年はデータ党にとって難儀な一年だった。19日に引退式を行ったアーモンドアイが4、5歳で天皇賞(秋)連覇など、破られたデータをあげればキリがない。暮れになってそれはまだまだ続く。朝日杯FSは阪神施行後の過去6年間で前走未勝利戦出走馬【0-0-1-8】。過去20年【1-0-1-14】、1986年以降【2-0-1-14】で、勝利したのは89年アイネスフウジン、00年メジロベイリーのみ。

勝ったグレナディアガーズをデータ面から推すのは難しかった。ここ20年出ていなかったローテが出現したわけだ。それでもデータ派は前を向く。データをアップロードしながら新たな傾向を探る。進むべき道は前方にしかない。

グレナディアガーズは関西圏の競馬がない7月の新潟でデビュー。馬群に入れず終始好位の外、インから抜けてきたサルビアを捕らえられなかった。サルビアはりんどう賞を勝ち、阪神JF0秒7差8着の実力馬。つづく2戦目は9月の中京マイル戦。発馬後から終始馬が内へ行きたがる素振りを見せ、最後の直線でも内ラチから離れられずに4着。レコードでここを突破したのはレッドベルオーブだった。

フランケル産駒はスピードに特化し、競馬で気難しさを出すタイプが多いが、グレナディアガーズもここまではその典型ともいえるレース内容だった。3戦すべて手綱をとった川田将雅騎手にとって、内枠に入った今回の作戦は決まっていただろう。発馬から最内を嫌い、1列外に出して好位をとり、流れに乗せる。これしかないという競馬によって揉まれることを回避、好走できる下地が整ったといっていい。

勝負を分けた残り800mの攻防

レースはブルースピリットが自然とハナに立つところを外枠からモントライゼがハナを奪い、後続を突き放す形。ルメール騎手が無理に抑え込むより馬の気に任せたことで前半800m45秒2のハイペースを演出。

グレナディアガーズは離れた3番手集団で内ショックアクション、外バスラットレオンの間に入った。川田騎手は3頭雁行を長く続けないように残り800m標識から先に動いた。ここが勝負の分かれ目ではないか。デビュー3戦で見せた気難しさを考えれば、3頭並走の間に入るのはよくない。馬の個性を知り尽くした騎乗だった。

だが、前半のハイペースを考えれば後ろも怖い。直線を向くまで前を「追いかけすぎずに追いかける」といった慎重な仕掛けはお見事。我先にモントライゼを捕まえに行ったわけではない。前半を気分よく過ごしたグレナディアガーズも持ち前のスピードを持続させた走りで後ろを振り切った。

800m47秒1のラップは11.7-11.6-11.8-12.0。坂をあがっても止まることなく、切れ味が要求される11秒台前半といったラップもなく、持続型のグレナディアガーズの強みを活かせる競馬だった。緩急を求められるクラシック路線は未知数だが、マイラーとしての将来は有望だ。

2着ステラヴェローチェはデビュー以来初の良馬場出走で答えを出した。ノーザンファーム産のバゴ産駒は確実に走る。母オーマイベイビーの父はディープインパクト。母父ディープインパクトの血統構成を持つ馬は代表産駒のキセキも含め、マイルはベストではないが、マイル戦のような持続型ラップに強い馬が多いようだ。この敗戦で持続型の2000m戦になりやすい皐月賞がかえって楽しみになった。

3着レッドベルオーブは自らが記録したレコードを破られて敗戦。その前走デイリー杯2歳Sは前後半800m46秒6-45秒8、後半が速いラップ構成で最後の600mは11.4-10.9-12.0。残り400mから10秒9という極限のラップを踏んでいた。切れ味ならば対抗できるも、こういった平均的に速い脚を繰り出すようなレースの経験が少なかった。ベストがマイルではないことが明確になり、来年はクラシック戦線で楽しみにしたい。

4、5着は先行勢だっただけに逃げて10着モントライゼはただ1頭キツイ競馬をしてしまった印象。京王杯2歳Sでひと溜め利かすようなレースを教えこんでいただけに、この逃げで今後どういった馬になるか気になる。最後は苦しくて内にもたれており、マイルは長いだろう。

3番人気9着ホウオウアマゾンは流れが速く先行できなかっために崩れた。レッドベルオーブと同じくゆったりしたペースの先行がベスト。来年は距離が延びて楽しめるのではないか。

朝日杯フューチュリティステークスレース展開図ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


《関連記事》
【有馬記念】フィエールマン、クロノジェネシスは危険 当日まで覚えておきたいデータとは
東大HCが中山芝2500mを徹底検証 馬券に役立つデータは?
【ホープフルS】当日馬体重500キロ以上4勝、キャリア2戦以内9勝 限定される好走パターンとは?

 コメント(0件)