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【阪神JF】話題性だけじゃないソダシ データ面も完璧だし

2020 12/10 11:00門田光生
2020年阪神ジュベナイルフィリーズのデータインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

今回はBコース使用

JBCクラシックのチュウワウィザードのレースを見た時、逃げたダノンファラオさえ潰せば勝てると信じていたようなレースぶりが印象だった。結果的にマークした相手を間違ったのだが、先週のチャンピオンズCではクリソベリルをきっちりマーク。相手が意外に早く失速した以外は思った通りの競馬ができたのではないか。

実はこの馬、中京以外の左回りコースで4戦4勝。その中京もスムーズさを欠きながら追い上げた昨年のチャンピオンズC、そして今年の内容から苦手意識は全くなし。名うての左巧者といってもいいだろう。

さて、師走のGI第二弾は12月13日(日)に行われる第72回阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神JF)。阪神3歳牝馬Sから現在の名称に変わったのが2001年で、コースがリニューアルされて外回りの芝1600mで施行されるようになったのは2006年から。

旧コース時のゲート位置は1コーナー奥。スタートしてすぐカーブが待っており、外枠は不利とされていた。改修後は現在のバックストレッチの中間やや左寄りがスタート地点。ゲートを出てからしばらく直線が続くので、枠順による不利はほぼなくなった。

改修後初の阪神JF(2006年)の勝ち馬はウオッカ。のちにダービーやジャパンカップを勝つ名牝である。以降、2008年ブエナビスタ、2009年アパパネ、そして2017年ラッキーライラックなど、クラシックや古馬の大レースを制した馬が名を連ねている。今年のメンバーからも偉大な先輩に続く馬が現れるのだろうか。要注目である。

脚質別



リニューアル後は枠順の有利、不利がなくなったと書いたが、脚質も同様だろうか。せっかくなので、今回は阪神競馬場が今のコース形態になった2006年以降、過去14年のデータを基にして検証してみることにした。

結果はというと、勝ち馬14頭中9頭が差し馬。確かにこのレース、大外を回った馬が差し切るというシーンが頭に残っている。逃げ切ったのは昨年のレシステンシアだけだ。

ただし今年は京都競馬場が改修工事に入った関係で、連続開催の2開催目というのが例年と違う点。しかも、この週から仮柵が設置される(例年はAコース)。阪神がリニューアルしてから年末に連続開催した例がないだけに、これがどう出るか見ものである。

経験より素質

所属別



栗東所属馬の10勝となっているが、出走頭数も圧倒的に多い。勝率、連対率で見ると大きな差はなかった。関西で行われるGIの中では、美浦所属の頑張りが目立つレースといえる。

キャリア別



続いてキャリア。競馬においてレース経験は大事な要素だが、クラシックに直結するレースであることを考えると素質も重要。勝ち馬はキャリア3戦以内の馬ばかりで、キャリア5戦を超える馬から連対馬は1頭しか出ていない。好走が目立つのはキャリア2戦組の8勝。キャリア3戦組も9連対している(勝率5.9%、連対率10.6%)が、2戦組の勝率15.7%、連対率21.6%とは大きな差がある。ここではキャリア2戦の馬が狙い目となる。

前走着順別



このレースは経験より素質、ということが分かった。ということは、前走大敗からの巻き返しは難しいのではないか。調べてみると、勝ち馬は全て前走2着以内。連対馬も28頭中20頭が前走1着馬で、6頭が前走2着。前走3着以下から巻き返したのはわずか2頭だけだった。少なくとも前走で連対していない馬には厳しい戦いが待っているようだ。

セール出身馬の成績



素質馬の宝庫といえばセレクトセール。また、トレーニングセール出身といえば仕上がり早の印象がある。そこでセール出身の馬の成績を調べてみたが、これが意外にも苦戦。これまで54頭の市場取引馬が出走して、勝ったのは1頭だけ。セレクトセールだけに絞っても、24頭中勝ち馬1頭、2着馬は2頭。連対率12.5%の数字だけ見るとそこまで悪くないのだが、ちょっと意外である。

生産牧場別



セレクトセールの馬がそこまで走れていないということは、社台系の生産牧場の成績も今ひとつ…、かと思いきや、そういうわけではない。ノーザンファーム生産馬はこれまで17頭の連対馬を出しており、勝率19.6%、連対率33.3%と優秀な数字を残している。

2位の社台ファームは連対馬が4頭。この2つの牧場で3分の2以上の連対馬を出していることになる。昨年の勝ち馬レシステンシア(キャロットファーム)のように、セール出身でない社台系のクラブ馬が活躍しているということの裏返しかもしれない。

前走レース別



最後にステップレースの検証を。各レースが満遍なく馬券に絡んでいるが、ある程度の出走頭数があって勝率、連対率がいいのはアルテミスS組。特に連対率23.8%というのはほかのレースより2倍以上もいい数字。昨年こそ連対馬が出なかったが、それまで5年連続で馬券に絡んでいた。

ヒロイン候補はソダシ

どうしても2歳戦、しかも牝馬限定戦は使えるデータが少なくなるのだが、その中で強調したいのは(1)キャリア2戦、次いで3戦(2)できれば前走1着、最低でも2着(3)セール出身でない(4)アルテミスS組、となる。

今回は(4)のアルテミスS組が3頭しかおらず、そのうちの2頭は(2)を満たしていない。となると、本命は残る1頭となる。吸い込まれるように人気馬へとたどり着いてしまったが、噂の白毛馬ソダシに期待しよう。

ダートがいい血統なので東京競馬場の芝でどうかと思った前走も快勝。先日、偉大な牝馬が引退レースを飾ったが、スター性ならこの馬も負けていない。こんなご時世なので明るい話題は一つでも多い方がよく、新たなヒロイン候補としてこれからの活躍に期待したい。

アルテミスS組以外で条件を満たしている馬が相手となるが、ポールネイロンがそれに該当。2017年の勝ち馬ラッキーライラックと同じオルフェーヴル産駒というのも心強い。同じく2戦2勝のサトノレイナスはセール出身で割り引いたが、このレースに1億円以上の値段で取引された馬が出走するのは初めて。これまでのセールでの最高価格馬は2018年のダノンファンタジーで9720万円。そのダノンは見事優勝を飾っており、高額馬が結果を出したという事実から、この馬にも同等の期待をかけていいかもしれない。

続いてキャリア3戦の馬で前走1着馬はジェラルディーナ、メイケイエールの2頭。ジェラルディーナは前走が未勝利勝ち。未勝利戦から挑んだ馬は【1-0-0-15】で、勝ち馬は2008年のブエナビスタまでさかのぼらなければいけない。分の悪いデータが出たが、そのブエナビスタは母がGI馬という良血で、このジェラルディーナは母が三冠牝馬。前例を上回る良血馬なら再現を期待していい。

メイケイエールはセール出身馬だが、実はこの馬、ソダシと同じシラユキヒメの一族。上記で同セール出身のサトノレイナスを復活させているのでまたかとなってしまうが、2018年は1、3着がセレクトセール出身馬。これまで3頭しか連対していないセール出身馬が同年に2頭絡んだ例があるだけに、付け加えてもいいと判断した。甘いかな?

◎ソダシ
〇ポールネイロン
▲ジェラルディーナ
△サトノレイナス
×メイケイエール

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
コロナの再拡大を受けて、再度入場制限を検討する地方競馬場も出てきました。有馬記念もそうですが、来年の関西金杯は珍しく中京競馬場で行われるのに入場制限がかかるのは確実。屈指の人気レースだけに残念です。


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