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【エリザベス女王杯】ラッキーライラック連覇に黄信号 阪神開催が“アンラッキー”な理由は?

2020 11/12 06:00門田光生
2020年エリザベス女王杯データインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

楽しみなジャパンカップ

ジャパンカップで無敗の三冠馬同士の決戦が実現するようだ。コントレイル陣営が参戦を表明した翌日にスポーツ紙が一面を飾るなど、競馬サークルはコロナ禍のうっぷんを晴らすかのようなの賑わいを見せている。

一方、11月15日(日)に行われるGIエリザベス女王杯。天皇賞(秋)を制したアーモンドアイの名はなく、三冠牝馬デアリングタクトはジャパンカップへ。真の女王決定戦といえないのは残念だが、それでも昨年の優勝馬ラッキーライラックをはじめ、GI戦線で活躍した馬が多数参戦。馬券的には面白いレースとなるはずだ。

意外に差がない、直線の長さ

京都競馬場が長いリニューアル工事に入ったため、しばらくお休み。これにより、従来の京都開催を阪神や中京に振り分けて行われることが発表されている。今年、その影響を受けるGIはエリザベス女王杯とマイルCSの2つ。エリザベス女王杯は京都外回り2200m→阪神内回り2200m、マイルCSは京都外回り1600m→阪神外回り1600mに変更。

どちらの影響が大きいかと言われれば、エリザベス女王杯の方か。坂の上り、下りはもちろんだが、外回りから内回りに変わるので直線の長さが全然違う…そう思っていたのだが、調べてみると京都の直線398.7m(昨年の施行条件=外回り2200m、Bコース)に対して阪神は356.5m(今年の施行条件=内回り2200m、Aコース)。約40mの差であった。100m近く違うと勝手に決めつけていたが、思い込みとは恐ろしいものである。

とはいえ、コースをはじめ例年と様相が違うのは間違いない。果たして阪神芝2200mを得意としている種牡馬はどれか、逆に京都2200mを得意として、阪神2200mは苦手という種牡馬はいるのか。今回も2010年以降のデータを参考にして検証してみた。

芝2200mの種牡馬成績 6走以上(京都・阪神)ⒸSPAIA
芝2200mの種牡馬成績 5走以下(京都・阪神)ⒸSPAIA

従来の京都芝2200mで最も勝利数が多いのは、やはりディープインパクト産駒。30勝は断トツで、2位ハーツクライに3倍の差をつけている。勝率は14%、連対率も25%を超える優秀なもの。果たしてこれが阪神芝2200mだとどうなるか。

阪神の方がレース数が少ないので19勝と数は減るが、勝率(13.7%)、連対率(23%)と大きな落ち込みはない。今回出走予定の種牡馬だと、ハーツクライやスクリーンヒーローが、競馬場が変わっても成績に大きな差が出なかった。

京都2200mで好成績を挙げ、阪神2200mで落ち込むのはルーラーシップ、ハービンジャー、オルフェーヴル。ルーラーシップは勝率が京都18.4%→阪神6.9%まで下がる。ただし連対率は優秀で、京都、阪神ともに最上位。大きく評価を下げる必要はなさそう。

問題は残る2頭。ハービンジャー産駒は京都で9勝、勝率10.1%に対して、阪神0勝、勝率はもちろん0%。ハービンジャー産駒は内回りが得意という印象が強いだけに、これは意外な結果。オルフェーヴル産駒もステイゴールド系だから内回りの方が好成績と思いきや、京都の勝率20%、連対率26.7%が、阪神だと勝率0%、連対率9.1%と苦手な条件に変わってしまう。

ハービンジャー産駒はノームコア、オルフェーヴル産駒はラッキーライラックと有力馬がスタンバイ。ラッキーライラックは阪神で阪神JF、大阪杯を勝っているが、2200mの宝塚記念は負けている。逆に京都はもうひとつだが、阪神で好走確率が上がるのはヴィクトワールピサ産駒。京都だと28走して0勝だったのが、阪神では11走して2勝。連対率も倍以上となっている。

なお、モンテロッソ、ゴールドシップ、キングズベスト産駒はサンプル数が5走以下のため参考記録とする。

3、4歳が圧倒的

エリザベス女王杯出走馬の年齢ⒸSPAIA

さて、ここからはエリザベス女王杯の傾向について、過去10年のデータを基に検証してみる。まずは年齢から。

3、4歳馬が強く、1着馬は9頭、3着まで広げても30頭中25頭が該当。5歳馬からは1頭の勝ち馬と2頭の2着馬、そして1頭の3着馬が出ているが、6歳以上で馬券に絡んだのは昨年の2着馬クロコスミア(6歳)だけ。3、4歳が圧倒的に強いと覚えておこう。

エリザベス女王杯出走馬の前走着順ⒸSPAIA

続いて前走着順だが、連対馬20頭中19頭が前走で5着以内に入っていた。少なくとも掲示板に載っていないと厳しいようだ。

エリザベス女王杯出走馬の前走クラスⒸSPAIA
エリザベス女王杯出走馬の前走ⒸSPAIA
エリザベス女王杯出走馬のローテーションⒸSPAIA

ところでこのエリザベス女王杯だが、ここ10年の平均単勝は880円、馬単や3連複も平均配当が1万円以下を切っている。荒れるレースとはいいがたい。

それは前走クラスを調べてみるとよく分かるのだが、前走がGI、またはGⅡを走った馬が8勝(残る2勝は海外)、2着馬は9頭いる。唯一の例外は2013年の2着馬ラキシス(前走が条件戦)のみ。GIやGIIを使える、つまり実績がある馬の方が有利なようで、ある程度の格は必要ということだろう。

その前走を詳しく見ていく。最も連対数が多いのは府中牝馬Sで、1着馬4頭、2着馬4頭で合計8連対。続いて秋華賞の5連対。当然ながら3歳馬は全てこのレースを経由、というわけでなく、前述のラキシスや、3着だが昨年のラヴズオンリーユーはオークスからエリザベス女王杯という変則ローテーションだったので注意したい。

ここでの注目はオールカマー組。連対したのは3頭と上記2レースには及ばないが、出走頭数が6頭なので連対率は5割。今年の出走馬でここから参戦するのはセンテリュオだけ。データ的に注目の1頭といえるだろう。

ローテーションといえば、好成績を残している府中牝馬S組と秋華賞組は中3週の間隔になる。当然ながら中3週の成績が最もよく、次いで中4~8週の順。中9週以上開いて連対した馬はいない。近年のGIには珍しく、休み明けが不利なレースとなっている。

結局、誰が得をした?

そろそろまとめに入る。エリザベス女王杯のデータで差が大きいものをピックアップすると「3、4歳」「前走5着以内」「前走GⅡ以上」「中9週以上は連対馬ゼロ」となる。

今年は5歳馬が多く出走しているので、ひとまずこれらを除外。ただ5歳馬が全く連対していないわけでなく、場合によっては復活があるかもしれない。

今度は前走5着以内。連対馬20頭中19頭が該当するのだからほぼ必須と書いたが、秋華賞組の半分以上がこれで消える。オークス上位馬のウインマイティー、ウインマリリン、ローズS勝ち馬リアアメリアがいなくなってしまった。

続いて前走GII以上。ここで扱いが難しいのは新設の新潟牝馬S。今後エリザベス女王杯の有力ステップレースになる可能性も無きにしも非ずで、ここを使った組は今年に限って保留としておく。

最後に中9週以上。ここでは札幌記念を使ったノームコアやラッキーライラックが該当。札幌記念自体は【0-0-1-0】とサンプルは少ないのだが、この10年で中9週以上あいた馬は連対していないのだから仕方がない。

続いて京都2200m→阪神2200mで成績が極端に落ちる父系を切っていく。具体的にはオルフェーヴル産駒とハービンジャー産駒になるが、今年は3頭が該当。この項目でもノームコアとラッキーライラックは引っかかるので、どのみち消しである。

残ったのはサムシングジャスト、シャドウディーヴァ、ソフトフルート、ミスニューヨーク、ラヴズオンリーユーの5頭。この中で面白そうなのはサムシングジャスト。前述の通り、父ヴィクトワールピサは京都芝2200mだと勝率0%だが、阪神芝2200mでは18.2%。コース替わりという運が味方しそうだ。

復活枠で取り上げたいのはセンテリュオ。連対率5割のオールカマー組。頭数は多くなったが、穴っぽいところから入るということで許してほしい。

◎サムシングジャスト
〇ラヴズオンリーユー
▲シャドウディーヴァ
△ソフトフルート
×ミスニューヨーク
×センテリュオ

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
10月31日に東京競馬場で顕彰馬選定記念の「キタサンブラックメモリアル」が行われました。馬主はご存じ北島「三郎」さん。その3日後、同じく東京にある大井競馬場で行われたJBCスプリントを制したのは中川「三郎」さん所有のサブノジュニア。サインが出ていましたね!後の「祭り」ですが……(笑)。

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