来年のクラシックへ向けて
2020年の3歳クラシック戦線も菊花賞をもって全て終了。これからは世代の枠を越えて古馬との対戦を迎えるわけだが、三冠馬となったデアリングタクトとコントレイルが今後、どのような活躍を見せるのか実に楽しみだ。
今週末には牝馬のアルテミスSが行われ、いよいよ来年のクラシックを占う2歳戦線が本格化する季節。POG(ペーパーオーナーゲーム)のプレイヤーや2歳馬に出資している一口馬主にとっては熱の入るレースが続く。
そこでJRAの2歳戦について、どのレースが一番多く活躍馬を輩出している「出世レース」なのか調べ、ランキングを作成してみた。今回は2010年以降のGⅠ馬が何頭、そのレースに出走していたのかを基準とした。
ルールを補足すると、
(1)2010年以降のJRA・GⅠ馬輩出数をカウント(海外、地方GⅠは含めない)。頭数が同じ場合は勝利数で順位付け
(2)阪神JF、朝日杯FS、ホープフルSは自身がGⅠなので除外。平場競走(レース名がつかないもの)も除外
(3)GⅠ・ホープフルSの前身であり、かつて年末の阪神で行われていた「ラジオNIKKEI杯2歳S」は便宜上、別のレースとしてカウント
である。さて、ランキングを順に見ていこう。
9位タイには条件戦がランクイン
まずは10~7位を一気に見ていくが、9位はGⅠ馬5頭、7勝で2レースがタイとなった。
9位タイの一つめはエリカ賞。なんと1勝クラスの条件戦がランクインを果たした。冬の阪神芝2000mという条件で行われるこのレース。ヴィルシーナやエイシンフラッシュがここを勝ってオープン入りし、翌年のGⅠ戦線で活躍した。
もう一つはデイリー杯2歳S。最近では香港マイル勝ち馬アドマイヤマーズを輩出。JRA・GⅠ7勝の内訳はNHKマイル3勝、朝日杯FS2勝、阪神JF1勝、マイルCS1勝と、全てマイル戦。早い時期から活躍する一流マイラーが集うレースだ。
8位(5頭・8勝)は今週末に行われる東京芝1600mの牝馬重賞・アルテミスS。新設してから8年でリスグラシューやラッキーライラックなどの大物を出している。単純計算で8年に5頭、つまり今年のメンバーにも6割方、のちのGⅠ馬が含まれていることになる。勝ち馬だけでなく2着馬にもアユサン、レッツゴードンキ、メジャーエンブレムというGⅠ馬が名を連ねており、連対できれば将来も楽しみなレースといっていい。
7位は6頭でサウジアラビアRC。こちらは前身の「いちょうS」を含めたデータとなる。直近の勝ち馬グランアレグリア、サリオス以外にも、皐月賞馬で6歳末まで息長く活躍したイスラボニータがいる。重馬場の中を切り裂いた今年のステラヴェローチェも先輩たちに続けるか。
6~4位は意外なレース
6位(7頭・7勝)はファンタジーS。直近2年はダノンファンタジー、レシステンシアがここと阪神JFを連勝。ただし、7頭いずれも1勝ずつでJRA・GⅠを複数勝った馬は近年出ておらず、印象的にはやや地味。
5位(7頭・9勝)は今週の京都で施行される萩S。毎年少頭数になり、特に豪華メンバーが集まるというイメージもないのだが上位にランクイン。これは意外な結果だった。エイシンフラッシュとワンアンドオンリーといった2頭のダービー馬やサートゥルナーリアらが出走していた。
4位(7頭・14勝)は札幌2歳S。秋~冬のレースばかりランクインする中、唯一夏競馬から4位と大健闘した。1800mという2歳夏にしては長めの距離設定で、早期デビュー組でダービーやオークスを見据えたい馬が集まってくる。11年2着のゴールドシップが後にGⅠ6勝を挙げたため、GⅠ勝利数は実に14を数える。
今年は白毛馬ソダシが勝利。白毛初のGⅠ制覇に向けて、実に縁起のいいレースを勝った。
3位の重賞は長期的な目で
さて、ここからはベスト3。3位は8頭(17勝)の京王杯2歳S。三冠馬オルフェーヴル、海外と合わせてGⅠ6勝のモーリスなどを輩出している。
朝日杯FSの前哨戦として位置付けられるGⅡながら、ここから2歳GⅠを勝ったのはグランプリボスただ1頭。オルフェーヴルも2歳時は気性難で安定せず、3歳の皐月賞にてようやく開花。モーリスも3歳春までは体質不安で、4歳になってから突如覚醒したように強くなった馬だった。
その他にも5歳1月に中山金杯で重賞初制覇を挙げ、そのシーズンにGⅠ2勝したラブリーデイ、4歳秋になってスプリンターズSを勝ったタワーオブロンドンなど、どちらかといえば少し時間が経ってから成長した馬が多い。このレースの出走馬は長期的な視点で見ておいた方がいいだろう。
2位は出世レースの代名詞
2位は9頭でGⅠ16勝を挙げるラジオNIKKEI杯2歳Sが入った。現在、年末に中山競馬場で行われているホープフルSの前身にあたるレース。かつて「ラジオたんぱ杯3歳S」の名称だったころにはアグネスタキオン、ジャングルポケット、クロフネの3強が激突した伝説的な年もあり、出世レースといえば真っ先に名前の挙がる重賞だろう。
名称と中山への変更前、最後の年となった13年にはワンアンドオンリーとサトノアラジンが、12年にはエピファネイアとキズナが相まみえた。ランキングのカウント上14年以降は別レースとしたにも関わらずこれほど上位に入ってくるのは流石である。GⅠへの昇格も妥当な流れだったか。
1位はコントレイルを輩出
堂々の1位はこの10年で14頭のGⅠ馬を輩出、19勝を挙げる東スポ杯2歳Sだ。昨年の勝ち馬コントレイルは、未だ無敗街道を驀進して三冠達成。
このレースの恐ろしいところは2005年から2017年まで、13年連続でGⅠ馬を輩出し続けていたこと。近年で唯一GⅠ勝ち馬が出ていない18年も7着クリノガウディーが今年の高松宮記念で1位入線。もしあの降着がなければ、15年連続となっていたのだが…。
しかし、それだけ毎年高いレベルで行われる東スポ杯で、コントレイルは従来のレースレコードを1秒4更新しての勝利。そう考えると、あの時点で歴史的名馬になることは確約されていたのかもしれない。
現在はGⅢだが、来年から(申請が通れば)GⅡに昇格するとのこと。2位のラジオNIKKEI杯2歳SがGⅠに昇格した経緯を考えると、のちのちはこのレースがGⅠになる可能性もありそうだ。
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