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東大HCが阪神芝2200mを徹底検証

2020年宝塚記念インフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

コース紹介

阪神芝2200mは正面のポケット地点からスタート。直線に入っていきなり高低差2m近い急坂を通過し、1コーナーへ。ここから向正面から3コーナーにかかるまでの長い平坦な道のりを進んでいく。3コーナーから4コーナー、最後の直線半ばまではだらだらと下りが続き、ゴールまで200mの地点で2度目の急坂を駆け上がる。

当該コースの重賞はサマーグランプリ・GⅠ宝塚記念のみ。今年度は京都競馬場改修の影響を受け、例年は京都芝2200mで施行されるエリザベス女王杯も行われる(使用するデータは2010年6月26日〜2020年6月21日)。

基本的には内枠も、宝塚記念だけは別

阪神芝2200m・過去10年の枠別成績ⒸSPAIA



コーナーがタイトな内回りコースらしく、基本的に内枠有利。1枠は単回88%・複回84%、2枠は単回104%・複回80%と回収率も上々の数字だ。さらに両枠を引いた馬のうち、前走逃げ・先行だった馬は【18-9-11-45】複勝率45.8%、単回205%・複回118%。経済コースかつ前目のポジションを取れる馬を黙って買えば間違いない(宝塚記念でも【1-1-3-2】複勝率71.4%。11年6番人気1着アーネストリー、18年12番人気3着ノーブルマーズなど人気薄の激走もあった)。

しかし宝塚記念だけは様相が全く違う。8枠成績が過去10年で【7-0-2-13】単回441%とずば抜けて良いのだ。近年はさらにその傾向が顕著で、2013年以降の7レースにおいては2018年を除いて全て8枠が勝っている。

そもそも8枠で勝った馬が全て実力馬であったことは事実だが、梅雨の時期で内が荒れていること、コース取りの自由度が高いことが要因だろう。ちなみに過去10年×8枠の好走馬は全頭(1)8番人気以内(2)4・5歳(3)前走4角3番手以下の3条件を満たしており、この条件に合致する馬は【7-0-2-1】だった。

阪神芝2200m・過去10年の脚質別成績ⒸSPAIA



セオリー通り、逃げ・先行有利は揺るがない。前走4角4番手以内の馬を全て買うだけでも単回124%・複回98%とプラス域が狙える。迷ったら前につけられる馬を狙いたい。

しかしここでも宝塚記念は特異で、例外的に差しが決まっている。スイープトウショウが勝った2005年以来、上がり最速をマークした馬は【9-7-0-0】と連対率100%。上級クラスらしい淀みないペースと加速しやすい下り坂のコース形態などがあいまってこのような極端な数値が出ているのだろう。切れ味自慢は人気薄でも確実に押さえておきたい。

「ディープらしくない」ディープが買い

阪神芝2200m・過去10年の種牡馬別成績ⒸSPAIA



ツートップのキングカメハメハ・ディープインパクトはいずれも甲乙つけがたいが、全体の回収率では単回108%・複回82%のキンカメに軍配が上がる。ただ宝塚記念に限定するとディープの好走率が高い。宝塚記念で狙いたいのは「キレないディープ」つまりディープ産駒らしからぬ馬。前走上がり2位以内の産駒が【0-0-0-10】と全滅なのに対し、それ以外は【1-2-3-4】複勝率60.0%。今年の該当馬ではワグネリアンが狙い目になりそうだ。

勝利こそないもののハービンジャーは堅実。ハーツクライ産駒は昨年リスグラシュー・スワーヴリチャードが馬券になり、全体成績も悪くないが、単回37%・複回51%と馬券妙味に乏しい。新興種牡馬ではルーラーシップが【2-4-4-14】複勝率41.7%と走っていて、同じ2200mでの好走歴があるダンビュライトも見限れない。

阪神芝2200m・過去10年の騎手別成績ⒸSPAIA



騎手別ではM.デムーロ騎手が最も安定している。宝塚記念でも【1-1-1-2】と全体成績を上回る好成績を残しており、ラッキーライラックには大きな追い風だ。武豊騎手もM.デムーロ騎手と同様過半数の騎乗馬を馬券内に導いている。単回149%・複回128%と両回収率がプラス域である点も強調ポイント。

上記の2人を超える回収率をマークしているのが川田将雅騎手。その単勝回収率は206%にまで達している。同騎手×6番人気以内では【15-7-6-19】複勝率59.6%と好走率が上がっており、さらに3勝クラス以上に限定すると【5-4-1-4】で複勝率はついに7割超え。グランプリホース・ブラストワンピースも浮上してくる。一方、意外にもルメール騎手の成績は芳しくない点に注目。1番人気が予想されるサートゥルナーリアには気になるデータといえる。

栗東の名伯楽がずらり

阪神芝2200m・過去10年の調教師別成績ⒸSPAIA



栗東の名伯楽が並ぶ中、2勝にとどまるものの複勝率はさすがの値を残しているのが友道康夫調教師。前述した種牡馬データでも強調したが、宝塚記念に送り出すワグネリアンの快走に期待が持てる。

今年が最後の宝塚記念となり、サートゥルナーリア・キセキ・トーセンカンビーナと万全の態勢でタイトル獲りを狙う角居勝彦調教師は最多の10勝。単勝回収率154%という見事な数字につながっている。

また今年の出走はないものの昨年リスグラシューでレースを制した矢作芳人調教師も好走率が高い。その他今年の宝塚記念に出走馬がいる調教師のうちではペルシアンナイトを管理する池江泰寿調教師がトップ勢と遜色ない成績を挙げている。

過去10年の阪神芝2200mで馬券になった馬のコース別成績ⒸSPAIA



最後に阪神芝2200mで3着以内に入った馬における、その他全レースの成績をコース別に紹介。関西の中長距離圏を中心に結果を残している。

2200mで結果を残した馬は2000m・2400mともに融通がきくケースが多く、特にスタミナが求められる2400mが買い。該当馬は阪神芝2400m(外)で単回105%・複回96%と及第点の数字を残している。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。

阪神芝2200mコースデータ