勝率首位は3番人気と8番人気!
06年からダービーデイの最終レースに設定された目黒記念(11年を除く)。ダービー後の収まらない高揚感のなかで行われる伝統のGⅡはダービーという大勝負に敗れた者たちに一発逆転の機会を与える。
過去10年1番人気は【1-3-2-4】と馬券にこそ絡むケースは多いものの勝ちきれない。勝率最上位3番人気【2-0-1-7】はまだしも8番人気【2-0-1-7】も同率で並ぶ、ちょっとヒネらなければならないレースである。一発逆転の可能性を十分にはらんでおり、ダービーデイの最終レースとしての役割を果たしているともいえる。
カギを握るのはハンデと前走クラス、注意すべきは脚質
しばしば波乱が起こる要因のひとつはハンデ戦という設定にある。
ハンデキャッパーが実力差を埋めるべく斤量に上下差をつくり、全馬ゴール板で横並びになるという理想を基に設定するが、往々にして重いハンデを背負う実績馬の成績が上位になるもの。
ところが目黒記念は実績馬、重ハンデ馬が苦戦傾向にある。49.5~51キロ【1-1-0-7】が勝率最上位であり、次位は53.5~55キロ【5-4-5-53】、55.5~57キロ【3-5-3-35】は複勝圏内には来るものの、1着となると頼りない。
トップハンデに該当する57.5~59キロは【1-0-1-22】、過去の実績が重しになるような馬は苦戦傾向である。
となると、当然前走クラス別成績もやや格下感あるレースを経由した馬が目立つ。同格のGⅡ【0-2-2-27】勝ち馬が出ていないだけでなく、複勝率も12.9%と最下位と冴えない。格上位にあたるGⅠも【1-1-2-24】と好走確率は低い。
好走馬が出ているGⅠは天皇賞(春)【1-1-1-18】と有馬記念【0-0-1-1】、大阪杯組は【0-0-0-3】だ。勝率上位はGⅢ組【3-0-2-11】だが、オープン特別組【4-4-3-47】も好走馬が多く、3勝クラス組まで【2-3-0-20】と好走馬が出ている。伝統のGⅡは上がり馬まで広角に張る必要がある。
さらにややこしいのが前走脚質別成績だ。
競馬は展開に左右されるもの。そして、流れとは引っ張る逃げ馬や好位勢に主導権がある。馬場整備が行き届いた近代競馬はとかく先行馬に優位である。展開のアヤとは先行勢に起こるものであることが多い。
ところがこれが目黒記念では通用しないことが多い。前走先行は【1-4-4-32】、勝率たった2.4%、複勝率は最上位の22.0%なので、馬券のアタマに先行勢を置くとゴール寸前で差し馬に逆転されるという悲劇が起こりかねない。【5-5-4-54】の前走中団組が最適だろう。
これはダービーとたった100m差の芝2500m戦が2400mと比較するとスタミナ色が強い馬が走る条件であることも関係しているだろう。好位からサッと切れるような馬より追って追って最後まで持続力で勝負するタイプを上位にしたいところだ。
意外と決め手になる?騎手別成績
最後に興味深いデータがある。
ダービーデイの最終レース、注目度の高いGⅡ目黒記念、舞台は施行数が少ない芝2500mこれら条件は騎手別の成績にも表れる。
上位10傑は蛯名正義、内田博幸、福永祐一、小牧太と中堅からベテランが並ぶ。重賞なので若手が強いということはないだろうが、デムルメ(デムーロ&ルメール)は騎乗数が少ないことも気になるが、日本人騎手を圧倒しているわけではない。
人気順通りに決まりにくいこのレース、ベテランに一発逆転を託すという作戦もおもしろい。ちなみにリーディングジョッキーの川田将雅騎手は目黒記念【0-0-1-6】と不思議と頼りない。これは同騎手の先行意欲が強いという性質と脚質成績がリンクしているのではなかろうか。
今年はコロナ禍の影響から土日の騎手移動は原則禁止なので、これが左右することはあるかもしれない。その意味では日本ダービー騎乗なし、目黒記念騎乗ありというベテランを探すのも手かもしれない。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。