8年ぶり金メダルへ予選2位通過した日本
体操男子団体で2004年アテネ大会から5大会連続でメダルを獲得している日本代表。連覇を目指した前回の2021年東京五輪ではわずか「0.103」点差で銀メダルに終わり、今回のパリ五輪では金メダル奪還に燃えている。
メンバーには東京五輪個人総合と種目別鉄棒で金メダルを獲得した橋本大輝をはじめ、東京五輪種目別あん馬で銅メダルを獲得した萱和磨と谷川航の前回大会の団体銀メダルメンバーに加え、五輪初出場となる岡慎之助、杉野正尭が名を連ねる。
大会1日目の27日に行われた団体戦と個人総合、種目別を兼ねた予選では、つり輪と跳馬を得意とする中国が263.028点で首位通過。日本はあん馬とゆかで高得点を叩き出し2.434点差の2位で決勝にコマを進めた(予選の得点は決勝には持ち越さない)。
本日29日に行われる団体決勝で、8年ぶりの金メダル奪還を目指す日本。その見どころを紹介する。
Eスコア改善へ演技の精度向上に取り組んだ日本
日本代表は金メダルを逃した東京五輪での「0.103」点差を埋めるために、演技の精度を高めることに日夜取り組んできた。
体操は演技の難度を示すDスコアと、出来栄えを示すEスコアの合計で争われる。Dスコアは加点方式で、難しい技を行うほど得点が加算される。一方、Eスコアは10点満点からの減点方式。器具からの落下や転倒は「-1.0」、着地で大きく動くと「-0.3」などと定められている。さらに、手先のわずかなズレ、着地の小さな1歩などが「0.1」の減点となる。
3年前、日本は大きなミスこそなかったものの、着地のわずかな乱れなどでEスコアの減点が積み重なっていた。団体金メダルのためには、この小さなミスを極力減らさなければならない。
東京五輪では史上最年少19歳で個人総合金メダルを獲得したエースの橋本大輝は、この3年間、着地の精度を上げることに力を入れてきた。毎日続けてきた着地のための特別メニューに、体の軸を安定させるために取り入れた体幹トレーニング、着地の瞬間に必要な下半身の筋肉の使い方を体に覚え込ませてきた。
去年10月の世界選手権では、こうした努力が身を結んで高いEスコアを獲得し、個人総合で優勝。ほかの選手に先駆けてパリ五輪の代表にも内定した。だが、今年5月に行われたNHK杯での練習中に平行棒のバーをつかみ損ね、右手中指の靭帯を損傷。代表合宿が始まってからも満足に練習できない状態が続いていた。
不安を抱えたまま臨んだ27日の予選では、全体3位で個人総合の決勝進出を果たすも、得意の鉄棒は大きな着地の乱れで13.733点の全体20位で決勝に進めず、連覇の夢が絶たれた。今日行われる団体決勝での演技への影響も懸念される。
五輪初出場の岡と杉野が予選で躍動
エースの橋本が万全でない中、日本のカギを握るのがオリンピック初出場の岡慎之助だ。最年少20歳の新星はつま先までまっすぐに伸びた倒立にピタリと止まる着地など美しい演技が持ち味で、橋本が欠場した5月のNHK杯で優勝。6種目合計のEスコアは、代表入りした選手の中で最も高かった。
2日前に行われた予選でも平行棒で15.300点の高得点を叩き出すなど全種目で安定した演技を披露し、個人総合では橋本を上回る2位で決勝進出を決めた。団体決勝でも減点の少ない演技を披露し、エース級の活躍を期待したい。
同じく初代表の杉野正尭は日本の切り札的存在だ。体操選手としては大柄な170センチの体を生かしたダイナミックな演技が特長。最も得意とするのがあん馬で、長い腕を生かした勢いのある旋回だけでなく、最高難度の大技『コンバイン』もモノにしており、日本の得点源としての期待も大きい。
予選ではあん馬、跳馬、鉄棒の3種目に出場。いずれも日本勢トップの得点を記録し、予選2位での決勝進出に大きく貢献した。今大会乗りに乗っている25歳が、決勝でもチームを鼓舞する活躍ができるか注目だ。
最大のライバル中国下し、悲願の団体金へ
2大会ぶりの金メダルへ向け、日本の最大のライバルとなるのが中国。2021年世界王者の張博恒に、“平行棒の神” 鄒敬園、つり輪のスペシャリスト・劉洋ら強力なメンバーが顔を揃える。
27日の予選では、エースの張が個人総合で予選トップとなる88.597点をマーク。種目別ではつり輪と平行棒で鄒、鉄棒で張が1位となるなど、前評判通りの華麗な演技を披露。団体としても堂々のトップ通過を果たしており、決勝でも日本の前に立ちはだかることだろう。
エース橋本が不調の中、8年ぶりの王座奪還への道のりはより険しいものとなっているのは間違いない。だが、日本のお家芸と言われ、これまで7つの金メダルを獲得してきた体操王国の5人の精鋭たちが実力通りの力を発揮できれば、決勝で宿敵・中国を上回ることは十分可能なはずだ。
3年前の悔しさを胸に秘め、本日29日17時30分(日本時間24時30分)、「体操ニッポン」悲願の団体金メダルをかけた戦いが始まる。
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