「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」
体操女子の東京オリンピック代表が決まった。代表枠が従来の5人から1人減り、厳しい争いとなったが、村上茉愛、畠田瞳、平岩優奈、杉原愛子の4人がその切符を手にした。
団体戦でまず中心となるのは、絶対的エース村上茉愛（24）だ。コロナ禍で延期されていた試合が再開して以降、主要な国内大会の頂点を独占している。2017年世界選手権でゆかの金メダルを獲得し、翌年の世界選手権で個人総合銀メダルも手にした。次に狙うのは、もちろんオリンピックの金メダル。
ゆかのシリバス（H難度）、跳馬のチュソビチナとダイナミックな大技を持ち、技の難しさで決まるDスコアの合計は4人の中で最も高い。リオで逃した分も合わせて、2個3個とメダルを獲得してほしい。
村上の陰で「不動の2番手」とも呼ばれてきたのが、畠田瞳（20）だ。段違い平行棒が特に得意だが他の種目もミスが少なく、選考会の3試合全てがノーミス。ただ、意気込みを聞かれても「優勝」の2文字は口にしなかった。
その畠田が今回のNHK杯で、ついに村上の得点を上回った（全日本選手権の得点を持ち越すため大会成績は2位）のだ。それでも畠田自身は、「村上との実力差は大きい」というが、オリンピックの舞台を経験する中で、エース村上を脅かすライバルへと成長するかもしれない。
3人目を勝ち取った平岩優奈（22）は、美しさの選手。指先まで伸びたしなやかな演技が持ち味で、元代表の田中理恵さんからも「一番きれいな体操」と称賛された。Dスコアはあまり高くないが、技の完成度で採点するEスコアが高く、安定感もある。
また、見た目でも目を引くところが多い。髪の色は全日本選手権ではピンク、NHK杯ではオレンジだったがどちらも似合っていたし、着地を決めた後の弾けるような笑顔も魅力的だ。オリンピックではどんな美しさを見せてくれるのか、注目したい。
4人目はこの3人と合わせた時に団体戦の得点が高くなる「貢献度」で選ばれ、杉原愛子（22）が入った。NHK杯の成績は、3人に次ぐ4位。アジア選手権個人総合優勝、世界選手権個人総合6位などの実績があり、村上とともにリオで団体4位に入賞した、経験豊富な選手だ。得意種目は平均台で、自身の名を持つ技「スギハラ」もある。
代表選考会となった3試合の成績を表にしてみると、改めてこのチームのバランスの良さが見えてきた。オリンピックの団体戦では、種目ごとに3人の得点を合計する。種目別に平均点を見てみると、見事に4人が同じ回数演技をする形となりそうだ。村上が跳馬、畠田が段違い平行棒の難度を上げても、各種目の上位3人は変わらない。
5人編成だったリオの予選では、村上茉愛、杉原愛子、寺本明日香の3人が4種目全てで演技をし、残り2人は2種目のみだった。男子も、内村航平と加藤凌平が6種目全てで演技した一方、注目された白井健三は2種目しか行っていない。ここまで4人が均等なのは稀だろう。
実はもう1人大事な選手がいる。補欠に入ることが明言された寺本明日香（25）だ。昨年、左足アキレス腱断裂の大けがを負い、過酷なリハビリに励んできた寺本。彼女が補欠に入る意味は大きい。NHK杯5位の実力、日本代表として10年戦った経験、そして村上を支えられる存在としての意味である。
村上は、経験や年齢を考えると絶対的エース兼キャプテンとしてチームを引っ張ることが求められそうだ。重圧がかかる中、15年来の戦友で姉のように慕ってきた前キャプテンの寺本がそばにいる安心感は大きいだろう。
選ばれたメンバー全員が支えあえる、素晴らしいチームが生まれた。バランスを取り合って、リオではあと一歩で逃したメダルを、今度こそ掴み取ってほしい。
《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」（テレビ朝日）で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。
【関連記事】
・村上茉愛にかかる日本女子体操57年ぶり五輪メダルへの期待
・男子体操の東京五輪代表残り2枠は誰だ？内村航平は種目別で出場なるか
・体操のオリンピック日本人女子メダリストは意外と少ない 団体「銅」を獲得した6人とは
AI競馬
