スコアメイクを左右するとされているショートゲームの精度
パー4やパー5のホールではよく、「第1打はそのホールの幅に打って(OBなどペナルティーを受けないで)、第2打からはグリーンの近くまで運んで、勝負はグリーンに近づいてから」と言われる。これは、グリーンに近づくまでは会心の当たりはいらないが、グリーンに近づいてからは高い精度が求められるということだ。
「少ない打数でグリーンの近くまでボールを運べたものの、そこから打数を重ねてしまいホールを大叩きしてしまった」といった経験、ゴルファーなら誰でもしたことがあるだろう。こういった苦い経験を積むと、スコアメイクする上で残り100ヤードを切ってからのショートゲームの大切さを感じるものだ。ゴルファーにとってショートゲームの位置づけはどうあるべきなのだろう。
トッププロはロングゲームを重要視
「一般的」に持たれている見解とは違って、ツアー選手の多くはショートゲームではなくロングゲームが最も重要だと考えているようだ。
メジャー4勝、1月5日時点での世界ランキング2位のロリー・マキロイは「よくショートゲームが得意じゃないと試合で優勝できないと言われるけど、全然違う」とコメントしており、メジャー18勝のジャック・ニクラウスもこの意見を支持している。理由は、ロングゲームのミスを無くせばショートゲームをする必要がないからだ。この2選手の意見は、「飛距離が出るタイプの選手であるが故のもの」という見方ができる。
また、アメリカゴルフ界でスタンダードになっているSG(ストローク・ゲインド)指標の産みの親、コロンビア大学ビジネススクール教授のマーク・ブローディも同意見で、「プロの世界だけの話ではなく、初心者と上級者、アマチュアとプロ、平均的なプロと一流のプロのスコアの差の2/3をロングゲームが占めており、ロングゲームが良くてはじめてスコアメイクのお膳立てができる」という自身の研究結果を発表している。そして、「ゴルフにおける普遍の真理に限りなく近い」と自信を持って述べている。
このようにトッププロの見解やSG指標を踏まえると、「一般的」に言われているほど重要ではないという見方もできる。
スイングを作る上で重要
だがやはり、ショートゲームは重点を置いて取り組むべき分野といえる。
ゴルフスイングの基本に必要な動きは、ショートゲームの中に凝縮されていると言っても過言ではない。なぜなら、小さな動きの中の更に細やかな動きまでも気にしながら良いものを築き上げていく取り組みは、ドライバーショットなどの大きな動きにつながるからだ。ロングゲームの質を上げるためには、まずはショートゲームの質を上げる必要がある。
30ヤードから50ヤードの距離からのスピンショットでは、ツアー選手のボールは低く打ち出されることが多い。はじめてトーナメントを観戦した人の中には、選手たちのこの距離からのショットを見ると「あっ、トップした」と感じることがあるらしい。そこからボールがグリーンに着弾して3バウンド目ぐらいでギュギュッと強烈なスピンがかかり、カップ付近で止まる。
インパクト前後でのクラブの入射角やロフト角など、クラブヘッドとフェースのコントロールを高い次元で融合させないとできないこういったショットは、ロングゲームの動きに自然とつながる。より質の高いショートゲームとインパクト前後のクラブの動きを獲得すれば、ロングゲームに活かせるということだ。
実際に2019年、渋野日向子が徹底的にグリーン周りの練習をしたことが飛躍につながったということはよく知られている。その結果、ショートゲームだけでなくロングゲームの精度向上に効果を発揮した。
「一般的」に言われているほどではないものの、スコアメイクの上では重要でロングゲームに繋がるショートゲーム。重点的にこれに取り組むことは、ゴルフゲーム全体を一段上へと引き上げる上でとても重要といえる。
今はオフシーズン。寒い冬はコースラウンドをしないゴルファーは多いだろう。そんなゴルファーも、今の時期に練習場でショートゲームと向き合ってみてはどうだろうか。
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