全米女子アマで37年ぶりの快挙達成
8月8日から7日間にわたって開催された全米女子アマチュア選手権で高校2年の馬場咲希が優勝した。1985年に服部道子(ツアー18勝、東京五輪ゴルフ女子コーチ)が同じ高校2年で優勝して以来、日本人選手として37年ぶりの快挙達成だ。
2日間36ホールで行われる予選ラウンドを34位で通過し、上位64名による決勝トーナメントに進出。マッチプレーで行われる決勝トーナメントを勝ち上がり、36ホールで行われる決勝戦では、9ホールを残して決着するという圧勝劇だった。
今回の優勝により、来季の海外メジャー5大会のうちの4大会の出場権を獲得した。プロテストは来年受験予定で、プロとしての本格的な活動は再来年以降になるだろうが、アマチュアとして活動している間に、どれだけの実績を加えるのか要注目だ。
憧れはネリー・コルダ
馬場のストロングポイントは豪快なショット。身長が175センチで長い手足を生かして放たれるドライバーショットは世界基準だ。
高身長でスラっとした体型は、東京オリンピック金メダリストで、元世界ランキング1位(8月29日時点で2位)のネリー・コルダに重なる。本人も、ネリー・コルダに憧れており、日本の予選を突破して出場した全米女子オープンでは、「コルダ選手と決勝ラウンドで同じ組で回りたい。そのためには上位に入る必要があるので頑張りたい」と語っていた。結果、コルダとの同組でのプレーは実現しなかったが、堂々予選を突破して49位タイで終えた。
全米女子オープン予選突破、全米女子アマ制覇、コルダと同じフィールドでの戦い。アメリカで戦うことの楽しさや意義を肌で感じたことで、米ツアーやコルダという存在が、憧れから目標に変わってきているのではないだろうか。
体の強さが必要
日本での予選会を勝ち上がり今季の全米女子オープンに出場した際、練習ラウンドをともにした渋野日向子から、「食事をしっかりとろう」と線の細さを指摘された。確かに、体の成長や状態にあわせて専門家の指導のもと筋力トレーニングをしているものの、線が細い。
馬場のスイングは、トップをコンパクトにして正確性を確保しながらも、ダウンスイングで体の回転を速めることでクラブを加速させて大きな飛距離を出している。腰部のキレで体の回転を速めているわけだが、右かかとが早く上がり、右ひざが早く目標を向く一連の流れは、スイングバランスが崩れ、ショットの安定感を削ぐ危うさをはらんでいる。
体の強さがあれば、腰部を切りながらも右かかとや右ひざの動きを小さくして、ショットが不安定になるリスクを抑えやすくなる。ちなみにコルダは、長い手足によって大きくなる遠心力を邪魔しないように、体の動きは小さくスイングしている。
また、スイング云々以外の部分でも体力が必要だ。プロになれば、練習やプロアマを含めると、毎週5〜6日ラウンドすることになる。その中で安定して好成績を収めるためにはスタミナが不可欠だ。華奢でも、試合と試合の間が空く場合が多いアマチュアであれば対応できるかもしれないが、プロの世界は別物。国内外問わず、活躍している選手を見ると、華奢な選手は少ない。
引き続き専門家の指導を受けながら、体を作っていってほしい。まだ身長が伸びているジュニア期の段階で、慎重な取り組みが求められるが、体が強くなれば、第2のネリー・コルダになる可能性が高まるはずだ。
世界アマチュアランキング上位に向けて
馬場は日本女子アマや日本ジュニア女子では勝っておらず、日本アマチュア界のビッグタイトルはまだない。来年も全米女子アマに出場するのであれば、開催時期的に日本ジュニア女子の出場は微妙(今季出場せず)だが、日本女子アマには出場して勝ち、圧倒的な実績を引っ提げてプロの世界に歩みを進めていって欲しい。
世界最高峰のアマチュア大会で優勝したとはいえ、世界アマチュアゴルフランキング(以下WAGR)は現時点21位で日本勢5番手。まだ上にたくさんの選手がいる。
今後、推薦でプロの大会に多く出場することが予想される。アマチュアの大会だけでなく、プロの大会でも好成績を挙げることができればポイントを稼ぐことができ、WAGRが上がる。
成長や力量を測る上で一つの目安になるWAGRを上げ、さらに自信を深めることができれば、畑岡奈紗のように高校卒業しプロ転向後、日本ツアーを飛び越えて、いきなり米ツアー挑戦もありえるだろう。日本ツアーでアマチュア優勝を果たせば日本のプロテストが免除されるため、その可能性が高まる。
プロ転向後いきなり米ツアー挑戦となれば、再来年以降、日本では馬場のプレーをあまり見られなくなる。今季と来季、馬場の日本でのプレーをしっかりと見ておきたい。まずは9月16日から開催される住友生命Vitalityレディス東海クラシックに注目だ。
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