今季36歳になる上田桃子
2007年シーズンに5勝を挙げ、21歳156日で賞金女王になった上田桃子。この時の最年少記録はまだ破られていない。
2008年から2013年までは、米ツアーを主戦場にしながら日本ツアーにも参戦。この間、日本ツアーで4勝を挙げている。2014年から主戦場を日本に移してからは、優勝無しの年もあったが、複数回優勝する年もあり、コンスタントに勝利を重ねている。昨季(2020-2021)はパナソニックレディースオープンで優勝し、通算優勝回数は16を数える。
かつてのライバルたちが続々と第一線を退く中で、今季36歳になる上田がトップレベルのパフォーマンスを発揮している理由はどこにあるのだろうか。
ドローボールでビッグドライブ
パワーあふれる若手が続々と台頭する中で、トップレベルのドライバーの飛距離を叩き出している上田。代名詞のドローボールでビッグドライブを放っている。ドローボールはフェードボールに比べて飛距離が出やすい。フェードに比べると、ややレベルからアッパー軌道にスイングするため、スピン量が増えにくいからだ。
ただ、ドローボールはフェードに比べて曲がりやすい、という側面がある。インパクト前後でフェースを返すことになるので、インパクト時のフェースの向きが不安定になりやすい。
上田はインパクト前後にフェースの返しを抑えながらドローを打つことで、そのリスクを軽減し飛距離と方向を両立させている。フェアウェイウッドでもターフをとるような長いインパクトゾーンだ。
このテクニックは上田ならではのもので、それを可能にしているのが強靭な下半身の粘りだ。「桃子と名づけられたのは産まれた時、桃尻だったから」のようで、生まれ持った下半身の強さがある。それに日々のトレーニングの成果が加わり、インパクトゾーンで体の上下動を抑えることに成功している。
飛んで曲がらないドローボールは、下半身の力によって放たれているのだ。
鍵はスタミナか
では、今季も優勝するためにはどのような課題があるのだろうか。
技術力はトップレベルを維持しているが、ややスタミナに陰りが見え始めている。日本ツアーに戻ってきてからは、予選ラウンドよりも決勝ラウンドに進んでからの方が平均スコアが良かった。だが、ここ3年は予選ラウンドよりも決勝ラウンドのスコアの方が悪い。
決勝ラウンドに入ると、試合の状況も見ながらマネージメントする選手も多い。そんな中で3日目や4日目に失速してしまっては、初日や2日目に好スコアを出しても、その貯金で勝ち切ることは難しい。
出場試合数をセーブ(※)しているものの、4日間トーナメントとなると、練習日とプロアマを合わせて6日連続のラウンドとなる場合がある。36歳になる上田にとっては、スタミナが持たない試合も出てきているのではないだろうか。より良い調整法を探ったり、さらに出場試合数をセーブするなど工夫が必要かもしれない。
※上田は42試合。小祝さくら、酒井美紀、淺井咲希が最多で52試合。
弟弟子から刺激
上田は辻村明志コーチに師事。同門には、ちょうど一回り年下となる黄金世代の小祝やミレニアム世代の吉田優利などがいる。上田は実績や年齢はもちろん、辻村氏とのタッグを組んでいる年数的にも、チーム辻村の大先輩格。小祝や吉田などの若手選手は上田を見て学ぶことが多くあるだろうが、上田も若手からエネルギーをもらっているのではないだろうか。
昨季の最終戦ツアーチャンピオンシップの2日目終了時点で、2打差の3位タイにつけた時には「16週ぐらい若手が勝っているので、最後は自分が面白くできたら」と、若手に対抗するベテランの意地を表すコメントを発した。
江連忠コーチに師事していた時の同門で、同じ歳の諸見里しのぶ(ツアー通算9勝。2009年賞金ランキング2位)に対してライバル意識むき出しだった時の負けん気も、まだ健在のようだ。
上田はこれまで16勝しているが、まだ国内メジャーの優勝がない。最もメジャーのタイトルが欲しい選手の一人だろう。今季、決勝ラウンドで調子を落とすことを減らせると、悲願達成となるかもしれない。
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