パットの向上で飛躍した2020-2021年シーズン
原英莉花は2020-2021年シーズン、賞金ランキングを2019年の14位から8位へ上げた。また、平均ストロークも2019年の71.7174(22位)から、約0.25ストローク伸びて71.4614(17位)に。これを微々たる差と感じる人もいるかもしれないが、4日間で換算すると約1ストロークになる。
賞金ランキングや平均ストロークが向上した理由としては、パットの成長が挙げられる。平均パット数(パーオンホール)、平均パット数(1ラウンドあたり)、3パット率、すべてで昨季は2019年シーズンを上回った。
そしてパットの向上はバーディー数増につながった。2019年シーズンの平均バーディー数は3.3853で12位だったが、昨季は3.5682で2位となった。
ショットの精度に課題
明らかな向上が見られたパットに対して、ショットの向上は見られなかった。ドライビングディスタンスは2019年シーズンから約4ヤード伸ばし1位となったものの、パーオン率やフェアウェイキープ率は成績を下げた。
ドライビングディスタンスにも表れているように、原のスイングは力強い。身長が173センチということも手伝い、迫力あるスイングだ。「かっこいい」という形容詞が最もフィットするスイングの女子選手といえば原かもしれない。
しかし、ショットの精度では向上の余地が大いにある。その鍵となるのが右膝で、原の場合、ダウンスイングで右膝が早く目標方向に向いてしまうのだ。
男性と女性では骨盤の形状が異なり、人ぞれぞれに骨格の特性はあるので、一概には言えない。ただ、世界ランキング上位の韓国勢や、同1位(1月17日時点)で東京オリンピック金メダリストのネリー・コルダなどと比べると、原の右膝は目標を向くタイミングが早い。
原の右膝の動きは、2013年に23歳で賞金女王に輝いた森田理香子と似ている。森田は身長164センチと原より低いが、大きなスイングから放たれるビッグドライブを武器にしていた。ところが2014年から成績は下降し、2018年シーズンを最後に第一線から退いた。
不調の原因はアプローチイップスだった。フルショットのスイング中の右膝とは関係無いように感じるかもしれないが、実はアプローチとフルショットはつながっているのだ。
原と森田は右膝の動きだけでなく、プレースタイルや高い周囲からの注目度によるプレッシャー、といったところも似ている。原も歯車が狂うと、調子を戻すことができなくなるのではないかと不安がよぎる。
だが、ゴルフに好不調の大きな波はつきもの。原には、仮にスランプになっても、それを成長の糧に変えて、このような心配や不安を杞憂に終わらせて欲しい。
2022年は日本ツアーを引っ張る活躍を期待
今季から、日本ツアーで主役級の活躍を続けていた渋野日向子と古江彩佳が米ツアーに本格参戦する。原自身も米ツアー志向があり、今季は米ツアーへの参戦が増えるかもしれない。だがまずは、渋野と古江の穴を埋める活躍を見せ、日本ツアーを引っ張って欲しい。
2021年は初戦のダイキンオーキッドから33位、予選落ち、棄権、と頭の3試合は振るわなかった。今季も初戦は3月のダイキンオーキッドとなる予定。今度はスタートダッシュを決めたいところだ。
まだまだ強くなれるであろう原。人気に実力が追いついてきてはいるが、まだ高い人気の方が若干先行している。今季は実力が人気を追い越すシーズンになるか注目したい。
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