安定したショット力誇る松山英樹
松山英樹は2021年、悲願のメジャー制覇をマスターズで達成し、凱旋試合となったZOZOチャンピオンシップでは圧勝。圧倒的な存在感を示した。
マスターズが2017年のブリヂストンインビテーショナル以来、約4年ぶりの米ツアー優勝だった。だが、勝てない間も、年間を通して活躍した上位30名だけが進出できるツアー選手権への出場を継続。2021年で8シーズン連続の出場となり、抜群の安定感を保ち続けている。
その安定感を支えるのがショット力。米ツアー公式のSG(ストローク・ゲインド)ティートゥーグリーン(※)では、過去8年で6度トップ10に入り、3度トップ3に入っている(2021年:15位、2020年:2位、2019年:3位、2018年:16位、2017年:3位、2016年:6位、2015年:7位、2014年:4位)。
松山は、このショットの安定感をどのように築き上げたのだろうか。
※第1打からグリーンに乗せるまでに稼いだ打数
スイングの土台を築いた素振り
松山の自著「彼方への挑戦」には、幼少期に毎日行っていた素振りについて書かれているが、この素振りが松山のスイングの土台を築いたようだ。
松山は、父親とゴルフ練習場に行ったことがきっかけで、4歳の時ゴルフを始めた。そこからゴルフにのめりこんでいくわけだが、ゴルフ練習場で練習できる日は限られていた。練習場に行けない日はどうしていたのか。自宅での練習だ。
マットがしきつめられた、パター練習もできる6畳の部屋で素振りを行い、廊下でアプローチ練習もしながら技術を磨いた。外のガレージにネットを張り、ショット練習もしていたが、練習場に行ける日を待ちわびながら、とても多くの時間を素振り部屋で過ごした。
そして待ちに待った練習場での練習では、素振りの成果を確認。課題を持ち帰り、その課題克服のための素振りをまたひたすら行う。このサイクルを繰り返した。練習場で良いショットを打つための素振り、というよりも、素振りのテーマを見つけるための練習場での練習、という方が近い取り組み方だ。
松山の感覚のズレを見逃さない感性や、ショットの結果よりもスイングにこだわる完璧主義の性分は、この素振りによって育まれたのではないだろうか。
ジャンボ尾崎も素振りの重要性を説く
最近は、プロを目指しているジュニアや若手プロの指導にも注力している、通算113勝のジャンボ尾崎も素振りを重要視してきた。
「ボールばかり打つだけでは悪い部分は直せない」「野球界と比べるとゴルフ界は素振りの文化がない。ゴルフ選手は素振りをもっとするべき」と言っていたと、ジャンボ軍団の金子柱憲が自著「誰も書けなかった ジャンボ尾崎」で述べている。
広大な敷地に素晴らしい練習環境が整っていて、多くのプロやプロ志望生が練習している、ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー(千葉県。通称:ジャンボ邸)。ここは素振り用のグッズも充実しており、選手個々に合ったものを選んで使うことができる。
ジャンボ尾崎自身が経験と知識をもとに手作りしたものが多い。同じ種類でも重さなど特性が違うものも作り、その時の調子などに合わせてピンポイントで課題に焦点をあてられるようにしている。
日本男子プロゴルフ界、新旧2人のトップの土台を築いたのが素振りなのだ。
素振りで理想的なスイング構築を
素振りは身体の細部にまで意識を伝達しながらスイングすることができ、イメージ通りにスイングできたかどうかを確認することができる。また、ボールがないためインパクトを合わせる必要がない。よって、インパクトの良し悪しを気にせずにスイングすることで、フィニッシュに向けて振りぬく癖をつけやすくなるのだ。
一方、球打ちではそうはいかない。ボールにクラブヘッドを当てる意識が強くなりやすい。そうなると、理想的なスイング構築が難しくなってしまう。一般ゴルファーの多くは、ゴルフ練習場で球を多く打ちすぎる傾向にある。球を多く打ち過ぎると、良くない動きを身体で覚えてしまいやすいが、素振り練習では自然としなやかでリズミカルなスイングを覚えやすい。
多くのゴルファーは実際に打つ時よりも、素振りの方が綺麗なスイングをしている。実際に打つ時のスイングが、素振りの時のスイングに近づくと、ショットが安定する期待が持てる。球打ちと素振りの割合を考えながら、練習をしてみてはどうだろうか。
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