息子チャーリーとPNC選手権に出場
2021年2月の交通事故によりツアーからの離脱を余儀なくされたタイガー・ウッズ。ただ、重傷を負った右脚は順調に回復しているようにも見え、4月のマスターズに出場する可能性も浮上している。
米ツアー外では既に、12月18日~19日に開催されたPNC選手権に長男チャーリーくんと出場した。しかし、ラウンド中に腫れた右脚を繰り返しアイシングしていた。息子のチャーリー君にショットを任せる場面も増えており、やはり“万全”とは言い難い。
自身の右脚のことだけを考えれば、今回の復帰は早すぎたかもしれない。しかし、今回の復帰には、タイガー・ウッズをタイガー・ウッズたらしめるものが垣間見える。眼前の一試合に向き合う、虎(タイガー)の姿だ。それは2008年の全米オープンを想起させる。
2020年のPNC選手権では、スイングだけでなくプレー中のあらゆる所作が父親に似ているチャーリー君に世間の目は集中したが、今回注目されたのは長期休養とリハビリから復帰したウッズ本人だ。
今回の復帰の理由は、右脚が完全に回復していなくても、ツアー外競技でリハビリの延長のようなスタンスで問題がないということもあるかもしれない。一方で、大会前に「私はチャーリーのコーチではない。父親だ」と語った通り、息子とフィールドで時間を共有できることも、出場に踏み切った理由の一つに挙げられるのではないだろうか。
大会後左膝再手術 2008年全米オープンの死闘
2008年6月にトーリーパインズで開催された全米オープンをウッズのベストバウトに挙げるファンも少なくないだろう。翌日の18ホールプレーオフに持ち込んだ、正規最終日18番ホールのバーディーパットを沈めた後のガッツポーズは、ゴルフ史上に残る名シーンだ(18ホールのプレーオフでも決着がつかず、19ホール目で決着)。
この年4月のマスターズ終了後左膝を手術。医師からは全米オープン出場を見送るように言われていた。しかし、復帰戦として強行出場。
試合中、苦痛に顔をゆがめるタイガー。当時の専属キャディーのスティーブはタイガーに対して「もう辞めよう、キャリアが台無しになる」と進言した。メジャーは年4試合あるし、当時まだ32歳。選手として多くの時間が残されていることから、このスティーブの言葉はまっとうな意見だ。
それに対し「ふざけるな、僕は勝つ」と返したタイガー。眼前にある、思い出深いトーリーパインズGCで開催される全米オープンを直視したとき、欠場や棄権の二文字は無かったのだろう。
「大会をやりきったことを誇らしく思う」と語ったタイガー。結果的にはこの後、2019年のマスターズまでメジャー制覇から遠ざかったが、タイガー・ウッズという存在を見せつけるには十分な戦いとなった。
勝利数よりも眼前の一試合
交通事故から米ツアーに本格復帰を果たすことを最優先にするのであれば、PNC選手権に出場して右脚に負荷をかけるようなことはせずに、慎重にトレーニングを積んだほうが良かったのかもしれない。
4大メジャーの通算勝利数を伸ばすことを最優先にするのであれば2008年の全米オープンは見送った方が良かったのかもしれない。
しかし、将来の計算よりも眼前の一試合と向き合い、戦うべきかどうかを自分に問い、答えを出すのがタイガー・ウッズなのだろう。
両脚には、手術痕とともに試合で戦うことと息子チャーリー君に対する熱い想いが刻まれている。
PNC選手権では右脚をかばいながらも、タイガーらしいスイングで米ツアー本格復帰が遠くないことを感じさせるショットを放った。
タイガー・ウッズがツアーで戦う姿を見れる日が、今から待ち遠しい。
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