ツアー選手のゴルフを始めた年齢を調査
プロゴルフ界は男女とも若手の台頭が著しい。男子では大学3年の中島啓太がアマチュア優勝、2002年9月生まれの久常涼が下部ツアー経由で彗星のごとく現れシードを獲得。女子では、1999年7月生まれの稲見萌寧と2000年5月生まれの古江彩佳が賞金女王を争い、高校3年の佐藤心結がプレーオフまで進み、アマチュア優勝まであと一歩のプレーを披露した。
このような若い年代から活躍する選手たちは、ゴルフを始める年齢も早い傾向にある。中島は6歳、久常は3歳、稲見は10歳、古江は3歳、佐藤は7歳だ。
では、他のトップ選手たちはどうなのだろうか。男女ツアーのシード選手のゴルフを始めた年齢を調べた。

男子賞金シード選手65名のゴルフを始めた年齢の平均は8.7歳。最も早く始めたのが賞金ランキング8位の香妻陣一朗、19位の片岡尚之、29位の片山晋呉の2歳で、最も遅く始めたのが34位の高山忠洋と53位の竹谷佳孝で18歳だった。
一方、女子賞金シード選手50名のゴルフを始めた年齢の平均は9.1歳。最も早く始めたのが2位の古江で、最も遅く始めたのが20位の全美貞で15歳だった。
黄金世代は宮里藍に憧れてジュニア期を過ごした。また、米ツアーで地位を築いている韓国人選手の多くは、パクセリキッズと言われる選手たちだ。米ツアーデビューイヤーにメジャー2勝を挙げるなど、衝撃的な活躍をした朴セリを見て育った。
若い世代の選手の活躍は、ジュニアゴルファーだけでなく、ジュニア世代のゴルフ未経験者をも刺激する。今の流れでいくと、「できるだけ早く始めなければ」と低年齢化がさらに加速するかもしれない。
低学年のゴルフライフ
ジュニア期のゴルフのの取り組み方についても考えてみたい。最初からゴルフ専門の場合もあれば、ゴルフと並行して他のスポーツに励む場合もある。できるだけ早くゴルフに専念するのと、ある程度の年齢までさまざまなスポーツをしながらゴルフをするのとでは、どちらの方がプロの世界で活躍する選手になれるのだろうか。
書籍「RANGEー知識の幅が最強の武器になるー」では、「テニスのグランドスラムで20勝しているロジャー・フェデラーのように、さまざまなスポーツをしながら専門分野を決めていくべき」と結論付けた研究結果を紹介している。
一方で、「同じこと、あるいは同じようなことを何度も繰り返すゴルフのようなスポーツでは、意識的な練習の量で成功が決まる。タイガー・ウッズがそうだったように専門を決めるのは早い方が良い」という見解も紹介している。この見解は、音楽家30人の能力開発に関する研究をもとにした「一万時間の法則」によるものだ。
では、成功を遂げた現役のツアー選手はジュニア期のゴルフについてどう考えているのだろうか。
2021年、悲願のメジャー制覇をマスターズで遂げた松山英樹は自著「彼方への挑戦」の中で、以下のように述べている。
「将来ゴルフで成功したいと思っている子供たちには、ジュニアのころにはできるだけいろいろなスポーツに触れてほしいと考えている」
「野球、サッカー、バスケットボールといったほかのスポーツは、その競技を楽しむうちに、心肺機能や筋力など、身体能力が自然とアップする要素を持っている。残念ながらゴルフはそうはいかない。スイングの繰り返しだけで体力を向上させようと思うと効率が悪い」
松山自身は小さいころからゴルフ一本だったが、米ツアーで活躍している多くの選手は、ゴルフ以外のスポーツにも打ち込んでいたようだ。
早期専門特化の場合、基礎体力は必須か
2022年から米ツアーを主戦場とする渋野日向子も、世界ランキング6位(2021年12月27日時点)の畑岡奈紗もゴルフを始める前は、ソフトボールをしていた。ソフトボールで道具を振る体力や感覚が育まれたことで、ゴルフの成長が加速したのだろう。
早期専門特化の象徴であるタイガー・ウッズは、生後10ヵ月でゴルフクラブを握っていた。また、生後6ヵ月で父親の手の平に乗り、家の中を歩く父親の手の平の上でバランスを取り続けることができたという。それだけの身体能力があったからこそ早期専門特化の優位性を生かすことができたのだろう。
子供によって答えは変わり、万人共通の正解はないのかもしれない。しかし、プロを意識し早期にゴルフ専門にするのであれば、その時点である程度の体力と身体能力、少なくともどちらかは必要なのではないだろうか。
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