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男子ゴルフの元世界1位ブルックス・ケプカが住友ゴムと契約した理由と金額は?

2021 11/26 11:00森伊知郎
ブルックス・ケプカ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

デシャンボーとのテレビマッチでお披露目

ゴルフの「ゼクシオ」や「スリクソン(SRIXON)」のブランドで知られる住友ゴム工業は23日、元世界ランク1位でメジャー通算4勝(「全米オープン」と「全米プロ」で各2勝)のブルックス・ケプカと用具使用契約を締結したことを発表した。複数年契約で、米メディアによると契約金額は年間300~400万ドルとみられている。

日本では松山英樹や畑岡奈紗が使っていることで知られている同社も、PGAツアーでは少数派といっていい存在。その日本メーカーをケプカはなぜ選んだのか。

2016年に、それまで契約していたナイキがゴルフ用具(クラブ、ボール、キャディーバッグ)からの撤退を発表して以後どこのメーカーとも契約していなかったケプカは、「契約フリーの最後の大物」と呼ばれていた。

それが住友ゴム工業と契約したことで今後はスリクソン、またはクリーブランドのドライバー、アイアン、ウェッジ、ボールとキャディーバッグを使うことになり、26日に行われる「犬猿の仲」ブライソン・デシャンボーとのテレビマッチがお披露目の場となる。

ダンロップフェニックスで関係構築

同社の契約選手では今年、松山が「マスターズ」で日本人初のメジャー優勝を果たし、畑岡も先週の米女子ツアー最終戦で2位に入るなど大いに活躍しているイメージが日本のゴルフファンにはあるだろう。

だが住友ゴム工業の米国サイトに記載されているPGAツアーでプレーする選手はケプカ、松山の他には2019年の「全英オープン」覇者、シェーン・ローリーやキャメロン・チャンプなど30人弱にとどまる。タイトリストやテーラーメイド、キャロウェイ、ピンといった米国メーカーと比べると、ごく「少数派」といっていい人数だ。

そのメーカーがなぜケプカと接点を持ち、契約に至ることができたかの答えは日本にあった。毎年11月に宮崎県のフェニックス・カントリークラブで開催される日本ゴルフツアーの「ダンロップフェニックス」にケプカは2016年から3年連続で出場。16&17年には連覇も達成している。

このトーナメントの主催者は他ならぬ住友ゴム工業だ。ケプカが参戦していたのは、ちょうどクラブ契約がフリーになった時期。とはいえ、自社製品を露骨にアピールしたりせず、世界ランク1位(当時)の選手に対して敬意を払ったほど良い距離感のホスピタリティーで両者は良好な関係を築いた。

スリクソンのボールで練習したことがきっかけ?

その甲斐あって、ケプカは今年1月にアイアンを「ZX7」にスイッチ。初めて同社の製品を使ったところ、直後の「フェニックス・オープン」ですぐに優勝。いきなり結果を出せたことで「ZX7は、これまでツアーで使用したなかで最高のアイアン」と絶賛するほどのクラブに対する信頼感を抱いた。

さらに驚かせたのは、ボールも世界のゴルフツアーで圧倒的な使用率を誇るタイトリストから「スリクソン」(Z-STAR ダイヤモンドを使用予定)に変えたことだ。

PGAツアーのドライビングレンジでは主要メーカーのボールが、例えばタイトリストなら「Pro V1」と「Pro V1x」というように、モデル違いまで配慮して用意され、選手は自分が試合で使うのと同じモデルで練習することができる。

それが日本ツアーでは、トーナメントの運営会社は概ね住友ゴム工業とブリヂストンスポーツの系列が担っており、ドライビングレンジに置いてあるボールは基本的に各々のメーカーのものとなる。

そのためケプカも「ダンロップフェニックス」ではスリクソンのボールで練習した。この大会に出場していなかったら全く縁がなかったかもしれないボールが、使うに値すると判断してもらったことが契約に繋がった。

米国での認知度アップ期待

一般ゴルファーではクラブを5~10年買い換えないケースも珍しくない。だがOBや池ポチャでなくすことも多いボールは消耗品なので買う頻度も高い。数万円するクラブに対して1スリーブ(3個入りパッケージ)が千円台なので、これまでとは違うメーカー(あるいはモデル)を使ってもらうことへのハードルは低い。

過去にもプロ転向当初の石川遼が住友ゴム工業と(現在はキャロウェイ)、タイガー・ウッズがブリヂストンスポーツとボール契約を結んだことで各社の売り上げが大きくアップしたことがあった。

それだけにボールを含む契約ができたことはメーカーにとって大きく、日本だけでなく米国マーケットでの認知度&売り上げアップに対する期待は大きいはずだ。

住友ゴム工業の契約選手として初めての公式の場となるテレビマッチの相手、デシャンボーがボール契約するのはブリヂストンスポーツだ。犬猿の仲と言われる両者がどんな勝負をするのかとともに、日本のライバルメーカーでもある両社のボールが対決するのも見どころとなる。

《ライタープロフィール》
森伊知郎(もり・いちろう)横浜市出身。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社でゴルフ、ボクシング、サッカーやバスケットボールなどを担当。ゴルフではTPI(Titleist Performance Institute)ゴルフ レベル2の資格も持つ。

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